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「群がれマスメディア!今年もお前らが大好きな高校生たちの青春暴れ馬…雄英体育祭が始まディエビバディアァユウレディ!!??」
雄英体育祭、当日がすぐにやってきた。
「………何ソワソワしてるのよ、エース」
「するだろ!普通!祭りだぞ!」
「お祭りだけどそういうお祭りではないでしょ」
入場まではまだ少し時間がある。
だから御手洗を済ませがてら散歩をしていたらバッタリ通路でエースと出くわした。
「確かにそりゃ、イゾウが言ってた縁日ってやつではねぇけど腕試しの祭りだ。海賊ならみんなテンション上がるだろ!」
「今は海賊じゃないってば」
「元だよ、元!ったく、細けぇな!」
「はぁ……」
まぁ、まだ普通の運動会みたいなのじゃなくて良かったとは思うけど。
あれつまらなすぎて嫌気がさすのよね。
「それに!今日は親父たちが来てくれるんだぜ!?」
「……そうね」
そう、今までと違って今回は親父たちが来る。
今までは仕事が忙しくて学校行事にはなかなか顔が出せなかった親父たち。
あと親父たちのような有名人が学校に来たら大騒ぎだということもあったから。
だから、今回が初めてなのだ。
こんな行事に親父たちが来てくれるのは。
「無様な姿は見せらんねぇな」
「何?見せるつもりだったの?」
「んなわけねーじゃん…に、しても変な感じだよなー」
「?何が?」
「この雄英体育祭。
去年までは見てる側だったじゃん俺ら」
「私はあんまり見てなかったけど」
「海砂はな」
そういえば、エースは毎年欠かさず見てたっけか。
「な、海砂」
「?」
名前を呼ばれ、エースの方を見ればエースはニッといつものように笑った。
私はそれを見て首を傾げる。
「やろーぜ。ワンツーフィニッシュ!」
「!」
「"白ひげ"が一番って証明しようぜ」
ニシシ、と笑うエースに私はぱちぱちと瞬きをする。
「どうしようかしら」
「え!やらねーの!?」
「正直、あんまり興味ないのよね。優勝には」
「えー!!!!!!」
「うるっさいわね!」
耳元で叫ばないで!ご、ごめん。とやり取りをして、私は小さくため息をつく。
しかしエースからの視線は依然なぜだ、と訴えてくる。
「エースみたく確かにワンツー取るのは出来ると思う。
やろうと思えば。でも、結局この体育祭はプロからのスカウトを貰う行事。つまりどれだけ好印象、尚且つインパクトを与えるかってこと」
「お、おぉ」
「それを考えるとワンツーフィニッシュはインパクトという点においては良いと思うけど…」
「…別に俺ら、悪い印象は与えねぇと思うんだけど」
「まぁね。でもこう、うちのクラスの連中とか見てるとトップ争いは相当過激化すると思うのよ」
「……トップ争いって普通はそんなもんじゃね?」
「いやそれはそうなんだけどね」
焦凍や勝己、そして案外問題児な出久…
あそこら辺がきっとこの体育祭で大暴れするとみた。
どんな風に、と言われれば流石に答えられないが。
とはいえ注目は持っていかれそうだ。
「…いつも最後の順位争いは確かに個人戦、だったわよね」
「ん?おお」
「…運次第だけど、私とエースが当たれば一番いいと思うわ」
「げっ、俺と海砂が?」
「そ」
そしたら本気でぶつかることが可能だ。
現時点で、私たちの他の生徒では実力の差がある。
前世のこともあるし、当然といえば当然。
だからこそ私は調整してきたのだ。
強いという印象は与えつつも、あくまでも同年代レベルで。
追いつけないとは思わせない程度に。
少し先にいるという程度に。
エースは知らないけど。
「ま、ある程度上に行ったら私は途中で棄権するつもりよ。余力を残して、ね」
「はぁ!?何でだよ!?」
「そっちの方が"あの子はほかにどんな力があるんだろう"って気になるじゃない?」
「……う、うわぁ」
「何よそのうわぁって」
「相変わらず頭使ってる」
「あんたが頭使ってなさすぎんのよ」
使う時は使うのに、使わない時との差が酷すぎんのよね、エースって。
「って感じだから、よろしく」
「ワンツーフィニッシュしようぜ?なぁ」
「ならその気にさせなさい?体育祭中に」
「!…言ったな?よっし、見てろよ!」
「はいはい。じゃ、そろそろ戻るわ。会場でね、エース」
控え室に戻ると、みんなは特に緊張した様子もなくのんびりと過ごしている。
「みんな準備は出来てるか!?もうじき入場だ!!」
「コスチューム着たかったなー」
「公平を期すため着用不可なんだよ」
「お、海砂ちゃんおかえり!」
