男主 | ナノ


▼ Tous les deux.

放課後の図書室で、ナマエと過ごす時間が好きだ。

と言ってもお互い受験生なので、することといえば勉強が主だ。まだ進級したてで受験勉強には少し早めかもしれないが、俺よりも少し学力の低いナマエは嬉しいことに俺と同じ大学を目指すらしい。なので今から早めに頑張っておくというナマエに付き添って、俺もいつも勉強をしている。日本で一番仲の良い友人だから、というのもあるが、ナマエは根っからの文系で俺は理系科目が良いので、お互いの不得意を埋めるのには一緒に勉強するのが丁度いいのだ。

ここまでを聞けばきっと真面目な人間だと思うのだろうが、ナマエは案外適当な奴だ。それに加えて飽きっぽい。勉強はできるがそれほど好きというわけではなく、すぐに手を止めてはふらふらと席を立って、気に入った本を手に持っては俺の隣へ戻ってくる。今だって、読書をしているのかと思えば、それにも飽きた様子で机に突っ伏して寝ている。その気まぐれ加減は猫を、それともう一つ、かつて古い付き合いの知り合いが連れていた動物を思い出す。
最初はこれにも呆れていたが、今ではもう慣れてしまった。

「おいナマエ、本に飽きたなら開きっぱなしの問題集でも解いたらどうだ」
「うーん、気分が乗らない。今日はもういい」
「そうか。なら帰るか?」
「さすが相棒、話がわかるなー。帰りコンビニ寄ってこ」
「ああ、かまわないぞ」

よっし、掛け声と共にナマエは立ち上がり、問題集やらノートやらをあっという間に鞄に詰め終わると読みかけの本を元の場所に戻しにいった。その間に俺も帰り支度をする。
すっかり集中していて気づかなかったが、時計を見ると丁度いい頃合いだった。これならばナマエが飽きて帰りたがるのも頷ける時間だ。

丁度戻ってきたナマエと学校を出ながら、他愛もない話をする。主に話をするのはナマエで、俺の方は今から向かうコンビニの新作パンが美味しいからおすすめだの、でもミルクティーは向こうのスーパーのが安くて美味しいだのと言う話を聞く専門だった。だけど、このやり取りを俺は結構気に入っている。

ナマエと二人で居られる時間が、好きだ。

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