男主 | ナノ


▼ 嫌がらせをしてはいけません

どういうこった。
転校早々に派手に転んで教室に入室したことによりクラスメートにバカウケされた俺だったが。
担任の紹介で見事に名前を間違えられて涙ながらに「すみませんミョウジです…」と訂正を入れた俺だったが。
親しみやすさを覚えてもらったのか数人のクラスメートと早くも友達になることができ、順調なドキワク☆新学校生活のスタートを切った俺だったが。

どういうこった!

さあ下校だ帰ろうと廊下を歩いてただけなのに見知らぬ男子生徒(おそらく他クラス)に絶賛道を塞がれ中なんだけど。
右に行こうとしたら右に移動するし左に行こうとしたら左に移動してくるんだけど!
確実にわざとだよなこれ?天然でやってるわけじゃないよな?
なんで!?なんか俺悪いことした!?もしかしてカツアゲ?!不良怖いお家帰りたい!
しかしこの男子生徒、一切の無言。俺も釣られて無言なんですけど。
分厚い前髪で目は見えないが、口角は斜め上45度に固定されている。
いやいや風貌アヤしすぎるだろ!エロゲの主人公か!


「ごめんね、どっちに避けるか迷っちゃってさ。決してきみの進行をふさぎたくてやってるわけじゃないんだ」
「あ、そうっすか…ってなんでやねん嘘つけ!」

「まぁまぁそんなに怒らないで?実は本当だから」
「ぐぬぬ…そういうならいっせーのーでで俺は左、お前は右に進むんだ!いいな!」
「それってさ…いや、僕は別にかまわない、かも」
「じゃあいくぞ!いっせーのーで!」

俺は勢いよく足を左に踏み出した。
ら、男子生徒も足を左に踏み出してきた。鈍い音がした。

「いってえ!痛い!馬鹿お前石頭!右に進めって言ったろ!」
「うーん。普通に考えて、僕から見て右、きみから見て左に進んだら、そりゃぶつかると思うんだけどね?」
「しまった!」

早く帰りたいゲームやりたい一心で全然そんなこと考えてなかった!
あまりの痛みにしゃがみこんだ俺を、見知らぬ男子生徒は相変わらず口角上げっぱなしで見下ろしている。思い切り睨んでやるけど全然効いてない。くそうムカつく!頬つれ!


「きみ、ミョウジナマエくんでしょ?」
「いかにもだけどなんで俺の名前知ってるの怖い」
「転校生は噂になるもんさ!」
「マジか…」

一躍時の人となるのも時間の問題かもしれない。もうなってんの?
そこそこ目立ちたくないので勘弁。転校生って大変なんだな…。

「で、僕はささきまぐろ」
「見た目はエロゲの主人公なのにサザエさんに出てきそうな名前してるな」
「わお、酷い暴言だね…!」
「暴言かいまの?」

念のために言っておくが俺は未成年なのでまだエロゲーには手を出していないぞ!
ささきまぐろと名乗ったこの男子生徒の家は魚屋をやっているそうだ。絶対容姿とあってない。

ん?魚屋?
魚屋って普通商店街にあるよな…ということはまさか


「これからよろしくね、ご近所さん」


全力でお断りしたい。

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