さながら楽しいわけでもなかった。ただただ学校に赴き教材を開き黒板に書かれた文字を板書するだけだった。それがとても苦痛でならない。今、目の前に居る人間はどう育ったのだろうか、と不思議に思った。彼も苦痛だと感じたのだろうか、その反対で生き甲斐とやらでも感じることが出来たのか、疑問がふつふつと募ってきた。
「ねえ、福田さん。あなたは、学生時代に苦痛と感じましたか?」
「はあ?」
はあ?なんて返されることはわかっていた。何にせよ今の質問は、自分でも何を言っているのか分からないからだ。
それでも沈黙に耐えれなくなってしまった訳で、説明をする。福田さんは、僕になにふり構わず次の提出であろう原稿を描いている。そんな福田さんをよそに携帯なんて打っている自分は、時々だが情けなく思えてくる。福田さんは描きたいものを描いている。多少なりとも担当者から変更してくれとは言われているだろうが、僕とは違って一人作成に没頭中。
「あれですよ。この変哲もない日常に苦痛でしたかと聞いているんですよ。」
「そりゃあ、少しくらいは誰でも思うんじゃねえか。七峰くんだってそう思うから聞いたんだよな。」
「いえ、別にそういう訳ではないんですけれども、ただ貴方が一緒なら悪くないかなとか…」
「おいおい、そんな年上を弄ぶもんじゃねえよ。」
「本気なんですケドも、まあ答えが出たらまた来ますねっ、じゃ真太さん」
名前で呼ぶんじゃねえ!と怒鳴った声が聞こえて、ドアノブに手をかけ開く。振り返らずに手を左右に揺すりながら帰る自分は、さぞなかっこいいのだろうなと自惚れた後、バイトへの道のりを歩いていった、そんな昼下がり。
会うための口実にと/0214