▼ クルークがブッチにキレて大変
放課後。
ここのところ特に補習続きのアミティはなんとかこの状況を挽回しようと、クルークに頭を下げて勉強を教えてもらっていた。
皮肉と嫌味を交互にネチネチ言うのでぷよ勝負で勝ったら教えて、という条件で勝負をしたらあっさり勝てた。案外口ほどでもない。
「あ…?」
「あ?」
急に手を止めてこちらを透視してくるクルークに、アミティはご自慢の頭でどうしたんだろうと考えた。
大変だ、クルークが起動停止しちゃった!
きっと電池切れなんだ!充電してあげなくっちゃ!
でもクルークのエネルギー源ってなんだろう?本?レムレス?もしかしてメガネ?
あ、わかった!恋人のナマエだ!
でもでも今はナマエはいないから、あたしが応急処置をしなくちゃいけないかなぁ?どうすればいいんだろう?
とりあえず声をかけてみよう!
「おーい、クルーク?どうしたの?電池切れ?だ、だいじょぶ?」
「大丈夫なわけあるか!!」
「ひぃっ!」
怖い!めっちゃ怒ってる!!なんで!?
クルークは怒りで顔をしかめながらこちらを指差す。
え、なに?え?アタシ?!な、なにか悪いことしたかな!?
「な、なんだかわからないけどとりあえずごめんね!?」
「なんでアミティが謝る必要があるんだよ!悪いのはナマエだろ!?」
「え?」
「なんでナマエがシグとあんなに仲睦まじく歩いてるんだ!!」
後ろを振り返ると、窓の外には虫取り網と虫取り籠を持ったナマエとシグが歩いている。
どうやらアミティは全く関係なかったらしい。
クルークは癇癪持ちでプライドも高い。なにかにつけてはすぐ怒る。
アミティのせいでクルークがアコール先生に叱られたときも、ラフィーナと大喧嘩してるときも、シグがクルークの大切な魔導書を汚してしまったときも、リデルがなかなか言いたいことを言えなくて時間を無駄にしたときも、とっても怒っていた。
怒っていたのだが、ここまで怒ってはいなかったはずだ。
初めてブチギレたクルークを見てアミティが感じたのは、恐怖以外の何ものでもなかった。
クルークがこわい!今のクルークならナマエもしくはシグをピーしてピーしてしまうかもしれない!
恐ろしすぎるので伏せ文字は必須なのである。
なにそれこわい。アミティは珍しく空気を読んで、まずはクルークを落ち着かせることを最優先した。
「クルーク!あの装備はムシ取りだよ!一緒にムシ取りしてるだけ!やましいことはなんにもないよ!」
「そんなこと知ってる!問題なのは、ナマエが、ボクになにも言わずに、シグと、二人で、ムシ取りに行ってるってことだろ!?」
「そうなの!?」
「そうだよ!!」
「ご、ごめんね!?」
「だからなんでアミティが謝るんだ!!」
もう埒があかない!
全然落ち着く様子のないクルークは今すぐにでもナマエとシグのところに行ってしまいそうだった。それはダメ!二人が修正される!
どんなに頑張ってもなだめるなんてことはたぶんきっとできない。足止めしようにも物理的に攻撃されそう怖い。
アミティは本格的にどうすればいいのかわからなくなってしまった。
とりあえず次に自分がすべきことは?ううん思いつかないつくわけない!
そのときだった。
「あ、クルークとアミティだ。勉強会おつかれさま〜」
窓の外からこちらに話しかけてきたのはなんと、まさかの、間違いなく今この状況に来て欲しくない友達ナンバーワンのナマエだった。
なんてこった!向こうから来てしまった!あたしの努力はなんだったの!?
クルークは今にも怒鳴りそうだけど、ナマエが全く気づく様子はない。
「あのな、今クルークの為にシグとカブトムシ探してんだ!取ったらあげるから、楽しみに待ってて!」
いやアホか空気読めよー!!
今クルークはそのことについて怒ってるんだから、頼むから墓穴を掘らないで!
アミティが全力でジェスチャーで伝えても、#name3#はまたしても全然気づいてくれなかった。
もう駄目だとアミティはとっさに耳をふさいだ。
のだが、怒鳴り声はいつまで経っても来なかった。
あれ?なんで?
恐る恐るクルークの方を見てみると、まさに起動停止していた。でんちぎれ?
「ぼ、ボクのため?」
「そうだけど?」
そう聞くとクルークは顔から湯気を出して(比喩表現ではない)プルプルと震えだした。
これは電池切れどころではない。あまりの怒りで故障しちゃったんだ!
「あ、あ、」
「あ?」
「ナマエのアホーーー!!!」
「なんで!?」
だって嬉しかったんだ!
ブチ切れたのはいいのだが、初めてのことでひっこみがつかなかったクルークであった。
アミティさんマジお疲れ様です。
こっちも書きたかったからおまけで
でもびみょう。申し訳なし
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