二章

08



日曜日、私は一人家でのんびりとしていた。



「…………」



時計を見ると、ちょうど集合時間辺り。
きっとこれから奴良組の妖怪たちはどったんばったんと隠れるんだろう。
この前の感じからして、恐らく転校生の妖気を感じ取る才能は乏しい。
敏感な陰陽師ならば家の中に入らずとも妖怪がいるかいないかはわかる。
転校生くらいならば流石に奴良組本家に行けば何かは感じるがどれがなんなのか、まではわからんだろうがな。



「おふくろ邪魔するぜー」

「…………………………帰れバカ息子」

「痛てぇ」



私はいきなり窓から入ってくる息子を思わず足蹴りにする。



「別にいいだろ?
息子が会いに来たってんだ。もっと喜べって」

「"ぬらりひょん"なら玄関から入れ、せめて」

「そこか」



子供である私は鯉伴を見上げる。
同年代では私はそこそこ高身長に入るが当然鯉伴の方がもっと大きいため、見上げるのは仕方ない。



「……なんかおふくろ、ちんまくて可愛いな」

「覇気で殴られたいか、そうか」

「ごめんなさい」



年頃になってからは、ぬらりひょ諸共覇気付きの拳又は平手、蹴りで手を出したこともある。
故にもはやこれは条件反射であった。



「で、何しをしに来た」

「おふくろと話をしに」

「話?」



一体何の話をしに来たのだ、と思ったがまずは茶くらいだしてやろう。
こんなでも息子なのだから。



茶をいれて来客用の湯のみで出してやると鯉伴は感謝を述べてそれを飲んだ。



「…………懐かしい。おふくろのいれる茶だ」

「私のいれた茶だからな」

「美味い…」

「それは良かった」



懐かしそうにその湯のみの中に入っている茶を眺めて微笑む鯉伴。



「で、話とは何だ急に」

「ああ」



コトリ、と湯のみを置き私を見すえる。



「おふくろにまどろっこしいことはなしだ。
って事で単刀直入に言うが…今すぐにと言わねぇから、親父と会って欲しい」

「……………はぁ」



そんなことだろうと思ったが、まさかここまで直球でくるとは。



「…お前がその考えに至った理由は?」

「俺は、おふくろが死んでからの親父を知ってるからだ」

「…………………」



真っ直ぐ見つめてくるぬらりひょんとそっくりなその黄金に輝く瞳。
鯉伴を見ていると、あいつと被って見えるのはなぜか。
昔は、そんなことなどなかったのに。



「なぁ、おふくろもまだ親父のことを愛してるんだろ」

「………あいつのことなど、忘れたくとも忘れられんわ」

「まぁ確かに親父がおふくろにしてきた事って息子の俺からしても中々に強烈なことばっかだとは思うがよ」



鯉伴は今までのことをふと脳裏に浮かべた。
以前、母と一緒になって父を怒ったこともあるし、呆れたこともあるし、父と一緒になって母にイタズラして100倍返しにあって軽く三途の川見た時もあった。



「…話変わるけどよ、俺の話、聞いてくれるか」

「ああ」


「………乙女の、事だ」



唐突だった。
つい、その話題を出てきた一瞬、ピクリと反応してしまった。



「…思ったより早く白状する気になったのだな」

「おふくろに隠し事は通じねーからな」



こっちの要望通すならそっちが知りたいこと先に言わなきゃ頷かなさそうだし。と笑うがお前は元母をなんだと思ってるんだ。

私は鯉伴に小さくため息を着くと、鯉伴は私が死後の話をした。



「おふくろが亡くなって数年くらいか…
俺は乙女の助けもあって俺の率いる奴良組は少しづつ力をつけていったんだ。
ゆっくりだけど、着実に」

「ああ」

「俺はよ、それに満足してた。奴良組があって、そこに愛する妻がいて、力もついてきて、満足してた。奴良組が力をつけていき、約50年何も変わらず奴良組だけが大きくなっていった」



50年。それはきっと妖怪にしては大した時間では無いのだろう。
でも、人間では違う。
産まれたての赤子が、その時代ならばもしかしたら死んでいるかもしれない年齢へとなっているのだから。



