男主 | ナノ


▼ にい

耳の形が違います。頭には黄色いツノがあります。普段は隠していますが、手も少し違います。人間とは違います。では私はなんなのでしょう?聞かれたって私にもわかりません。

手や耳がみんなと同じで、ツノが無ければ、みんなと仲良く過ごせたのでしょうか。おじいさんとおばあさんに聞きました。2人は黙って首を振ってから、「リデルはそのままでいいんだよ」と言って頭を撫でてくれました。
それでも、みんなと仲良くすることは難しいのです。私は仲良くしたいと思っているのに、みんなは私のことが嫌なようで。
それは、私が人間とは違うから。では、私はなんなのでしょう。考えてもわからなくて、涙が溢れるばかりでした。
悲しいときはなぜだか、決まって雨が降るのです。


遠くからナマエさんの声が私を呼びます。ナマエさんは優しいから、心配して探しにきてくれたのです。
なのに私は、今だけは見つかりたくないと思いました。自分が惨めで仕方ありません。大好きなナマエさんに会ってお話する元気が、今はちっともないのです。
ナーエの森は私の方が詳しいので、ナマエさんから隠れることは簡単なことでした。
雨が少し強くなった気がしました。

許されるなら、このまま一人で泣いていたいのに。ナマエさんは、私のそんな我が儘を許してくれない人でした。

私が隠れることが上手ならば、ナマエさんは私を見つけることが上手でした。
すぐに私を見つけては、どうしたんだ泣いているのか大丈夫かどこか痛いのかいじめられたのか誰にだと一気にまくし立てられました。答えることが出来ない私を全く気にせずに、傍で大丈夫だ俺がいる心配するなと根拠のない慰めの言葉を投げかけてきます。本当は誰にも何も言われていないのですが、言葉が出てこなくて心配しないでくださいとも言えません。

こういうことは何度もあって、その度にナマエさんは私を見つけては泣き止むまで精一杯励まそうとしてくれました。
深呼吸をして、やっとまともに話せるくらいに落ち着いたとき、きっとナマエさんの不思議な力で悲しい気持ちが吹き飛んでしまったんだと思うのです。おかしな言い方をすると、まるで言いくるめられたみたいに。でも確かに、悲しい気持ちは心の中から消え失せていたのだから、ナマエさんのおかげだということはわかります。


さぁ、帰ろうかと手をつないで、そしてすっかり晴れた空を見上げたとき、雲と雲の間から絵本の世界のような虹が決まって見えるのです。

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