▼ 陰気野郎
夏が終わり暑苦しいから暖かいに変わった日差しでも僕はあまり好きにはなれない。
だって奴ったら親の仇のように照りつけてくるのだから。
カーテンを閉めきってしまえばいいのだけれども、家に居る時間の大半を過ごす自室は掃除が好きな変わった同居人の手によっていつも綺麗にされていて、読書や勉強をするには気にならないが余計なものが何一つ無いそこは僕にとって居心地の悪いものだった。
普段何気なく通る、まるで布でも敷いたみたいな薄い日陰ができた廊下で膝を抱えて座る。そのまま何もしないで黙々と考える。
この前のテストの点数とか、そろそろ借りた本の返却期限が近いとか、アミティたちと話したこととか、
あいつのこと、とか。
そういえば今日は日曜で、今の時刻は昼を少し過ぎた頃だ。
あいつは今なにやってんだろう。
僕が今こうやって考えてやってんだから、あいつも僕のことを考えるべきだ、なんて。
本音だ。
普段は自分だってわかりやしない気持ちだ。
たまにこうやって思い出してやらないと、すぐに消えてしまいそうになる気思いだ。
消えるはずなんかないけど。
「ぼくほんとはあいつのこと好きなんだよ」
明日にはきっと忘れてる。
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