人生もゲームもバグだらけ | ナノ


▽ 18


私はゆっくりと、白目を向いた。
なぜなら…




「「「「お邪魔しまーす!!」」」」




何を隠そう、清十字怪奇探偵団なる謎の団体が我が家に遊びに来たからだ。

エ、ナニコレ、シラナイ。
遊びに来るなんて知らないぞ。カエッテ。




「姉ちゃん…ごめん」

「マジで覚えとけよこのメガネぇ…」




そして何故かその団体の輪に参加させられた私。



こうなる数分前。
妖怪屋敷である我が家から不自然にも妖怪が見当たらなくなり、それを不思議に思い屋敷の中を歩いていた。
我が家は言うまでもなく一に妖怪二に妖怪、三に妖怪四に妖怪。
とりあえず妖怪まみれ。
そんな我が家から忽然と妖怪が消えるなんぞ世界の滅亡か(出入りでもないのに)。


不思議に思いながらも暇だし散歩でも行こうと玄関に向かうと丁度家に来た清継達とばったり
家に来たことに驚いている私をよそに清継は「やぁ久しぶりだ奴良くん姉!」と馴れ馴れしく言って来て家に入ってきた。
私はもう何が何だかわからず近くにいた弟を見たら、ジェスチャーで平謝りしていた。

口元を引くつかせればそのまま背を押されるように私も家に押し入れられ、現在に至る。
マジでなにこれ、つーかここ私の家。




「いい雰囲気。それじゃ始めよう」

「いや待てワカメ。私ここにいる意味何?
てかこの子誰?お初にお目にかかるのだけど」




いやいや、ツッコミどころ満載なんですけど?
さも当然のように始めようとする清継に待ったをかける。
前に旧校舎に行った時の面々はまだわかるが、あのメンツに何やらもう一人カナちゃんではない新しい女の子が追加されているではないか。
どちら様よ?




「誰がワカメか!
僕の名は清継だと前に名乗った!
あと、彼女は我が清十字怪奇探偵団のエースで現役陰陽師の花開院ゆらくんだ!
修行の為にこっちに来てるらしい!
現役陰陽師なんて素晴らしいだろう!?」

「あっ、あの、すみません挨拶遅れました。
この間転校してきた花開院ゆらです。よしなに」




一人、私は深呼吸する。


陰陽師ィィィィ!!!!
それうちに呼んじゃいけないやつNo.1!!!
なにやってんのリクオォォォ!!!!




「ど、どうも。
そこにいるリクオの姉の奴良 銀華です…。
浮世絵高校に通ってる高2です、よろしく」

「こ、高校生やったんですか!?
す、すみません先輩やとは思ってたんですけどまさか高校生とは…」




驚くその子は慌てて私に謝ってきた。




「うんうん、わかるよ。普通そう思うよね。
中1の輪に入れられる高2っておかしいよね。
なんとか言えやおいワカメ」

「だから清継だ!!!」




知らねーよクソが。




「とりあえず私はどっか行くわ」

「待ちたまえ!」

「…なんすか」




顔を顰めてワカメを見てやればワカメ以外のメンバーはアッ…と私の心中を悟ったらしい。




「君もこの清十字怪奇探偵団のメンバーだ、欠席は許さないよ!」




いや誰がメンバーだよオイ。
はっきり言って私は気の長い方ではない上に喧嘩っ早いのは前世からのお墨付き。
故に自分で言うのはなんだがあまり私に突っかかると問答無用でぶっ飛ばしますよコラ。




「おいコラ中坊…さっきからよぉ、先輩に対する態度がなってないんじゃねぇの…?」

「おおお姉ちゃんそそう言えばさっき神棚に何かお供え物しに行くって言ってなかった!?」

「そーなの?」




軽く浮き上がってる血管にリクオは気づき慌ててフォローに走ったが咄嗟に出たフォローが神棚にお供え物とか酷いな、とリクオ自身も心の中で自分にツッコミを入れる。
しかし相変わらず姉はマイペースで、酷いフォローであったにせよフォローしたのに普通にそーなの?と聞いてくるとは何事か。




「何言ってんのほら、お供え物備えに行って!
ここはいいからさ!」

「その前に私厠にお供え物していい?」

「ちょっと言い方ァ!!
普通にトイレ行きたいって言えばいいじゃん!
てかそれは勝手に供えてきなよ!!!」

「わかった」




弟の全力のツッコミを貰い私は部屋を後にしてまずトイレに行った。

















▽▲▽▲▽





















少し時間が経ち台所へ行く際にさっきの部屋の前を通ることとなったのだが、何故か中から彼らの声がしない。




「?」




……友人の家に来て、友達あれだけいて。
皆無言になるってことあるか?
そう思い、ソッと襖を開けるとそこには誰もいなかった。




「……は?」




何故、いない?

銀華はもぬけの殻の部屋に唖然とした。
この家は紛れもなく妖怪屋敷で、更に今来てるのが修行の身と言えど妖怪からすれば天敵の陰陽師。
これぞ俗に言う混ぜるな危険以外の何物でもないと言うのに、うちの弟は一体何をしている?
すると天井裏にいたらしい小妖怪たちがワラワラと出てきた。




「銀華様ぁ〜!」

「た、助けてくだせぇ、あの陰陽師の小娘ら本家を勝手に歩き回ってるんですー!」




そして告げられたのは軽く耳を疑うことだった。




「は…?」




勝手に、歩き回ってるだァ?

