一章

04

あれから、私は自然とリクオくんを避けるようになった。
さらに妖怪ネタも言うのをやめた。

その理由としてはリクオくんに近づきすぎたと感じたからだ。
あの日鯉伴を助けたのは仕方ないにせよ、今の奴良組に近づくのははっきり言って得策ではない。
それをわかっていたのにリクオくんに近づいていたのは、あまりにも愚行。



「ねぇ!!朧ちゃんも妖怪いると思うよね!?」

「いいや!!朧君もいないと思うよねぇ!?」



教室で頬杖をつきながら校庭を眺めているとリクオくんと清継くんがそんなことを勢いよく聞いてきた。
一体何の話だ。話が見えない。



「妖怪?」

「うん!」

「そうさ!ぼくの自由研究の発表の件さ!!」



答えとしては、いる、が正解だけども…



「……さぁな。知らん」

「え!?
朧ちゃん前はいるって言ってたよね!?」

「わからんものはわからん。
居ないかもしれんし、いるかもしれん」

「そんな……朧ちゃんまで………」



…なぜそんなに傷ついた顔をするんだリクオ。



「私は己の目で見たものを信じる。
人に聞いたものを完全に信じるほどお人好しではないんでな」



そもそも私は妖怪の血が入っているからある種妖怪のとも言える。



「それじゃあ朧くんも僕側だな!!
ほらみたまえ奴良くん!
妖怪がいるなんて嘘だ!!
君のおじいさんが"ぬらりひょん"!?
変な冗談は今後一切無しだよ!!」

「冗談でも嘘でもないもん!!!
ぼくんちは妖怪だらけでっ、おじいちゃんはぬらりひょんなんだー!!!」



ああ。全くもってその通りだな。
嘘なんか微塵もついてない。



しかし、妖怪なんて存在していると知ってるやつはこの世にどれほどいるのか。
普通に妖怪が存在すると言ってしまえば変なこと見られるのは当然といえば当然だろうに。
幼いからまだそこらが判断つかんか。



帰りの時間になり、私は一人とぼとぼとバス停へ向かうリクオの元へ駆け寄る。



「リクオくん」

「!朧ちゃん…」

「元気だせ。私は君の言うことは嘘だとは思わん」

「嘘なんかじゃないよ。本当なんだ…
おじいちゃんはぬらりひょんで、家にはたくさん、妖怪が…」



さっきよりも随分と弱々しい主張だ。



「別に嘘だとは言っておらん。
それに私も妖怪がいることは知っている」

「!?ならなんでっ」



ガバッと勢いよく下を向いていた頭がこちらを向いた。



「普通の人は妖怪が存在することを知らん。
私や君が特殊なのをわかれ」

「え」

「そんなことも知らんのか。
…妖怪の存在は今やおとぎ話のようなものだ。
いると知っているのは極極わずかな人のみ。
世間一般的には妖怪は架空の生き物なんだ」



下駄箱から靴を取りだし履き替える。



「だからこれからはあまり妖怪のことを口に出さないことをお勧めしよう。変人と思われたくなくばな。だが…もしもそれでもしたくなったのなら私の元へ来い。話くらいは聞いてやるが、あまり来るようなら無視するがな」

「え、ちょ、朧ちゃん!!」

「また明日」



私はバス通学では無いのでバス停とは逆方向へ進む。



「……はぁ。
ぬらりひょんも鯉伴も何をしている…」



リクオのあまりの無知さには呆れる。
あまりの酷さに頭痛さえする。
あやつらあの子になんの教育もしていないな…



「人の世界に送り出すのならある程度のことを教えておけと言うのに…」



きっとあのバカ二人のことだ。
そんなこと一切考えてないのだろう。
というか、そんな考えにすら到っていないんだろう。
鯉伴の嫁は人間だと前に言っていたからそういった点にはあまり頭が回らないというか分からないだろうから戦力外とも言える。



「…鴉天狗…も、無理か」



あいつはどちらかと言うと妖怪についての勉強には超意欲的だが人間のことに関してはあまり力にはならんな。



「…………はぁ。
今の奴良組を思うと頭が痛いな」









家に帰ってバスが土砂崩れに巻き込まれトンネルに生き埋めになったことを知るのはもっと後のこと。





















!?バスが…!

不自然な崩れ方じゃのう…

不自然…

早くも奴良組の三代目抗争でも始まったか?
ま、妾らには関係の無い事じゃ。
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