表情欲情一番はキミ | ナノ




季節は冬から春へと移り、寒さもだいぶ和らいでいたときに、久しぶりに屋上への階段を上がる。ギィ、と古びた音がなる扉を開けると、何かがあったことを思わせる散乱された服などがあった。そこには、メイド服やらナース服、猫耳にウサギ耳、花柄ワンピースやデニム生地のミニスカートなどが落ちていた。
そこに、震えるように座っていたのは、財前の所属しているテニス部の先輩であり恋人でもある、忍足謙也先輩だった。ああ、見たいけど見たくないものを見てしまったと心の中で悪態をつき、声をかける。

「何してんすか…そないな格好で」

「あ、いや。これは違うんや…いや違わへんけど。」
「どうせ部長かホモップルの先輩らにでもヤられたんやろ、悪趣味やわ」

謙也は、恥ずかしさからなのか顔を俯かせていた。可愛いなあ、と不謹慎な事を考えていると、謙也は急に立ち上がり、何かを財前に向かって喋りだした。

「っ…似合わんで悪かったなあ!俺やってなあ、抵抗したんやで、でも白石たちが…!」

言いかけたところで、何を思ったのか逃げようとしてしまった。いや、その格好で逃げたら一生の傷を負うんやろな、と思い行かせまいと声をかける。まあ、それは建前で本当は、もっとちゃんと見たいという欲でしかないのだが。


「あ、ちょっと待ってくれません?何を誤解しとるかは知らへんけど誰も似合ってへんなんて言うてないっすよ。
それともあれですか、自信が無くなるのもスピードスターやと言いたいんですか、人の話少しは聞いた方がええっすよ?」

「なっ、喧しいわ!この期に及んで尊敬すべき先輩をばかにするんか!それになあ、自信なんて最初からあらへんし…」

「まあ、似合っとるんやないですか、まあ部長が着た方が他人から見ればエロチックには見えるんでしょうけど。」

謙也は、反抗するべく息を吸うが、いつの間にか財前の腕により引っ張られキスをされる。口を開けていたためかすんなりと侵入してきた財前の舌によって絡めとられ、唾液が送られてくる。どちらかともいえない唾液がくちゅくちゅと音を出し耳をも犯されている感覚になる。息もだんだん繋がらなくなり苦しいと財前を引き離そうと力を入れるのだがなかなか離れてくれなかった。本当にヤバいと感じ、ガブッと舌に噛み付けば怪訝そうな顔をした財前が唇離す。唾液のせいで濡れてしまった唇を厭らしく舌舐めずりをして、にやっと嫌な笑いをする。

「俺はあんたに欲情するんですよ。」



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テーマ「人外ファンタジー」
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