人生もゲームもバグだらけ | ナノ


▽ 22



私は、いつかのように我が家の門の前で文字通り白目を向いていた。




「なんつー顔してんのお前」

「友達遊びに来てやったんだから喜べよなー!」




何故か。
本当に何故か、加藤と馬場がうちん家に来た。




「いや、ちょ、ま、…………は?

「「全力で喧嘩腰だな」」




いやいやいやいや!!!!
こいつら何しに来たの!?




「しっかし、五郎の言う通り凄い屋敷だなぁ。
指定文化財になっててもおかしくなくないか?これ」

「歴史感じるよな!」

「ってことで家にお邪魔したいなーって思ってんだけど」

「邪魔だから無理」

「そう言うなよ銀華!友達が家に遊びに来ることは普通だろ。ってことでお邪魔したい!」

「だから邪魔すんなら帰れゴミクズ共」

「ひでぇ言われようなんだけど」




しかし、二人は一向に帰ろうとする意思を感じない。
それに大きな溜息をつき、ちょっと待ってろといえば彼らはいくらでも待つ!!と元気な返答をくれた。

銀華は急いで広間に走り込み、屋敷の妖怪たちを呼び付けた。
その騒ぎを聞き付けたおじいちゃんやお父さん、リクオまで広間にいた。




「お嬢!どーしたんすかー?」

「いいか、お前ら。今から、死ぬ気で隠れろ」

「は?」

「え?なんでですかい?」

「私の知り合いが、遊びにきやがってくれたから」




いや言い方…とリクオはなんとも言えない顔をした。




「お嬢までわしらに隠れろってんですかい!?」

「銀華様のご友人もまさか陰陽師!?」

「いや普通の人だけど妖怪の事バレると後々面倒だ。
とりあえずお前らいいから隠れろ。
変装出来るやつは別にいて構わないから」

「ええ━━━!」

「いいじゃないっすかー!普通の人間なら!」

「うっせーな黙って言うこと聞けよ。
調子乗って彼奴らの前に出てきたら…いいか?
真っ先にテメェらからぶち殺す」




そう言うと、人型になれない奴らは全力で隠れに行った
それを見て私は小さくため息をつく。
人型になれる、もしくは変装出来るやつらはモソモソと姿を変えたり変装した。




「にしても、お前さんの友人は初めて見るなぁ」

「なにウキウキしてんの奴良三代」

「孫娘の友人となれば気になるからのう、仕方ない」

「うんうん。じーちゃんの言う通り。
姉ちゃんの友達って、なんか気になるじゃん」




側近たちは皆変装できるため、その場に残っていた。
私は腹を括り、門のところに戻った。



「おまたせ」

「お、もういいの?」

「ドタバタ聞こえたけど大丈夫?」

「馬のくせして耳いいのな」




そして、私は二人を招き入れた。




「「おじゃましまーす!」」

「本当邪魔なんでおかえりくださーい」

「いや帰ったら来た意味だろ」

「五郎の言う通りだね」




いつもの様に言い合いをして、部屋に通す。
すると待ち構えていたおじいちゃんたちに二人は目を点にさせた。




「あー、ごめん。私の友達家に来たの初めてでさ。
家族と、えーっと、特に仲のいいお手伝いさんたちが挨拶したいって」

「……奴良……」

「銀華……」

「え、なに」




馬が私の左肩に、加藤が私の右肩に手を置き、ぎゅっと掴んできた。




「「そんなに、友達いなかったんだな」」

「よーし!
お前らいい度胸だゴラァァァァァァ!!!!」

「「いででででででででで!!!!!!」」




私は肩に置かれた2人の手を掴み本来曲がってはいけない方に思い切り力をかけていく。




