番外編(翠玉と海碧) | ナノ


  フェアリーガラ@





その日は朝から異常だった。



「さっ、寒っっっっ」



サバンナのような気候がずっと続くサバナクロー
だというのに、何故か異様な寒さに目が覚めた。



「なななななに!?」



寝るまでは変わらず暖かな気候だった。
故にいつも通り半袖短パンにタオルケットという夏のような装備しかしていない私は突然の寒さに耐えられず起きたのだ。



「むむむ無理寒っ」



何がどうなってるの?
私の部屋だけこうなのか、寮全体がそうなのかは分からないが、とりあえずレオナさんのところに行って話をしに行こう。

私は寝る時かけているタオルケットを被って、レオナさんの部屋へと急いだ。









「レオナさん入りますよ〜!」



バンッとバタバタ駆け込めば中ではベッドで丸まるレオナさんとラギー先輩。
多分ラギー先輩も耐えられなくてきたんだろう
事情も聞きに来ながら。



「う゛ぁぁ炬ぐん……」

「ラギー先輩鼻水!!」

「寒ィ………」

「とりあえず私もそこに混ぜて……」



ラギー先輩の為にとりあえず箱ティッシュを持って行けば、レオナさんとラギー先輩は私の為に間を開けてくれた。
無言で開けたその間に私も無言で入り込む。
そうすれば2人はすぐにくっついてきて、できる限り暖を取れるよう隙間を埋めてくっついてきた。
その後モゾモゾとレオナは私を抱き込んで、ラギー先輩はそんな私たちにピッタリとくっつく。



「ううう、レオナさんコレなんなんですか」

「知らねぇよ…寒くて寝れやしねぇ…」

「いつも暖かい気温だからいきなりこんなんなると困る……」



3人でなぜこうなったのかと話し合うも、やはり2人とも何が原因なのかは全く分からないらしい。
レオナさんは学園長に文句を言いに行こうと思うのだが寒くて動きたくないんだそうだ。
まぁネコ科だからね、特にこの2人。



「ダメだ。ちょっと一旦部屋戻ります!」

「やめろ戻るな寒いだろうが」

「強い強い強い!抱きしめる力が強い!」



今ミシッて骨言わなかった!?



「部屋に戻れば向こうの世界から持ってきたマフラーとかあるんで持ってきますから!」

「5秒で持ってこい」

「レオナさん、炬くんの部屋に行くまでにまず5秒以上かかるッスとどう頑張っても」

「6秒だ」

「何も変わってないッスレオナさん」



と、その時レオナさんのスマホが鳴った。
なんだ?とみんなで覗き込めば連絡が来ていたのは寮長のグループの連絡網。
今すぐ寮長会議をする為、大至急各寮の寮長は学園長室へ来いというものだった。



