人生もゲームもバグだらけ | ナノ


▽ 21


翌日、リクオはお布団とお友達になっていた。




「大丈夫なの、リクオ」

「うーん…」

「つーか私もと友達になりたい。お布団と」

「いいから学校行ってよ姉ちゃん……」




くぅ……
今程リクオと交換したいと思ったことはない!
でもまぁ顔がだいぶ赤くなっているところ、結構きついんだろうな。




「オゥ、カラス!!」

「鴆様?」

「リクオの奴ァどこだいっ、一言話があんだ。
出入りがあったそうじゃねーか!!
なんでオレを呼ばねー…ブフォッ!!」

「わぁ!?」







「うーわ、うるさいの来たわ」




ていうか今、鴆思っきし鴉天狗に向けて吐血したよな。




「ちくしょう約束したのによぉ…
若に文句言って…ブフォッ」

「わぁ━━誰か止めろ━━━━━!!
若が血まみれになるぞ━!!」









「朝からなぁにやってんですかね、鴆様」

「残念だけど私にわかるのは現在進行形であいつが一人で吐血パーティをしてるってことだけだよ、毛倡妓」




熱を出したリクオの看病をする毛倡妓にそう言えば、毛倡妓は笑う。
枕元に置いてある化猫組からのお礼品と、一言書いた手紙を読んで私は一息つく。




「そろそろ時間かぁ…
んじゃ毛倡妓、リクオことよろしく」

「はい、任せてくださいな」

「じゃ、学校行ってくるわー」

「行ってらっしゃい姉ちゃん」

「行ってらっしゃいませ〜」

















▽▲▽▲▽






















「たっだいま〜、リクオ元気か〜い?
………ってでっか、なにその氷」

「ね、姉ちゃん………おかえり………
これ、どうにかしてくれると、助かる…」




リクオがを心配して家に帰ってきてすぐ部屋に向かうと、リクオの頭の上にはどう考えてもバカデカすぎる氷がドーンと乗っていた。




「氷山からけずってきたのかよこれ」

「いや…つららが……」

「……雪女、あいつリクオを治したいのか治したくないのかどっちだ」




とりあえず頭からそれを退けてやる。
と、その時障子がガラガラと開くとそこから顔を出したのはカナちゃんだった。




「やっほ」

「え、カ…カナちゃん!?」

「おっ?カナちゃんどうしたの?」

「家長くんばかりじゃないぞ!」

「わっ!!清継くん!?」

「おっとぉ?これはおっとぉ?」




ゾロゾロと部屋に入ってきたリクオのお仲間たち。
どうやらへっぽこ院ちゃんはいないらしい。




「鳥居さんと巻さんも…てゆーか清十字団…」



なんでこいつらがこんな所に??と驚きを隠せずに居ると、どうやらここに案内したのは毛倡妓のようで毛倡妓の引きつった笑みがよく分かった。
ちらっとさっき目が合った時の申し訳なさそうな様子がなんかすごい伝わって来たのだが…っていうかね?