「おふくろや親父の間には俺がすぐにできた。
だから、周りは俺と乙女の間に子を望んでたんだ」

「…………」

「でもよ、俺や親父にはその時は知らなかったことが一つだけあった」

「知らなかったこと?」

「俺たち"ぬらりひょん"は、妖怪との間には子が出来ない呪いがあることだ」

「!!」



私は目を見開いた。
そして、すぐにその呪いのことを察した。



「…羽衣狐か」

「ああ…羽衣狐の呪いで俺と親父は妖怪との間に子は出来ない。でもそれを当時は知らなかった。しかも俺はこんなんだからよ、本家にはろくに帰らねぇことだってよくあって乙女のことを何も考えてなかった」

「……本家にいる乙女は世継ぎ世継ぎとまくし立てられたわけか」

「…それに耐えきれなくなった乙女は…ある日、ひとつの和歌を残して俺の元から消えた。
俺は長い間探し回ったが…見つからなかった」



乙女…今でもよく覚えている。
あの子は、妖でありながら妖らしからぬ妖怪であった。
この国では妖怪というが、国が変わればあの子はきっと妖精と言われたであろう。
彼女はただとても心優しく、ただ美しく、儚げで、人が好きなか弱い妖怪だった



「俺は、呪いのことを知った時…後悔した。
子が出来なかったことをもっとちゃんと考えていれば。乙女にもっと寄り添っていればってな」

「……起きてしまったことにそう思っても意味などない」

「ああ、全くその通りだ。
それでも、後悔しちまうもんだろ」



悔しそうに口をへの字にして、悔いるように眉間に皺を寄せる。
その様子を見るだけでわかる。
きっと当時の鯉伴は相当荒れていたのだろう。
鯉伴は確かに、乙女をとても愛していたから。
そしてぬらりひょんもぬらりひょんできっと、これは己が原因であることでふ抜けるな、などと鯉伴に言えなかったのだろう。



「でも今はそれも乗り越えて若菜っつー人間の娘と結婚してリクオが出来たわけでよ。
若菜が、俺の心を救ってくれたんだ」

「…そうか。ならいつか、その若菜という娘に礼を言わねばな」

「いやどっちかっつーと今じゃもうおふくろの方が娘なんだが」



黙れ、と茶菓子に出していた黒豆を鯉伴のデコに飛ばしてやる。
もちろん覇気ありで。
するとやはり覇気があるため相当な衝撃だったのかアダッッ!!とおでこをおさえた。



「お、おふくろの手にかかりゃ黒豆も凶器かよ…!」

「お前のそういう学ばん所はぬらりひょんそっくりだな。だから馬鹿だというんだ」

「ま、学ばないわけじゃねーよ……」



ただちょっとニュアンスを変えてどこのラインならOKなのかを探してるわけで、と訳の分からん言い訳を始める息子に小さくため息。



「…でも、だからよ…俺はもう乙女にゃあ会えねぇから、奇跡的にまたこの世に生まれてきたおふくろがいるなら俺は親父に会って欲しいと思う。俺のわがままだと思ってくれていい。
でもよ、別に仲違いしたわけじゃねぇ、おふくろはただ天寿をまっとうしただけじゃねぇか。何をそんなに躊躇う必要があんだよ。
俺はそれがわかんねぇ」



鯉伴は思う。
自分も彼女に会えるなら会いたい。
そして許しを貰わなくてもいいから、すまなかったとただ謝りたい。
だがそんなことも、自分は出来ないのだ。



「………………私は……………」



私も良くは分からないのだ。
何故こんなにも頑なにぬらりひょんに会うことを拒んでいるのかが。
これという、はっきりとした理由は何一つ見つからない。でも、嫌なのだ。
会いたくない。でも会いたい。
そんな思いがごちゃごちゃと複雑に混ざり合い、ワケが分からないのだ。



