二章

09

ゆさゆさと体を揺すぶられる。
誰かに起こされる感覚に、私の意識は急速に浮上していく。



「ん、…」

「朧ちゃん!!」

「朧さん起きい!!」

「カナ…転校生…」



ムクリと起き上がればずきりと腹部が痛む。

……若干腹は痛むがまぁいい。
そんなことを思いながら周りを見渡せば、私たちは巨大なゲージの中に入れられていた。
良くもまぁこんなバカでかいゲージを持ってる事だ。



「よう、陰陽師少女とはったり女。どうだ…?
ネオンの光の中…処刑される気分は…?」

「な…処刑…?」

「そうだ…
三代目のガキが…約束を破ったからな…」



三代目、つまりリクオ。
あの子はそう簡単に約束を破るような子ではないが…まぁこやつら相手なら仕方あるまいか。
しかし一体なんの約束を取り付けたのやら。



「旧鼠…アホなことはやめるんや!!
えぇ加減にしい!!」

「おい女…その名で呼ぶなや。この街ではな…
星矢さんって呼べや━━━━!!!」



たかが呼び方、されど呼び方。
どうやら旧鼠という名の妖怪であるのにその名を嫌うのか。意味がわからん。
旧鼠の部下は転校生の胸ぐらをつかみ、そして服を引きちぎった。



「な…」

「式神持ってないてめーはただの女だよ」

「ゆらちゃん…」



膝をつき、無力さに絶望する転校生だが…
そんなことしてる暇はあるのか?陰陽師よ。


とはいえ…この妖怪共が女を舐めているのを知ってしまうと捻り潰したくなるではないか。



「さて…そろそろ時間だな。
ま…来ないなら来ないでオレはかまわんがな…」



時計を確認した旧鼠は汚らしい顔を晒す。



「知ってるか……?人間の血はなぁ…
夜明け前の血が一番ドロッとしててうめぇのよ。ちょうど…今くらいのなぁ…?」



そう言って旧鼠たちが中へ入り込んでくる。
転校生とカナは逃げ場はないと分かってはいても奥へと逃げるが、私は何も変わらず腕を組んだまま動かなかった。



「星矢さぁん、このはったり女俺食ってもいいっすかァ?」

「ダメだ。それはオレの獲物だ」

「ええー」



たとえこんな不愉快極まりない会話が目の前でさてようとも構わない。なぜなら…



「ん…なんだ…?…ありゃ」



ここに向かって、百鬼夜行であろう大きな妖気がすぐそこまで迫ってきていたからだ。



「……来たか」



百鬼夜行の登場で旧鼠たちは戸惑いを見せる。
だが、私もそのうちの一人だった。

百鬼夜行の先頭、百鬼夜行の主を見て私は固まってしまったのだ。



「………………」



私はてっきり鯉伴でも来るのだと思っていた。
だが、違う。あれは、誰だ。



ぬらりひょんに瓜二つ。



でも、ぬらりひょんじゃない。
ならば…



「………リ、クオ………?」



まさか。
あれが妖怪のリクオの姿だと言うのか?



「何者だぁ!?テメー!!」

「本家の奴らだな………」

「三代目はどーした!!」



こやつらの間抜けな発言に純粋に疑問符が頭に乗ってしまう。
目の前にいるだろうに。
一体こやつらは何を言ってるのだ?
どう見ても、今のリクオはぬらりひょんにも鯉伴にもそっくりだろうに。
旧鼠とはよほどの馬鹿なのか?



旧鼠は回状は回したのかと主であろうリクオへ問いかけるも、リクオはそんなものは破いたと言う。



そのやり取りを見ていると、首無や青田坊たちがゲージをぶち壊してくれた。



「つかまって」



ゲージを刃をもつ妖怪が切り、それを青田坊の怪力で壊し、首無の糸で私たちは引き上げらる。
青田坊はゲージを壊すことに意識がいっていたのか、私の容姿には気づかず、首無とも目が合うも首無と出会ったのは私が高齢の頃だ。
多少なりとも今の面影はあったかもしれないが若い頃の私は知らない。
だからだろう、首無は私を見て驚いたような顔をし少し頬を赤らめて目を逸らした。

……今の反応は気づいた反応ではないな。



そうして、奴良組と旧鼠たちのぶつかり合いが始まった。



「…バレる前に消えるとしよう」



あまり自ら危険を犯すことはしたくない。
やむを得ずここまで来てしまったが、リクオが来たのならばあとは彼らに任せるのが良い。
それにこのままここに居てはバレる可能性があるからな。くわばらくわばら。

私は気配を消して素早くそこをあとにした。
もちろん、心配させないようカナと転校生には私は一足先に逃げると一言いって。























ー殲滅後ー

…なぁ首無、人質三人いたよな。
一人消えてる。

え!?

あの娘は先に逃げたんや!

………お前ら置いて?

せや。薄情者やろ!!
…ちゃう。うちが先に逃がしたんや!

嘘つくの下手くそすぎか。
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