感情保持 | ナノ


好きでもないやつから告白されて、普通に断るのは当たり前で、まさかその女が謙也さんの彼女だったとは思ってもみなくて、少しばかり惜しいことをしたなと思った自分は、何らかの感情を謙也さんに抱いているのだろうか。
謙也さんは普段から取っ付きやすい笑顔をしているためか、悲しい顔などを見た試しがないのを思い出す。少しばかり、見てみたい気もした。だから、断った筈の年上の女を呼び出して、付き合ってもええですよ。と言えば喜んだ顔で、彼氏と別れるねと言ってきた。こういう女は次々と別れては付き合って忙しいなと思う反面あき れるしかない。ただ、謙也さんの悲しい顔を見たいがための役割でしかないのに困る。

「最近、謙也さん元気ない気がしますけど、どうしたんすか。」

「ああ、彼女と別れてん。まあ、あんま構ってなかったんも悪いんけどな」

構ってなかっただなんて、あんな優しい謙也さんからはありえん言葉を聞いてはあ?と素っ頓狂な声を出してしまった。

「だって、最近ずっと財前と遊んでたやん。財前と飯を食うてた方が楽しいしな!」

「何、言ってんすか。俺がいけないんすか…」

言われてみれば、ずっと謙也さんの遊んでいた気がする。だから、謙也さんに彼女がいるなんて言われた時は、かなり驚いた。それなら今まで俺を優先してたんかいなと複雑な気持ちになる。嬉しいなんて思うのはおかしいんやろうか。もっと、自分を見ていて欲しい。優先していて欲しい。

「財前は、何も悪くないで?俺が楽しかったんや。でも最近、財前遊んでくれへんよな、彼女でも出来たんか?」

謙也さんの言葉に何も返事が出来なかった。まさか、あんたの元彼女さんと付き合うてますなんて正直なこと言えるわけあらへんし、何や謙也さんと喋っていると悲しい顔なんて見たくなってきてまうし、ただ彼女がいる謙也さんが嫌だったんかもしれんけど。

「まあ、ええけど。今日は駅の近くの甘味処に善哉食いにいかへん?」

「ああ、良いっすよ。じゃあ、着替えるまで待ってて下さいね。」

また、今度で良いかなんて思ってしまう自分はそうとう、謙也さんとずっと一緒に居たいんやなと思いながら謙也さんの後を追った。



とりあえずあんたは手放したくない/0317


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