「こらこら、銀華友達にそんなことすんなって」

「あと紹介してよ!」

「……」




父と弟に急かされ嫌々ながら二人の手を離し、座るよう催促し私も腰を下ろす。




「んじゃまず、うちの家族から紹介するね。
見るからにジジイな頭がチョココロネなのがうちのおじいちゃん」

「もっとマシな紹介の仕方ないんかお前は!!!」




まさかそんな紹介されるとは思ってなかったぬらりひょんは思わず銀華に怒ってしまった。
しかしそれを気にする銀華ではない。
そして、その友人もまた。




「すごい頭伸びてるのな、銀華のおじいちゃん。
若い頃後頭部襲われまくったんだな、きっと」

「いやそれどんな状況??
狙う場所後頭部オンリーの喧嘩ってある??」

「今からでも馬に対して後頭部を集中的に狙ったら銀華のおじいさんみたくなるかな。
よし後で実験しようぜ!」

「ふざけんな!!!
なんで俺でやるんだよ自分でやれよ!!
仮にマジでなったらどう責任取る気!?」

「………………お前なら大丈夫だ!」

「どこから来たその自信!!?」




騒ぐ二人に銀華は声をかけ、話を無理やり終わらせ紹介を続ける。




「おじいちゃんの隣の無駄に色気ぶちまいてるのがうちのお父さん」

「「……若い……」」

「お、そうかい?嬉しいねぇ。
ま、うちの娘が世話になってるようで、これからも仲良くしてやってくれ」

「「あ、こちらこそ」」

「なんでワシの時より普通なんじゃ銀華」



はて、普通とは。




「ああ、ひとつ言っとくけどお父さん若く見えるけど超高齢だから」

「………いやいや、有り得ねぇって。な?馬」

「うん。これは完全に若者というか、若い人でしょ」

「ウルトラスーパー若作り野郎なんだ」

「銀華やめてくれ。誤解が生まれる」




いや本当。こう見えて400歳超えてるんですから。

そして紹介に戻った。




「こっちは弟のリクオ」

「初めまして!よろしくお願いします!」

「……可愛いな、弟!
銀華に比べて目に生気が満ち溢れてるぜ!」

「銀華さんの目はいざという時キラめくって私は何度お前に言えばいいのかな」

「確かに奴良っていつも死んだ魚の目してるもんなぁ。生きた目をしてることってあんまない」

「馬に言われたかねぇわ」




めんどくせぇからさっさと行こう。




「こちら、お手伝いさん衆。
こっちから、氷麗、倉田、河童、首無、紀乃、黒」




姉ちゃんンンンンンンン!!?
ちょいちょい普通に言っちゃってるゥゥゥゥ!!?

リクオは信じられないものを見るように銀華を見た。
いや、側近勢もいいの!?みたいな顔をしている。




「カッパ?」

「河童」

「スゲー名前だな。そんな苗字あるんだ。
俺知らなかったわ!!」

「俺も……なんか面白いね、病院とかで『河童さーん』て呼ばれるんでしょ?」

「そうだね」

「首無ってのも苗字か?」

「いやそれはあだ名。
いつもマフラーしてるから首無いんだよ」

「「なるほど」」




側近勢とリクオは、今日に限っては銀華の達者な口に感心してしまった。




「んじゃ、今度はこいつらをみんなに紹介するね」




ちょっと体の向きを変えておじいちゃんたちに向き直り、加藤たちを見た。




「まずこっちのスポーツマン感溢れる方から。
こいつとはぶっちゃけ小学校の時からずっとクラスが同じになるという呪いにかけられていて私はいつ解けるのかと待ち続けている。こちら、田中ゴン太くん」