「親父な、おふくろが腕の中で静かに息を引き取ってゆっくりと体が冷たくなっていく中で」

「…ああ」

「ずっと…泣きながら、笑ってたんだぜ」

「…………」

「静かに涙流して、ただおふくろの髪撫でて、額に唇落として、俺も聞いたことねぇ様なやさしい声で『ありがとう。ゆっくり休め』って」



ズキリと胸が痛んだ。



「おふくろへの深い愛情は、400年経った今もまだ親父は持ち続けてる。むしろ浅くなるどころか深くなり続けてるのかもしれねぇ。
そんな親父を、あんたは放っておくのかい?」



………どうして。



私のことなど遠の昔に忘れ、後妻でも娶ればよかったものを。



「………なぁ、おふくろ」

「…………」

「そんなに苦しそうな顔するなら、俺と一緒に会いに行こうぜ。大丈夫。親父はただおふくろのこと、包み込んでくれるぜ」



な?と優しくなだめるような声で言ってくる息子に、私は泣きたくなった。



「ああ…忘れられたままなら、良かったのに」

「そりゃリクオに文句言ってくれよ。
ボールおふくろにぶつけたの俺じゃないんだしよ…」



それはそうなのだが………
……ああ、そうか。わかった。
私があやつに会いたくない理由が、わかった。



「………私は、怖いんだな」

「………怖い?おふくろが?」



まさか過ぎる言葉が出てきて鯉伴は一瞬でキョトンとした間抜けな顔をさらけ出す。



「約400年という長い時が経ち、私の知る奴良組は私の知らぬ奴良組へと変化した。
その400年の内に私の知る者も幾人か死に行き、私の知らぬ者が奴良組へ入ったのだろう。
人というのは変化を恐れる生き物。
私はその変化を見るのが、怖いのかもしれん」



そうだ。私はただ恐ろしいのだ。
あんなにも愛し、愛されたぬらりひょんが400年で何か変わってしまったのではないかと。
鯉伴の話を聞いて変わっていないと言われても、人とはそれを真っ向から鵜呑みにできるほど上手くできていない。

純新無垢な子供ならば違ったかもしれない。
しかし人というのは歳を重ねる事に汚れていく
真っ白な心が、どんどんとな様々な色へと汚されていく。
そうして人とはできていくのだ。



「…別に悪いことじゃねーだろ、それは。
おふくろは人間なんだ。
そもそも400年ってのはそりゃ長ぇさ。
ふと気づいたら400年の時が経ってるなら怖くなっても普通だろ」

