▼ 構ってちゃんともらった分はお返しするタイプ
本を選んでいるきみの隣で全部嘘だったんですよ、と告白してみると大して気にした様子もなく僕には目もくれずふうんと言う。
その態度がとても気に入らなくて彼には見えない自分の右の手を強く握り締める。
「僕ほんとは人間じゃないんだ」
まあ人間なんだけど。
ふうんそう、二文字足されただけの変わらない返事に更にむっとする。
素朴なままの表情に口元だけ楽しそうに歪めたその顔は僕ではなく、詰め込みすぎて固くなった僕の本棚に向けられている。
「僕が人間じゃなくともきみは愛してくれますか」
僕は人間なんだけど。
「知らん」
目もくれず。
これはひどい。
愛ってなんだっけ、よくわからないけど暖かいもので、今の彼のは冷たすぎやしないか。
つまり愛なんかないのか。
彼は不意にこちらに顔を向ける。
その瞳はしっかりこちらを見ていた。
僕を見ていた。
「でもお前が人間じゃなくとも俺のこと好きなら俺も愛す」
僕はきみに見てもらいたいだけのただの人間なのだ。
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