「加藤五郎!!!!誰だそれ!!?」




しっかり挨拶をしようとしただろう加藤は勢いよく銀華に振り返る。




「山本くんは小学校の時からバスケやってて文字通りスポーツマンなんだよ」

「加藤!!ねぇ俺加藤!!
10年以上の付き合いだってお前も今言ったよね!?
それについこの間も俺言った!
いつになったら俺の名前覚える!?」

「落ち着けよ佐藤」



ぎゃーわーと騒ぐ加藤に銀華は淡々とそんなことを言う。


「惜しい!!惜しいけど違うから!!」

「うるせぇなお前は。
名前間違えたくらいでガタガタうるせぇよ。
だからお前はいつまで経っても一郎になれないんだよ」

「五郎だから!!俺の名前は五郎なのね!?
一郎になる必要ないから!!」




二人のやり取りに初めはポカンとしていた奴良組勢。
けれど、なんだか面白くなってしまいクスクスと笑い出す始末。




「で、こっちは高校で知り合った馬面馬雄くん」

「奴良お前マジで俺の事嫌い?なに?
俺の名前、馬場優馬だから」

「ご覧の通り、見事なまでの、馬面だ」

「人の話聞けよ!もうヤダ俺お前嫌い!!!!」

「嬉しいわ」

「酷い!!!!
そこはもうちょっと悲しんでよ……!!」

「まぁ銀華のことは今に始まったことじゃねーだろ?だから元気出せよヅラウマ」

「業界用語みたいに言うのやめてくんね!?!?」




だから俺お前らのこと嫌いなんだよー!と頭を抱えた馬場。




「嫌いなんだってよ、賀東」

「濁点要らねぇから。加藤な。
てかね、嫌いだってよ、銀華どうする?」

「とりあえず山に捨ててくればいいんじゃね?
限りなく帰宅困難な場所に置いて」

「それいいな!楽しそうだ!」

「良くねーよ!!!
なにシレッと目の前で俺の遭難計画立ててんの!?
バカなの!?バカなんだな!?」

「ねぇ馬、バカってバカと初めに言った人がバカなんだってよ。知ってた?」

「得意げな顔して言ってんじゃねェェエエ!!!!」




銀華の胸ぐら掴んで前後に思い切り揺さぶる馬場。
その脇で加藤は大爆笑。




「ヒィー!はー、しんど。マジおもしれぇ」

「笑ってんじゃねーよ五郎!!」

「楽しいわぁ、マジで」

「こっちは疲れるだけだっつーの!!」

「そんなカリカリすんなよー!
そんなんじゃお前将来禿げるぜ!」

「禿げたら9割9部お前らのせいだよ!!!」

「馬面でハゲは辛いわ」

「奴良お前少し黙ってろよマジで!!!」




奴良組勢は、どうやら笑いを抑えるのが限界だったらしく普通にみんな声を出して笑っていた。




「きっと馬は禿げたらバーコードなるぜ。なっ!銀華」

「ハゲ散らかしてんなぁ、馬」

「まだ禿げてねーわ!!
てかハゲ散らかすってなに!?」

「そのまんまだろ!散らかったハゲ!」

「バカ言え!俺は喩え禿げたとしてもちゃんと髪型くらいは整える!散らかったハゲじゃなくて整備されたハゲだ!!!」




奴良組勢の誰かが、馬の発言に盛大に吹き出した音がした。




「じゃあハゲと認めたところで、今からお前『ハゲ馬』な」

「なんだそのハゲタカみたいなあだ名!!」

「いいなそのあだ名!しっくりくる」

「こねぇよッッ!!!
ハゲでもねぇし馬でもないわ!!!」

「どうどう」

「誰が馬じゃうおらァァァァァァ!!!!!」

「ギャ━━━━━━━━━━━━━!!!!」




加藤が馬に投げ飛ばされた。
ドターンッと廊下に投げ出され、けれど流石の運動神経
ちゃんと受身はとってたらしい。




「何すんだよハゲ馬!
お前柔道60キロ級のU-18だろうが!
なにド素人に技かけてんだこら!」

「やかましいわ!!!」

「え、馬ってそんな強いの??」




キョトン、とした銀華の声が響いた。




「一年の時から俺とお前と同じクラスでいつも一緒にいたよね!?全校生徒前に表彰されてたよね!?
なんで知らないの!?」

「いやだって私別にお前に興味無いし」

「それ面と向かって言う!?言っちゃう!?」

「因みに加藤の今日のパンツ赤色だったぞ」

「んな事誰も聞いてねーよ!!
つかなんでそれ知ってんだよ怖いわ!!」

「投げ飛ばされた時見えたんだよチラっと。
多分あれトランクス」

「おお、正解。俺のパンツ今日赤のトランクス。
ケツの方可愛い猫ちゃん描いてあるんだぜ。見る?」

「お前は人様の家の中でパンツ見せようとすんなァァァァァァ!!!!」

「イッダァ!!!」




馬の全力の蹴りが加藤のケツに当たった。




「はははははっ
は、ちょ、お前ら、待った、ほんと、待って」

「お父さんどうしたの。ていうかみんなどうした。
ほとんど涙目じゃん。なんか酸欠起こしてる奴いるし」

「お前ら、面白すぎ、ヤバい、はぁ」




肩で息をするお父さんはとりあえずなんか辛そうだ。




「お前さんらが仲良いのはよくわかったぜ。
とりあえず、2人とも銀華の事よろしく頼むな」

「いってて…とりあえず、こちらこそよろしくっす!」

「…ええまぁ、はい。こちらこそよろしくお願いします」




こうして、私の友人二人について奴良組にバレたのだった。
















てか庭が広い!!バドとか出来そう!

出来るけど。

だよな!?スゲー!銀華の家スゲー!

いや本当、マジで奴良の家 歴史感じるよ。

崩れたらごめんね。

え、嘘でしょ?

馬のいる所だけ部分的に崩れるかも。

いやそれあからさまな計画だよな。


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