人生もゲームもバグだらけ | ナノ


▽ 14


まだ眠い身体に鞭打って起床し、慣れたように制服を着て、ネクタイをする。
ご飯を食べるために居間へと向かった。




「世は………妖怪ブームになっているのです!
どう責任を取るおつもりですか?」

「……………………。
だから…世間の妖怪ブームが…なんでボク?」




縁側を歩いていれば、庭からリクオと鴉天狗の声がした。




「若がいつまでも奴良組を継がずにブラブラしてるからザコ妖怪や若い妖怪どもになめられてこーやって縄張りシマを荒らされてるわけですよ。かつてのあの快刀乱麻の大活劇っ あれはなんだったのですか!!」

「んなっ……………」




うーん、今日も清々しいほどの晴天。
とても良い天気。
いい天気だってのになぁに朝から言い争ってんだか。




「だって…あの時は何が何だかわからなくなったんだもん!!自分が何言ったかもおぼえてないし」

「そんな無責任な!!
拙者はハッキリとおぼえてますぞ!!
オレの後ろで群れのなれとかなんとか言ってたくせにィ〜〜」

「朝からリクオも鴉天狗も元気なこった」




私はふぁ、と欠伸をひとつしながらそこへ行く。




「おうリクオ、朝っぱらからなーんの話をしとんじゃ。おはよう銀華」

「朝から元気だな、リクオ。おはよう銀華」

「んぁい。はよ」




おお、今日はお父さんが早起きしてる。
珍しい。

居間に着けばカチャカチャと食器の音を立てながら箸を進めているのはお父さんとおじいちゃん。
二人も朝から騒がしいリクオたちを不思議そうに見ていた。




「おはよう姉ちゃん。
ネクタイちゃんと締めてちゃんと制服着てね。
……じーちゃんと父さんが放任主義だからかわりにボクが怒られてんの」

「しかたなかろう?」

「俺もかよ」




まさか自分もここにひとくくりにされるとは思ってなかったらしい父が苦笑いをうかべた。




「ごらんの老体…お前が早く妖怪の総大将を継いでくれねば…わし死ぬな」

「俺もう引退してるし組のこと関しちゃ親父に丸投げしてるんだがな」

「じーちゃんうそつかないで!!
昨日も夕方元気に無銭飲食してきたくせに!!
父さんも引退したにせよ発言力強いの知ってんだからね!?」

「え、おじいちゃん死ぬの?さようなら」

「少しくらい惜しむということをせんかい。
なに潔く見送ろうとしてんじゃ」




お母さんがいつもの様に持ってきてくれた朝食
お母さんにお礼を言って、食前の挨拶をして私も朝食をつつき始める。




「いいかい?ボクはフツーの人間としてくらすんだ!姉ちゃんもね!じーちゃんや父さんみたいにはならないからね!」

「ん?私もなの?」

「当たり前でしょ!姉ちゃんまでこんなのになったらボク絶対嫌だから!」




そう言いながら池にいる河童にぽーいとキュウリを投げたリクオ。




「あれ…一本だけですか」

「写真撮られちゃったからじゃない?
なんかさっき鴉天狗言ってたよね」

「えー…どこで撮られたのかな」

「さぁね、知らん。でもまぁ…
今携帯でもチョイチョイっと撮れる時代だからね。いやぁ、便利な世の中になったもんだ」

「年寄り臭いですよ、銀華様」




ああ、河童可愛いなぁ。
前世で一回会った河童は天人だったしなぁ。
なんかおっさんだったし。

私がそんなことを思っているといつの間にかリクオが昔いじめにあっていたという話になっていた。
へぇ、まさかリクオがそんな目にあっていたなんて。




「リクオ」

「ね、姉ちゃん?」

「いじめってマジ?」

「え!?あー、やぁ、まぁちょっと?
ほんとちょっとだけね!?でも今はもう」

「たっく……
ナメられてるから虐められんだぞー?」

「な、ナメられてるって…べ、別にそんなわけじゃ……」




ムッとしたリクオに私はため息をつく。




「あとね、仮にやられたんならとりあえずその主犯格フルボッコにすりゃあ二度といじめてこないよ」

「弟になにさせる気なの!?!?てかなんでそんな暴力的に解決しようとするのさ!!」

「いやいや、正当防衛じゃん」

「絶対姉ちゃんならやられた分以上にやるでしょ!!」

「そりゃ最低倍返ししなきゃ腹の虫収まらなくね?」

「その姉ちゃんの喧嘩っ早いところどうにかなんないの!?」

「いやほら、姉ちゃんガキ大将だったから」

「なにそれ初耳!!!」




嘘でしょ!?とリクオは私を凝視した。




「って言うのは嘘です」

「な、なんだ、びっくりした……ありえない話でもないから本当にびっくりした……」

「それよかリクオ、もういつも出てる時間だけど」

「え?わ、本当だ。…じゃあボク学校行ってくるからね。いってきまーす」

「いってらー」




今日も元気に早い登校をする弟を見送った。






















▽▲▽▲▽




















「え?浮世絵中の旧校舎ぁ?」

「うん」




その日の夕方、リクオがいきなり部屋を訪ねてきたと思えばそんなことを言ってきた。




「お願い!姉ちゃん一緒に行ってくれない!?
流石にこの時間に出歩くとみんなになに言われるかわかんないから、保護者的な立場で、ね!」

「………………」




のんびりとベッドで漫画を読んでいた私は全力でめんどくせぇ、という顔をしてやった。




「今度なんかお礼するから!」

「……はぁ……」




リクオの話によると清継とか言うクラスメイトが異様に妖怪について興味を持っているらしく、浮世絵中の旧校舎に肝試しに行くらしい。
その保護者として私に同行をお願いしてるのだ。