「知らん人また増えとる」




それはまぁ、まぁ百歩譲っていいんだけどさ、さらっとここが妖怪屋敷か〜とか言うのね。
まぁ正解なんすけど。
すると、その新たなメンバーの女の子二人と目が合った。




「「……………………」」

「……………………」

「「誰この死んだ目した銀髪美女っ!!!!」」

「褒めてんのか?バカにしてんのか?
ん?どっちだ??」




喧嘩売ってんなら買うぞ?コラ。




「……どーも、リクオの姉の銀華です」

「あ、姉ぇ!?」

「奴良あんたこんな美人な姉いたの!?」

「あ、あはは…美人だけど、変人だよ…」

「リクオ屋敷中引きずり回してやろうか?」

「ゴメンナサイ」




素直に謝った弟に満足し、頷く。
しかし、なんだろう。
なんでか知らないがなんかここにいたらすごくめんどくさくなる気がする。銀華センサーが発動しているぞ。

私は自分の勘に従い、出ていこうとするとリクオに呼ばれた。




「ね、姉ちゃん!ちょ、まっ」

「リクオ、お友達がお見舞い来てくれてよかったな。
しっかりお礼言うんだぞ」
※訳:頼むから私を巻き込むな、一人で頑張れ

「い、いやでもほら姉ちゃんいた方が僕安心できるし」
※訳:お願いここに一人にするのは勘弁してください

「いやいや、友達との大事な時間を姉が邪魔するなんて野暮なことできないって。それに私やることあるからさ。お大事にね」
※訳:知らんがな。安やらに逝け弟よ、さらばだ




そして私は弟をその場に置き去りにし部屋をあとに。
途中雪女とすれ違い、彼らが来ているのを伝えようかと思ったが、言わない方が面白いかと思って言うのをやめて私は自室へと戻った。




「どーれ、今日は少女漫画でも読むとしようかな」




棚から数冊ごっそりと抜いて、以前1時間並んで買ってきた駅前のプリンを食べようとキッチンに向かい、冷蔵庫をあけた。




「…………あ、あれ…………?」




私の愛しのプリンちゃんが、見当たらないぞ?
いやいや、ちゃんと紙に『銀華のプリン 勝手に食べた奴は撲殺の刑に処す その者に呪いあれ』って書いてたから誰も食べるわけないんだけどな。


ガッサゴッソと冷蔵庫にピーピー言われながらの中を漁りまくるも見当たらない。




「あれ、銀華様何やってるんですかぁ?」

「あぁ、毛倡妓。
毛倡妓、冷蔵庫に入れてた私のプリン知らない?」

「え?…………もしかしてそれ………
これくらいの大きさで上にクリーム乗った感じの?」

「あ、そうそう。それ」




毛倡妓がサッと目を逸らした。
それに私は不信感を抱く。
しかし毛倡妓のことだ、あそこまで書かれていたやつをわざわざ食べるわけがない。
となると犯人を知っている、といったところか。

私は毛倡妓の肩を掴む。




「毛倡妓………ゲロっと吐いちまいな。
私は毛倡妓を咎めないから」

「え、えっとぉ…」

「毛倡妓」

「…………お、お昼頃、2代目が、そんな感じの、食べてたような……?」




奴良 鯉伴ンンンンンンン!!!!!!




「奴良 鯉伴許すまじ…!」

「あっ、銀華様今は総会中でっ」

「知るかァァァァァァァァ!!!!」




そこからの私の動きは早かった。
毛倡妓の制止の声を無視し、総会の行われている大広間に乗り込もうとする。




「本家の中に裏切り者がおるっちゅうのは考えたくないんじゃがのう」

「でもそうであることはほぼ確定だろ…
俺だって考えたくねぇが仕方ねぇさ。親父」

「うーむ」







「奴良 鯉伴んんんんんんんんんんんん!!!!」








「あ?」

「なんじゃ?」

「…今のは…銀華様の声、ですな?」




ザワザワとしていた総会の場がふと静かになった。
と思いきや上座の方の脇にある襖がバァァンッと壊す勢いで開くと、そこに居たのは相変わらずクルクルと回る白銀の髪を揺らす、銀華。




「……………ど、どうしたんじゃ?銀華」

「おいこらそこの奴良 鯉伴」

「お、俺?なんだ?てかなんでフルネーム」

「あんた、昼に私のプリン、食ったか」

「え?…あ、もしかしてあれか?
上にクリーム乗ってた冷蔵庫に入ってたあれ」

「それ」

「おう、食った」




あっけらかんと答える父。
その瞬間、プッツン、と私の中で何かが切れた。




「食った、だァ?」

「え゛」

「あのプリンに貼ってた紙ィ、見なかったのかァ?」

「え、貼ってあったか?んなもん」



今度はキョトンとした顔でそんなことをシレッと言いやがった。




「貼ってあった!!!間違いなく!
『銀華のプリン 勝手に食べた奴は撲殺の刑に処す その者に呪いあれ』ってなぁ!!」




一言一句バッチリ覚えているとも!!!




「撲殺!?しかも呪いって……」

「刑、実行だこのクソ野郎」




私は持ってきていた木刀を引き抜き父の目の前に出ると思い切りそれを振り下ろした。
が、父の姿はゆらりと揺れて消える。
総会中であるのは百も承知だが私はそれどころじゃない
みんなは唖然、と言った様子で私を見ている。

力使ったってことは、やる気か、お父さん。




「はっはっは!私とやろうってかい、父さん?」




いい度胸だァァァァァァ!!!!