「あ゛?寮長会議だァ?」

「レオナさん行ってくださいッス!そして直ぐにこの異常気象を訴えてきてくださいッス!」

「…………………………グルルルル」

「「なんで唸る」」



そんなに動きたくないのか………



「今なら炬くん付き!」

「おまけですか私は!?」

「チッ。このまま寒みいままでも困るからなァ。
仕方ねぇ…行くぞ炬」

「ホントに私も行くんですか」

「炬くん行く前にオレにマフラー貸して」

「私は便利道具かなにかか」



結局、私はレオナさんに抱っこされ、行く前にちゃんとマフラーをラギー先輩に貸し出してサバナクローを後にした。
私っていい後輩だよ、本当。




















▽▲▽▲▽




















「うぁー、寒いいっ
……………って今度はあっつ!!!!」

「…鏡舎がオーブンみてぇな熱さじゃねぇか?」

「何なのこれ!!!」

「もしかして学園全体が空調ごちゃごちゃになってやがんのか」

「なんで!?」

「俺が知るか」



途中でアズール先輩にも会い、一緒に向かう。
私がいることにツッ込むことはしないらしい。

そして学園長室について中に入ってみれば………



ヒュオオオオ………



「寒ィッ!!なんだこの部屋は……」

「サバナクローより寒っ!
体ごちゃごちゃなる…体調壊すよコレ」

「ああ、助かりました。
オクタヴィネルは朝から暑くて暑くて。
干あがる寸前でしたよ」

「タコの干物は美味しそう」

「炬さんって僕のこと嫌いなんですか?」

「いいぜ、手頃なタコがここにいるから俺のユニーク魔法で作ってやろうか?」

「レオナ・キングスカラー、僕に近づかないで下さい」



こんなにも温度調整がめちゃくちゃであるためか、みんな短気になっている気がする。
でもごめんなさい、今のは私がいらないこと言いました。



「イグニハイドはサウナ状態ですぞ!
パソコンがダメになったらどうしてくれるんだ!
至急改善を要求する!」



あ、イデア先輩またタブレットだ。

異常事態であることはみんなわかっていたからか、恐らく過去最速で招集したことであろう寮長たち。
今回はマレウス様もいる。



「みなさん、お静かに!
……お気付きのように、今、学園中の施設の温度調整ができなくなっています。原因は、妖精たちに魔力を供給していた魔法石の消失です」

「さっき学園長が『なくなってる!!』って騒いでいたやつか」

「学園の施設内で四季を通して快適に過ごせるのは火の妖精をはじめ、水の妖精や風の妖精……
さまざまな妖精たちの魔法のおかげです」



そんなこと前も言ってたな〜、と私はウンウンと頷きながら学園長の言葉に耳を傾けた。





「あの魔法石がなくては、妖精たちに魔力を供給できず、学園内の空調を制御できません。
だから鏡の間で、大切に大切に保管していたのに……誰かが盗んだに違いありません!
なんてばちあたりな!!」



うわ、そんなことになってたの。
そしてこの部屋がサバナクローよりも寒いからか、レオナさんがえらいくっついてくる。

サバンナなんかこんな寒くならないもんね。
寒さには多分弱いんだろう。



「盗まれたのは『妖精が好む質の魔力を供給する』魔法石……ということですよね。
ならば、まず疑うべきは『妖精』では?
そういえば、私たちの中にも妖精がいましたね。
非常に大きなサイズの」



相変わらずトゲのある言葉。
…アズール先輩それ、モロにマレウス様のことだよね?



「……随分と含みのある物言いだなアーシェングロット。茨の谷の次期当主たる僕が、こそ泥の真似事をするとでも?」

「いえ、まさか!お気に障ったなら失礼」



今の言い方をしてマレウス様の気に障らないと思ってたんなら頭おかしいよアズール先輩。
トゲのある言い方したのは絶対わざとだろうに。



「つか、マレウス氏は魔法石から供給されるショボい魔力なんてプラスないでしょ。MPゲージ自動回復付きのチートキャラみたいなもんなんだからさ」

「そうそう。ここにいる誰もマレウスが犯人だなんて思ってないよ。ただ、もしなにか知ってるんだったら教えてほしいんだ。妖精に関して思いつくこととか、なにかないか?」



一気にギスギスとしだした空気を和やかにするカリム先輩は、正直すごいと思う。
底意地の悪い人たちに圧倒的善者。
相変わらずただのいい人……!!



「…そういえば、昨夜散歩をしている時、このあたりではあまり見かけない妖精の姿を見た。
木の葉に身を包んだ、手のひらほどの大きさの妖精だ。2人がかりで、虹色の石を重そうに運んでいたが……」

「虹色の石!?それは、なくなった魔法石に違いありません!!ドラコニアくん。その妖精たちはどこに向かっていましたか!?」

「植物園のほうだったかな」

「みなさん、至急植物園に行きましょう!」



なんだかんだ、すぐに情報が出てきて私たちは総出で植物園へと向かった。



















………レオナさん、もう離れてもいいんじゃ?

あァ

イチャイチャしに来たんなら帰りなさいよアンタ。どうせ炬はほぼ強制的に連れられて来たんでしょうね

良くお分かりで

寒ィんだよこっちは

流石は猫ね

あ゛?


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