「えぇ」
透が私に気づき、ぴょんぴょん跳ねる。
透はいつも元気で可愛い子だ。
どんな顔かは分からないけど。
「緑谷」
「轟くん……何?」
「客観的に見ても実力を俺の方が上だと思う」
「へ!?うっうん…」
ふと聞こえたのは、喧嘩を売る焦凍の声。
「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな。
別に総合詮索つもりはねぇが…おまえには勝つぞ」
「おお!?クラス男子最強が宣戦布告!!??」
私はつい、焦凍もそんなことをするのかと物珍しさからへぇ。なんて注目してしまった。
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって…」
「仲良しごっこじゃねぇんだ。何だっていいだろ」
「轟くんが何を持って僕に勝つって言ってんのか…
は、わかんないけど…それりゃ君の方が上だよ…
実力なんて大半の人にかなわないと思う…
客観的に見ても…」
「緑谷そういうネガティブなこと言わない方が…」
「でも…!!皆…
他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。
僕だって…遅れをとるわけにもいかないんだ。
僕も本気で、獲りに行く!」
「…………おお」
………見事なまでに、鋭児郎の言葉は2人に届いてなかったようだ。
▽▲▽▲▽
「1年ステージ生徒の入場だ!!」
ついに、入場だ。
久しぶりに、少し高揚している気がする。
「雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る1年に1度の大バトル!!どうせてめーらアレだろ、こいつらだろ!!?敵の襲撃を受けたにもかかわらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!ヒーロー科!!
1年!!!A組だろぉぉ!!?」
マイク先生の話の盛り方には、少々苦笑いが浮かんだ。
それは少し言い過ぎではないだろうか。
でも、盛り上げるにはそれくらいがちょうどいいのかもしれないけどそう言われる身にもなって欲しいというもの。
「選手宣誓!!」
「18禁なのに高校にいてもいいものか」
「いい」
「静かにしなさい!!選手代表!!1−A爆豪勝己!!」
選手代表ということは、勝己が入試一位なのね。
ふぅん。まぁ、不思議ではない。
「せんせー」
台にあがり、ポケットに手を突っ込みながらという勝己らしさを出しながら宣誓を始めた。
「俺が一位になる」
「絶対やると思った!!」
「調子のんなよA組オラァ!」
「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」
「ヘドロヤロー!!」
「せめて跳ねのいい踏み台になってくれ」
「ふ、ふふ、あははっ」
「海砂ちゃん笑っとる…!」
「海砂あんたね…」
「いや、だってあれ…ふふっ」
周りからの反感、スゴすぎる。そして面白い。
彼らしいとも言えるが、これは彼自身が自分を追い込むためだろう。
「本当、飽きないわね。彼は」
「飽きる飽きないの問題とちゃうと思う…」
そんなこんなで第一種目が発表された。
第一種目は、障害物競走。
「……シンプルね」
だがしかし、シンプルだからこそ侮れない。
障害物と一括りにしてどんなものが出てくるのやら。
ミッドナイトの指示で全生徒はスタートラインへと移動するので私もまた、その流れに沿ってスタートラインへと向かう。
「ヒーロー科として恥じないスタートを切らなくてはいけないですわね!」
「モモ、やる気満々ね」
「ええ!この体育祭はスカウトをいただけるチャンス。
そのチャンスを無にするわけにはいきませんわ!」
「ふふ、そうね」
とはいえ、こんなに人数がいるのだ。
この第一種目で半分以下には当然させられるはず。
コースはこの雄英外周分。
となれば、ふるいにかけて来るのは…
「スタートから来るでしょうね、当然」
そう思い、見てみればやはりそうだ。
この人数に対しあまりにもスタートゲートが狭すぎる。
ここでまず、ふるいにかけられトップに追いつけるか追いつけないかが決まる。
「ま、私には空もあるしあんまり関係ないんだけど」
「?海砂さん?何かおっしゃいましたか?」
「ううん。独り言よ」
そうして、種目はスタートした。
スタート!!!
ってスタートゲート狭すぎだろ!!
人踏んで行っちゃお。上通るなら飛ぶも踏むも一緒だし。
ぐえっ
いでっ
んげっ