食卓爛漫楽しみ度 | ナノ
付き合う前のおはなし





ふとしたときに、上をみるとたまに何ら変哲もない空が広がるが、雲のかたちは全てが一緒ではなく別々のかたちをしていることが伺える。あれは、怪獣のかたちににているとかトランペットのかたちににているとか様々なものに形作りをする雲を見ていると新たな一歩を踏み出したくなる気持ちを与える。

「もうこんな時間か、そろそろ帰らないと」

何時間見続けていたのだろうか、辺りは暗くなっていた。今日は雄二郎が来るらしいからはやく帰らなければ…と内心慌てながら帰路に身体を向ける。走る訳でもなくのったらと歩いていれば猫が隣にいて追い抜かれてしまった。猫は今日も頑張っているなあと感傷に浸りながら自分は今日何をしたのだろうかと考える。散歩して飯を食って、散歩して空を見て今にいたる、と子供に模範にならない生活に苦笑した。漫画家とは言っても想像力が無限にあるわけじゃあるまいし、気分転換だって必要だ。切羽詰まりながら描いても思う通りにはいかないだろうと思い1日だけ何もしない日常を送って見たのだが気分が晴れるようなことはなかった。漫画を描こうと決意をしてから走って帰路に行くが、玄関先で天然パーマの担当がいた。

「あ、雄二郎さん。来るのはやくないっすか、夕飯用意してないっすよ?」

「あ、いいよ。というか、君の場合は夕飯も昼飯も全てがカップラーメンなんだから用意なんてあまりないだろう!…それよりも、今日はカレーを作ろうと思うから福田くん、台所借りるね。」

一頻りツッコミを入れたら自分の両腕に持っているスーパーの袋を見せながら台所に入っていく。

「じゃあ、できたらおしえてください、今からネーム描くんで」

そういって机に向かうと台所からりょーかいと大きな声がした。そういえば雄二郎って料理作れるんだな、と思いながら鉛筆を持つ。何故だか、先ほどまで悩んでいたシーンなのにすらすら描けていて散歩効果スゲーなと褒め称えながら次々と描きだしていった。

「福田くーん、カレーできたよ、」

パタパタと走りながら机の前まで来て声をかけてきた。せっかくペースが上がってきたのにとも思ったが腹の虫が鳴りそうなのを感じ、夕飯を食べることにした。あまり広くないテーブルで大人二人がしかも男同士が寄り添って食べている光景に乾いた笑いをしながらカレールーを口に運ぶ。

「あ、うまいっすよ。いや、雄二郎さんって料理作れたんすね」

「まあ、最低限しか出来ないけどね。それにしてもすらすらと描いてたね。次号期待してるよ」

「どもっす…」




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