「上等じゃボゲェェェェェ!!!!!」




明鏡止水を使って姿を消したお父さんを探すのはあいにく今の私では難しい。
けどやはり前世で生まれてから死ぬまで戦いに戦いまくり、戦闘に関しては普通の人に比べ頭一つどころか何個も飛び抜けていた私の野生の勘というのは侮れない。




「うおらァァァァァァ!!!!」




勘である方向に思い切り木刀を突き刺してみる。




「……………………………………(冷や汗)」




ゆらりと姿を現したお父さん。
その顔は笑顔だけれど、冷や汗ダラダラだ。
ちなみに、私の木刀は身をかがめながら去ろうとしていただろうお父さんの顔面スレスレに刺さってる。

おじいちゃんたちは私が父を見つけたことに驚いていたようだった。




「よぉ…随分と短いお別れだったなぁ」

「え、え、な、なんで場所分かった…
って、いや、ちょ、ま、待てって。
その振り上げてる木刀下ろそうぜ?な?
…………う、嘘だろ?
銀華お父さんにそんな酷いこと、しないよな…?」

「400年生きてるくせになんも知らねぇ歩く卑猥物に教えてやるよ……恨みってのはねぇ、食いもんの恨みが一番怖いんじゃボケェェェェェェエエ!!!」

「ギャアァァァァァ!!待て待て待てストップ!!!
詫びにまた買ってくるってのでどうだ!!?」




振り下ろされた木刀が当たる寸前でピタリと止まる。




「………1時間、並んだんだぞ?」

「お、おう」




学校の帰りに最後尾からずーっと、ずーっと待ってようやく手に入れたプリン。
それを良くもまぁこいつは………



「力使わないで、きっちり1時間以上、並べよ?」

「………………ハイ」

「あそこのスイーツとそこ近所の駄菓子屋の駄菓子全部買ってくる?もちろん金平糖も」

「………………い、1度には無理だと思うんで、何回かに分けてでいいなら」

「………………今回だけだ。
次勝手に私の食ったら、マジ、殺す」

「スミマセンデシタ」




目が、本気マジでした(鯉伴談)。




「銀華お前…畏、断てるようになっとるんか?」

「は?畏を断つ?なにそれ美味しいの?」

「いや食いもんじゃねぇよ。
食い意地はってんのう相変わず……
ってこたぁまぐれ、ってやつかのう?」




銀華は、事実上鯉伴の畏れを絶った。
それを、ぬらりひょんはもちろん幹部たちも目撃してしまった。




「……銀華ちゃん、とりあえず柱に突き刺した木刀しまおうぜ」

「……チッ」

「(舌打ち……)ってか木刀って柱に刺さるもんだっけか……?」

「刺さってんだから刺さるんだよ」




あれ???と首を傾げた鯉伴に周りの者たちはその疑問に激しく同意したかった。
普通は、木刀なんぞ柱に刺さるものでは無い。




「とりあえず、お父さん買ってこいよマジで」

「……了解シマシタ」

「嘘だったらその股にぶら下がってる汚ぇバベルの塔ぶっ潰すかんな」

「……お下品だぞ、銀華……
ていうかその言い回しはなんだよ」




にっこりと笑顔で「うるせぇな今すぐ去勢すっか?任せろ綺麗に斬ってやるよ」と言ったらお父さんが目にも止まらぬ早さで土下座した。




「お父さん」

「ハイ」

「次は、ないからな」

「ハイ」

「じゃ、どうぞ会議続けてください」




総会に突如吹き荒れた嵐は、なんとか過ぎ去ったのであった。





















……娘が怖すぎんだが、アレ。

二代目の名前が泣くぞ、鯉伴。

……だって去勢ってあれ本気の目だった。

手前のガキに土下座する親たァ情けねぇ。

親父マジで一度あいつの怒り買ってみろよ、死ぬぜ。

アホか。

葬儀の準備は任しとけ。

テメェぶっとばすぞ。


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