男主 | ナノ


▼ 連行されてはいけません

ミョウジナマエくん、このあと暇ですか?どうせミョウジナマエくんのことだから速攻お家に帰ってゲームするんだよね。ええ、ええ。わかりきってるよそんなこと。それじゃ、行きましょう!

どこに。



授業が終わった今日は掃除当番じゃないさぁ帰ろう。といったところで、教室の扉のすぐ近くにはなんと俺の出待ちファンがいた。
……らよかったのだが、待っていたのは昨日の赤毛少女だった。
食べ物に釣られたとはいえ立派に「お友達」という条約を交わしてしまったのだから無視するわけにはいかなくて、しぶしぶ声をかけようとした瞬間、赤毛少女は俺に気がつくとこちらが喋るよりも先に冒頭の台詞を口にした。
俺はというと声を出すことも忘れてしまって今は腕を掴まれてどこかに連行されている最中である。
歩くの速い!なんだこれー!

「ねえ、えーっと、あんどうさん?俺どこに連れてかれちゃうの、ちゃんとお家には帰れるよね!?」
「施錠の時間には帰れます!」

こちらには顔を向けないでそう言われた。あ、どこに連れていくのかはスルーですか。
お楽しみってやつなのか。

しかし、女の子に腕を掴まれるというのは初めてだからどういう対応をしたらいいのかわからないぞ。まず異性とここまで接近したことない。特にモテるわけではないし。だからといって全く喋らないわけではない、クラスメートの女子とは一言二言普通に話すが、ちゃんとした女の子の友達ってこの子が初めてじゃないか?な、なんだか変にどきどきしてきたけど別にこれは邪なことを考えてしまっているのではなくて男のさがというか生理現象というかふじこふじこ


んなことを考えているうちに目的の場所に着いたみたいでここだよ、と腕を引っ張られた。
なんだっけここ。俺の記憶が正しければ、理科の授業で一度来たような気がする。
でも一体なんだってこんなところに連れてこられなきゃなんないんだ。
赤毛少女は躊躇なく扉を開けた。

「ミョウジナマエくんを連れてきました!」
「いらっしゃ〜い」

丸椅子に座って待っていたのはこれまた一昨日のTHE・エロゲ主人公だった。やっぱりお前か!!
なにここ、なんで俺こんなところに連れてこられたの?そして今から何が始まんのこれ!?
なんて軽くパニックになっている間に赤毛少女とエロゲ主人公は何やら目配せをしている。
なんなんだ一体!?さてはお前らリア充か!そーなんだな!?
そして赤毛少女が小さな声でせーの、と言うと二人は軽く息を吸って。


「「物理部へようこそー!」」


パンパカパーン!……なんていうファンファーレみたいな音が何処かから聞こえた気がする。
いきなり言われたことをすぐに理解できないままきゃいきゃいとはしゃぐ二人を見て呆然としていたけど、はっと気がついた。
えっ何?なに?ぶつりぶ?ホワッツ?なにその名前だけじゃ活動内容全然わからん部活!?

「なにそれ!?」
「とにかく、我が部は新入部員の入部を大歓迎します!まぐろくん拍手!」
「イェーイ!」
「だからなにそれ!?」

パチパチという二人分の拍手を浴びせられてなんとも言えない気持ちになった。
家に、帰りたい。

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