俺にも君にもあなたにも | ナノ



いくら俺が泣いたってあんたは来てはくれへん。側にいてくれへんやろ。それでもええ…なんて思っていても相手にそう言ってしまっても心の奥では寂しがっていることを解っていてほしいねん、なんて傲慢なんかな。例えあんたの中で二人目でも大切な人の次という立場なら他の奴らには負けてへんやろ。でも何をしても一番にはなれへんねん。だから、一番なんて言葉は嫌いなんだと校庭の片隅にある大木に背を預けながら呟いた。

「あ、財前。何しとんの?」

「何もしてないっすわ。忍足先輩こそこないなところで何をしてるんすか?」

全く話さない部活の先輩が通りかかり声を掛けられた。もう部活に入って一年にもなるのに、忍足先輩とはまるで話せないでいた。後輩に人気なのか毎回、輪の中心にいて話しかけるタイミングなんて図れないでいたし、自分とは違うものを感じれたので何となく苦手意識を感じてしまっていた。そんな先輩が何故自分に話掛けてくるんだろうか、と模索していれば、

「あんな、白石が千歳と付き合うことになったんやて。」

言いづらそうにでもたんたんとした口調で話す先輩に何も言えないでいた。しょせんはあの人にとって二番目なのだからこうなることは予想内のことなのに、涙が止まらない。何年ぶりかの涙を流した自分に止める術なぞ無いに等しかった。
「わか、りました。気を、遣ってくれて…ありが、とうございます。て言っといてくれますか。」

言葉がうまく発せられない。もう無理だと、もう自分には希望がないと叩きつけられた感があって踞るしかなかった。

「すまんなあ、白石やのうて…俺からで。」

先輩はそう言いながら俺の頭を撫でた。くしゃくしゃとではなく柔らかく撫でてくれて、その温かさに和らいだ筈の涙がブワッと押し寄せてきた。

「堪忍なあ、お前なら大丈夫やって。また、幸せ探せるから、一緒に頑張ろうなあ」

だなんて、無責任なことを言ってくるが、今の自分にはそう言って貰える人がいて嬉しかった。もう少しだけあの人への感情をながしてしまえば忘れられるんではないかと。一年間の恋にも終着が来るんじゃないか、ということを込めて忍足先輩に抱き着き胸に思い切り顔を擦り付けて泣いた。抑えようとする声も忍足先輩の子どもをあやすかのような背の啜り加減によって止まらなくて、うわぁあんと泣いてしまった。

泣きじゃくってから、忍足先輩とどのように接しようかと考えるのはこれからの出来事。




好きでもあなたには好きな人がいて俺にはあなたが…/0322
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