男主 | ナノ


▼ 居留守をしてはいけません

全力で片付けをさせられた次の日の日曜日、俺は引きこもってまるで親の仇のようにゲームに勤しんでいた。両親共々健在だけど。
引越し前に新しく買ったゲーム、開けるの楽しみだったんだ。
せっかくの日曜日なのだが、時間が経つのも展開も早いもんで明日からは学校なのだ。
新しいことに慣れるのだとかイロイロで、間違いなくゲームなんてしてる暇はないだろう。そうですやり溜めです。
というよりも外に出たくないだけなんだけどね。

「ナマエ、あんたにお客さんが来てるわよ」
「俺はここに知り合いは一人もいません帰ってって言って」
「そんなことは知ってるわよ。はやく出なさい」

この辺の子だろうか。めんどくさいなぁ。
とりあえずやりかけのゲームをポーズ画面にして母さんに向き直る。

「どんな子?」
「あんたと同じ年くらいの女の子よ」
「あー無理無理。男でも考えるだけ考えて無理って言うけど女の子は完全、即効即刻無理。普段っていうか普通のゲーオタなら「これなんてギャルゲ?ひゃっほい!」ってなるところだけど現実そう甘くないから。女の子とか話合わない合うわけない。現代の中学生女子は特に厳しい。なんかぎこちない雰囲気になって明日から始まる学校生活に過度の不安とモチベーション不足で故障を来たしたくないから。つーか同い年くらいって学校同じなんじゃね。学生の大半は素晴らしき学校生活が命なのにこんなところでへこたれてたまるか」

「つまり?」
「掃除洗濯その他家事全力でお手伝いさせていただきますのでどうか今は忙しくて手が離せないらしいのでお引取りくださいと言ってくださいませんでしょうか美人なお母様」
「今回だけだからね」

ああやはり持つべきものは息子の性質をよく理解した素晴らしき母親!
男性は大体マザコンだとかいうけどそうに決まってる。最低?なんとでもいいやがれ!

任務は達成。ゲームを再開する。
これ終わったらマミー2やろうと思った。マジ来世でもマイマザーの息子に生まれてくる。




「ごめんねぇ、まだ片付けが終わってなくて、今手が離せないみたいなの」

「そうですか…タイミングが悪かったですね。急に訪問してしまってすみません。また今度改めて挨拶に伺ってもよろしいでしょうか?」

「ええ、大歓迎よ!仲良くしてやってね」

「いえ、こちらこそよろしくお願いします」



この選択がこの後あんなことになるとは思いもしなかった。
時よ戻れ。ここからやり直すから。

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