sss | ナノ


▼ げろ甘ですね

「つらい」
「何がだよ」

冴えない見た目をしたオレさまの恋人は、その見た目に反さずビビりでヘタレだ。今だってオレさまよりもデカい体格をしているくせに、オレさまに抱きついたまま肩から顔を上げやしない。何があったかわかんネェオレさまはその背中を両手でポンポンと叩くだけだ。

「ヘドのバンドの紫の子、めっちゃ睨んでくる。俺なんかしたかなあ」
「ペルヴィスのことか?」
「うん、あの可愛い子」

あいつとなまえが接触したことなんてあったかなぁ、と考えて、あぁそういや今日はライブ終わってからなまえと会ったんだったと思い出した。メンバーと一緒にライブハウスから出た時に、外で待ってたなまえを見つけたから。あの時やけにビクビクしてたのはメンバーにビビってたからだと思ってたけど、やっぱりそうだったのか。
可愛い子、確かにペルヴィスカワイイけど、なまえが言うとちょっとムカつく。そう思ってたらつい腕に力を込めてしまったようで肩に顔を埋めたまま「痛い」と言われた。すぐに「ワリィ」と謝って背中をさすってやる。

「別にペルヴィスは睨んでネェと思うぜ。目付きがちょっとキツいだけだって。そこは本人も気にしてるから、オマエもそう気にしてやんなよ」
「そっかなぁ……俺みたいなダサイ奴、しかも男がヘドの恋人なんておかしいと思ってんじゃないかなぁ……」
「なんだよ。浮気疑ってんのか?」
「そうじゃないけどさぁ」

どこまでネガティブなんだ、なまえは。
確かに、なまえと付き合ってることをメンバーに知られた当初は散々おちょくられたけど(主にストルナム、一発ブン殴った)、別にそれがダメだとかは誰にも言われてネェのに。そこまで気にするなんておかしなヤツ。

「普段からウジウジしてるオマエも嫌いじゃネェけどよ、なまえはオレさまと付き合ってんの嫌なのか?」
「嫌じゃねえよおお好きだよバカアアア」
「だったらもっとオレさまの恋人だってこと、誇りに思えよな!オマエの方がバカ!」

だってオレさま、プワープで一番人気のロックバンドのボーカルやってんだぞ。超有名人じゃネェか。
釣り合わネェとか考えてる暇あるなら、もっと恋人としてオレさまを喜ばせるべきだ。なまえのバァーカ。

オレさまがそう言うとなまえは突然ガバッと肩から顔を上げた。びっくりして硬直してると、いつの間にかシャツのボタン全部外されて、ネクタイまでも取られてしまっていた。

「アレ、喜ばせるってソッチ?」
「違うよ。今日はライブあって疲れてるだろうからさ」

さっきとはうって違って、獣みたいな顔してる。こういう時の顔はカッコいいんだけどなぁ。それなのに、気遣ってくれてんだ。
ちょっと感動してたら胸の辺りにチリッとした痛みが走って、あーコレはつけられたのか、と思った。

「見えたらどうすんだよ」
「しばらくライブないだろ?」
「イヤ明日木曜だから、オレさまクエスト行くんだけど」
「あ」

あ、だってよ。間抜けな顔。
愛おしくなって今度はオレさまが抱きついてやった。ついでに押し倒して色んなとこにチュー。服着ろよ風邪引くぞ、なんて声が聞こえた気がしたけど知らねー。脱がせたのはなまえだろ。オレさまは知らねー。

ふたつみっつと付けられた痕を見せびらかしたい気持ちもあるけど、なまえはきっと恥ずかしがるだろうから、明日はシャツのボタンを一つ上まで止めてネクタイで誤魔化そう。けどオレさまがこんな冴えない男と付き合ってることなんて、メンバーくらいしか知らネェから、安心して独り占めできそうだなぁ。なまえはメンバー怖がってるし。


「な、今度ライブ見に来てくれよ」
「えっ無理だよあんな怖いとこ行けない」
「外で待ってるほうが目立たネェ?出待ちのファンとか怖くネェの」
「怖いけどさぁ……わかったよ、行くよ」
「やった!言ったぞ、絶対だかんな」
「おう……あ、俺あれやってみたい、ギターピックキャッチするの」
「ダメだ、ストルナムはダメだ。ズルい。なまえは前の方でオレさまのダイブを受け止めるんだ」
「その方が無理!恥ずかしいだろ!」



「な、好きって言って」
「さっき言ったよ」
「んなモン忘れた!もっかい」


「このヘドめ……好き、だ」

「ヘヘ、オレさまも」





この後めちゃくちゃイチャイチャした

prev / next

[ back to top ]