「……なぁ、鯉伴」

「なんだ?」

「…ぬらりひょんは、まだ私を愛してくれているのか」



その質問に、鯉伴は愚問だと言いたげにぬらりひょんと似たニヤリとした笑みを見せた。



「そりゃもうな。
おふくろの誕生日だの結婚記念日だのは親父の代からいる奴らで祝ってるんだぜ?」

「……………それはなんか嫌だな」

「嫌なのかよ…」



普通それは私と共に祝うものだろうになんでそいつらと祝っているんだあやつは。

だが、それもぬらりひょんらしくて私は思わずクスリと笑みをこぼした。。



「…鯉伴。その話の件は考えておこう」

「!本当か!」

「ああ。だがもう少し時間をくれ」

「わかった。
んじゃあとで狒々のこと派遣するからよ」

「全く意味がわからん。
なぜ狒々をここに寄越す。そしていらん」



なんでそうなる。
本当に意味が分からないのだが。



「おふくろに言うなって言われてたけど狒々と首無には話しちまってるから?」

「鯉伴そこに直れ。蹴りを入れてやろう」

「待て、待て待て待て。
おふくろ座ってくれ!立たなくていい!
というか俺は立たねーからな!?」

「なら顔面を蹴ってやろう」

「顔面変形するからやめろ!!」

「そうなったら私がすぐに治癒させてやろう」

「使い方ぜってー違ぇ!!!!」



そういう為にその力ある訳じゃないだろ!!と全力で回避したい鯉伴はじたばたしていた。
こういう仕草は昔から本当に変わらない。
まぁ、そういう所は可愛いのだがな。



「はぁ。茶を飲んだのならもう帰れ」

「…………また来ていいよな?」

「来るなと言っても来るのがお前たち"ぬらりひょん"だろう?」



その言葉に、鯉伴はニッと笑った。



「流石おふくろ。よくわかってる」

「気をつけて帰るといい」

「ああ」

「特に後頭部にな」

「…………………息子に何するつもりだ??」

「さぁな」



鯉伴は私の言葉に、ただ静かに口元を引くつかせる。



「マジで何もすんなよ?」

「そういえば、この黒豆美味いだろう」

「おふくろ話聞いてくれ」

「私が作ったんだ」

「マジか。確かに美味かった」

「やらんがな」

「そこは持ってけって言うとこだろ」























▽▲▽▲▽
























鯉伴が帰ったあと、私は夕食の準備に取り掛かったのだがその最中に買い忘れの材料を思い出し、面倒だったが街へと繰り出た。



「………夜なのにうるさいものだな」



昔のこの時間ならばありえない騒がしさと明るさに目眩がしそうだ。
慣れたとはいえ、やはり居心地は悪いまま。



「あれ、朧ちゃん?」

「?…カナ?…と、転校生」

「花開院ゆらや。
好きに呼んでや、転校生やなく」



目的を達成したあと家への最短距離で帰るために所謂夜の街を歩いていたら転校生とカナと遭遇した。



「こんな時間に何をしている?危ないぞ」

「それは朧ちゃんもじゃん!」

「そやで、朧さんびっくりするくらい美人さんやしナンパされるんちゃうか」

「そんなものに聞く耳など持たぬわ」



それから話をしながら歩く。
どうやら転校生もカナも家への帰宅途中らしい
奴良組では特に何もなかったそうだ。
それは良かったな。
多分今頃あいつらは無事でよかったと心底安心しているんだろう。
目に浮かぶようだ。



「楽しかったか?リクオくんの家は」

「すっごくなんていうのかな…
雰囲気はあったよね、ゆらちゃん」

「うん。歴史あるお家なんやろね。
でもうち、奴良くんに失礼なことしてしもて…」

「別にそう落ち込むことでもなかろう。
リクオくんはちょっとやそっとの事では怒らん。優しい奴だ」

「そう、みたいやけど…
こう、うちの気持ち的に…」



そんなことを話していると…



「わっ、女の子が落ち込んでるよ〜、ひーろった!オレの店まで持って帰っちゃおーっと」

「え!?」



私たちの後ろから急に出てきた白スーツのホスト。
転校生が驚いてそのホストと距離を置く。
こいつから妖気を感じるから、人に化けた妖怪か?



「それともどっか行く?いーねそれも!!」



こいつは一人でなに盛りあがっているんだ?



「ボクと一緒に遊ぼうよ〜」

「…………………」



カナの冷めた視線。
中々に冷たい。

私は溜息をつき2人の手を掴む。



「行くぞ。二人とも」

「うん、いこうゆらちゃん」



しかし、私たちの行く手を阻むように私たちを取り囲むホストたち。



「下がって…家長さん、朧さん」

「ゆら…ちゃん…?」

「………………………」



さっきまでの笑顔とは違う、ニヤニヤと汚らしい笑みを浮かべるホスト。



「つれなくすんなよ仔猫ちゃん。アンタら…
三代目の知り合いだろ。夜は長いぜ。
骨になるまで…しゃぶらせてくれよォォ!」



髪をかきあげたその下にはネズミの妖怪の顔があった。



「…随分と臭い匂いがすると思えば…」



ネズミ妖怪ならば致し方ないか。
だが、まさかこんな形で妖怪が襲ってくるとは思わなかった。
時代が変わればやり方も変わるものなのか。









そして私たちはジリジリと道の外れの方へ下がってしまい、その先は行き止まり。
追い込まれてしまった。



「…………………」



私一人でこやつらを圧倒することは容易い。
だがここにいるのは一般人のカナと、修行の身とはいえ陰陽師の転校生。
どう行動するのが正しいか。



「おとなしくしてりゃあ…
痛い目見なくてすむぜぇー」

「………ねずみふぜいが。粋がるんちゃうわ」

「何?」



転校生に私とカナは奥に押し込まれると、その転校生は式神を出す。



「貪狼!」



転校生が出したのは大きな狼らしき式神だ。
その式神はネズミ共を容赦なく潰していく。



「カナ、お前は見んでいい」

「え、あ、朧ちゃん?」



私はネズミ共が潰されていくシーンがカナにはキツいだろうと思いその頭を抱き込む。
潰す度に出るグシャだのゴリだのという生々しい音もあまり聞かせたくはないから耳も塞げればいいが、流石にそこまでやるのは状況がわからなくなりすぎるのでそこまではしない。