思わず聞き返したが彼らはそれどころではないらしく、涙を浮かべていたり焦りから来る汗を流しながら私に訴えてきた。




「わしら滅されちまう!」

「あの小娘、妖気感じるとか言って若に許可も貰ってないのに好き勝手練り歩いてやがるんですよ!?」

「リクオ様の静止も聞かないし!!」




小妖怪たちが助けてくれと泣きついてくる。
この子たちのような力の弱い妖怪にとって陰陽師はもちろん恐ろしい存在だ。
彼らから言われた言葉に堪忍の尾が切れた気がした。




「……お前ら」

「「「はい、瞳様〜…」」」

「とりあえず隠れてろ。いいね」

「「「はいぃぃ……」」」




身体によじ登っていた彼らを床に下ろし、まずは目的だった台所に冷蔵庫に入っていたお茶を一杯飲みほし、ダンッとコップを机に叩きつけ来た道を戻ればさっきは誰もいなかったあの部屋からガキ共の声とおじいちゃんとお父さんの声がした。




「孫をよろしゅう頼んます」

「リクオと仲良くしてやってくれな」

「はい!にしてもこのアメまずいっすね〜」




スパンッ




突然勢いよく開いた襖に驚き、そこを見ればそこに瞳の姿があり珍しく怒ってる瞳にリクオは顔を青ざめさせ、ぬらりひょんと鯉伴は目を丸くさせた。




「奴良姉じゃないか!
なんだい、やっぱり探偵団に入り───」

「退け邪魔」

「うわっ」

「なっ、姉ちゃん!!?」




上機嫌で立ち上がり駆け寄る清継を瞳は胸ぐら掴んで脇へと投げ、それに驚いたリクオはすぐさま清継の元に行き大丈夫かと聞く。




「あぁ大丈夫だよ!
それより奴良くん姉いきなり酷いじゃないか!」




文句を言う清継に見向きもせず瞳はズカズカとある人物の元へ行くとその人物と目線を合わせるべくしゃがみ込み真っ正面を陣取るもしゃがみ方がヤンキー座りな事は今誰かがツッ込めるほど軽い空気ではない。




「な、なんや?奴良くんのお姉さん…」

「あのさぁ…花開院だかケンカ院だか知らんけどさ君、何様?」

「は……?」




まるで血のように赤い紅い眼に見つめられゆらはゾクリとした。




「うちの奴に聞いたけどお前勝手に家歩き回ったそうだな、リクオの静止聞かずにズケズケと」

「そ、それはそ、その、この家に妖気を感じたからであって!」

「だからなんだ」

「え」




私の返しにキョトンとした。




「妖気とやらを感じたからなんだ?
私らは1度でもテメェに妖怪だか幽霊だか知らねーけどそれを退治してくれって頼んだか?」

「それは…されてへんけど…」




どんどん小さくなっていく言葉とシンと静まりかえるその部屋は周りの友達からしたら非常に居心地が悪いことだろう。
リクオはどうにかして欲しいと父と祖父を見るも、2人も揃いと揃って珍しいものを見るように姉を見ていた。




「修行でこっち来てるのかも知らねぇけどさぁ……」



銀華はため息混じりにそう言い、頭を雑にかきそして脅えてしまうほど鋭い視線をゆらに向けた。




「テメェの陰陽道通す前に人様ん家に居るならマナーを通せ、マナーを。んなもん極める前に人として最低限のことやれよ」

「………………」

「そこのワカメも金持ちだか知らねーが礼儀くらいちゃんとしろ。どんな親しき仲にも礼儀ありだ」




清継を指さしてそう言えば清継は銀華の怒りを滲ましているその目をなぜか怖いと感じた。




「……す、すみません、でした」

「わかったんならいい。……おい、へっぽこ院」




一度清継に向けた目をもう一度ゆらへと戻す。




「へ、へっぽこ!?」

「妖怪とか人とかどうでもいいんだけどね、とりあえずどんな生き物だろうと人道大切にしない奴が大嫌いだ。ついでに好きな物は酔狂なヤツとお菓子全般。特に金平糖は人生のお供だ」

「は、はぁ…?」




突然なにを言い出してるんだこの人、という視線を受けるも私は特に気にもせず言葉を続けた。




「お前親元離れて一人で修行してんだよね?」

「え、あ、は、はい」

「ふぅん」




さっきまでの鋭い目付きはどこへやら。
紅い眼は鋭さをなくし、銀華は笑った。
ゆらの頭をポンと重みがかかる。




「凄いじゃないの。まだガキなのに一人でこんな所に来て修行とはね。大変だろうが、頑張れや」

「ぁ……」




ポフポフと撫でていくては優しくて。
銀華が浮かべる笑みも優しくて。
ゆらは何故かそれにやけに安心を覚えた。
今日初めて会って、自分に非があるにせよいきなり説教かましてきた人に対してそんな感情を持つとはなんだかおかしな気もする。




「んじゃ、まぁ邪魔したわ。あ、ワカメお前ら男なんだからんな簡単に投げ飛ばされてんじゃないよ。アンタそれでも玉ついてんのか??」

「姉ちゃんンンン!!!」




ではごゆっくり、と出てった銀華に全員がぽかんとし、ゆらは銀華の手が乗っていた頭に手を置く。




「……奴良くんのお姉さんは…
なんというか…不思議な人やなぁ……」




多分無意識のうちにこぼれた一言だろうその一言に奴良家以外の者は、心の中でそれに激しく同意した。























って今日発売のお菓子めっちゃあるの忘れてたァァァァァァァァ!!!!!!







……奴良くんのお姉さん、面白い人やね。

……面白いというかうるさいっていうかなんというか。

どうやったらあんなんに育つん?

それはそこのじーちゃんとお父さんに聞いてくれると嬉しいかな。


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