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▼ 何しにきたんだよの巻

どうして、なんだって君がこんなところにいるんだい。
眠いから帰ったら寝るって言ってたじゃないか。どうして深夜の学校に、しかも僕達がクラブをしている時に来るの。

「弁当箱忘れた」

ああ、そうかい。全く君らしいな。
言いたいことは沢山あるのに思わず笑う。他の奴に見つかったら大変だ。

風間はと聞かれたので小さな声で「僕も忘れ物」と言った。
気をつけて帰るんだよ、と声をかけると、風間は帰んないの、と言われた。

馬鹿、帰れないんだよ。

一緒に帰ろう、聞き間違いじゃなければそう言われた気がする。その言葉、別の日の放課後に言われたかったよ。きっと君は家に帰れない。


逃げ足が早い弱虫の君ことだから、状況を理解すれば死に物狂いで逃げるんだろう。殺されないでね、ちゃんと隠れてよ。クラブが終わる朝までさ。
僕はいつの間にか君がいないと駄目になってしまったのだ。

今夜のターゲットは他の誰かがやってしまったらしい。どうでもよかった。
君の死体を見つけてこっそり両手を合わせる。涙が落ちた。ひとりじゃ生きてけないって言っただろ。


だから数え切れないほど、今日という日を繰り返しているのだ。君が生き延びるその日まで。

ある日、いつものように死体を見ていて気づいた。
君、弁当箱なんて持ってないじゃない。

(死にもの狂いのカゲロウを見ていた)

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