「陰陽師だ!!それも…生半可ねぇぞぉ!!」



下っぱであろうやつがそんなことを言うが…いや、そいつ修行の身だが?



「いい子やね、貪狼」



貪狼と呼ばれる式神は己を撫でる主に擦り寄っており、対するネズミ共はどうしたものかと焦りを見せているようにも見える。

私が手を出すまでもないか。



「旧鼠さん、この女一体…」

「旧鼠か…仔猫を喰う大ねずみの妖怪…
人にバケてこんな路上に出るなんて…」

「くくく…こいつぁ
三代目はそうとうな好き者だな…」



三代目……
つまり、リクオか?

旧鼠は顔を元の人の物に戻すと転校生に近寄った。



「そんなぶっそうなものまはしまいなよ」



色仕掛けが通じるとでも思ったんだろうか。
旧鼠はなぜか転校生にそう甘い声で言うも、仮にも陰陽師で私たちの年齢で色仕掛けなどされても(特に女は)効果はあまりない。
案の定転校生はさわるなネズミ!と言いながらその手を払い除けた。



「…あ?」


明らかにさっきとは怒り方が異なっていた。
旧鼠は払われた手をハンカチで拭くと指を鳴らす。
するとどこから湧いたのかもしれぬ大量のネズミ共が私とカナを襲った。



「ッ!!?」

「キャアア!!いやっ…ネズミが!?」

「!?やめ…
っ、その娘たちに何するんや!!貪狼…!」

「やめとけ…ネズミはいくらでも増やせる。
おとなしく…式神をしまえ」



私たちの体を這い回る薄汚いネズミに嫌悪感を感じる。

脅される転校生はやむを得ず式神を消すと殴られそのまま気を失ったのだろう、倒れ込んで動かなくなった。



「ゆらちゃあん!?」

「お前ら、丁重にあつかえよ。
こいつらは大事なエサだからな…」



そして近寄ってきた部下だろう奴がカナの項も強く殴り意識を飛ばさせた。



「残るはお前だけだな」

「…貴様、奴良組の三代目に何をさせたいがために私らを利用するつもりだ?」

「あ?…お前…なぜ奴良組の三代目の話を…
ああ、お前混血か?」



旧鼠は無表情のままそう問うて来た。



「ああ。奴良組には属してはおらんがな」

「へぇ。だがてめぇにゃ関係ない事だ。
大人しく捕まってオレらのエサにされときゃいいんだよ」

「…頭に、乗るなよ?ネズミ共」



私は、妖気を解放する。
ピシピシと頬に少しと腕に蛇のような鱗が浮き上がり、元々切れ長の目である目じりに赤いペイントのようなものが現れ、瞳孔は縦に割れる。



「!!!」

「貴様らを殺すことなど、容易い」

「この女…」

「誰からこういうことをしろと言われた?
話を聞く限りじゃ、確か旧鼠とは頭の足りん奴らだったはずだが。このような作戦、貴様らの足りぬ頭で捻り出したやり方ではあるまい」

「言うわけねぇだろうがッ!!!」



まぁ、そうなるだろうな。
しかし言うわけがない、となれば有楽に誰かがいるのは明白だ。ならば仕方ない。



「はぁ…我慢するとしよう」



黒幕が誰だか知らんがカナたちをこのまま連れて行かせるのはいささか不安だ。
だから仕方ないが転校生たちと共に捕まるとしよう。



次の瞬間には腹を思い切り殴られ、私はその痛みにゆっくりと意識を落とした。





















…?手応えがねぇ。

…さっきの妖気ははったりだったんすかね?

知らねぇが、とりあえず運んどけ。
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