「その清継とか言うやつバカなの?
なんだって妖怪探しに行くわけ」

「……な、なんか前に一度僕が覚醒した時に助けたらしいんだけど、妖怪の僕を探してるっぽくて……」

「なにそれ本人目の前に探してるとかアホくさ」




犬が自分のしっぽ追いかけてるようなもんじゃね、それ。




「姉ちゃんお願い!姉ちゃんの大好きな駄菓子とかスイーツとか奢るから!」




両手を合わせて私にお願いをするリクオ。
その様子をチラリと流し目で見て、またひとつため息をつく。




「仕方ないなぁ」

「!ありがとう姉ちゃん!!」

「んじゃ、お礼としてうちんちの近くにあるコンビニのスイーツ全種類で手を打とう」

「え、一度に?」

「いや、毎日一品ずつ制覇するまで」

「わかった!」




いいのかリクオ、それで。
自分で言っといてあれだけど等価じゃないと思うんだけどな。




「じゃああと10分後に出るから準備お願いね!」

「いきなりだな!?」

「だって仕方ないじゃん、バスないんだし」

「たっく……」




漫画を閉じて立ち上がる。
夜だし、着るもんはなんでもいっか。と私は洋服を入れてるクローゼットを漁る。




「じゃあ10分後玄関で!」

「ハイハイ」




……私って、なんだかんだリクオに甘いわぁ。




「よし、姉ちゃん行くよ」

「お父さんたちには言ったの?」

「ううん、言ってない」

「え、無断外出?」

「この時間の外出許すわけないじゃん父さんたちが」

「…バレたら面倒だぞ?」

「分かってる。
だからこうやって人目避けてるんだよ」

「人目っつーか、妖怪目」






















中学を卒業して以来になる気がする、浮世絵中。
といってもここは旧校舎だけどここ。
清継とか言うやつの呼び掛けで私を含め7人ほどがここに集まっていた。
……わりと人集まるのね。




「よし…そろったね。メンバーは7人か…」

「楽しみですね清継くん!」




お前が清継か……!!
妖怪の世界に首突っ込もうとしやがって……!!
めんどくせーことに私を巻き込むんじゃねーよ!!




「ん?カナちゃん!?…なんで!?
怖いの苦手なんじゃ…」

「う…うるさいな〜、いいでしょ!?
…て、あれっ銀華ちゃん!わぁ、久しぶり!」

「お?おお〜カナちゃん!久しぶり〜」




久しぶりに会ったリクオの幼馴染の家長カナちゃん。
リクオが小学校入学して私が小学卒業するまではほぼ毎日顔を突き合わせていたから顔馴染みだ。
リクオ情報によるとこの可愛さで今は読モをしているらしい。
流石だなカナちゃん。

そして私はカナちゃんと言い合いを始めるリクオを放置し、こんな変な会にどんな人が来てるのだろうかとふと他のメンバーを見て、思わず固まる。




「及川氷麗です!こーゆうの…超好きなの!」

「歓迎するよ!」

「……………オレも好きなんだ。倉田だ」

「そ…そうすか!」




氷麗に青ォォォォォ!!
なんで!?どうして!?
こっそり来たはずなのに!
ていうか普通に気づくんですけとその変装じゃあ!!!

見知った側近二人に思わず固まっていると清継が私の方を向いた。




「む、君は……初めましてだね?
僕は清十字清継!君は?」

「……リクオの付き添いできた奴良銀華」

「奴良……?奴良くんの親戚の人かな?」

「ああ!違うよ清継くん!
この人は僕のお姉ちゃんだよ」

「お姉ちゃん?…………?」




至極不思議そうな顔をして私とリクオを交互に見た。
多分、姉弟なのに毛並みが違うこととかを見て不思議に思ってんだろうな。




「私アルビノでね。だから髪は白いんだ」

「なるほど、そうだったのかい!」




不躾に見てしまってすまなかった!と清継くんとやらは言うが……なんつーかなんだコイツのでかい態度は。
後輩のくせに何様だコラ。




「それと、今日は来てくれてありがとう!
奴良くんのお姉さんまで来てくれるとは思わなかったよ。そうだっ、君も奴良くん同様名誉隊員にしよう!喜びたまえ!」




……なんじゃ、そりゃ。
と思ってしまったのは仕方ないと思う。


その後簡単にルート確認をした後、早速旧校舎に乗り込んだ。
おんぼろ、という言葉がぴったりなくらいボロボロになって劣化のひどいコンクリートの校舎
確かに雰囲気はある。




「とにかくこと細かく調査だ。
ここに妖怪がいるなら…
あの人に通じる何かがあるはずさ!!」




うーん、この感じ……多分いるな。となると……
なんかめっちゃ面倒なことにならない?これ。




まずは美術準備室。




「じゃあ…とりあえずこの部屋をチェックしようか」




とりあえず、木刀持ってきて良かったと思う。
リクオにはそれいるの??とめっちゃ変な目で見られたけど一応念のために持ってきた。
ここの中から感じる妖気からして、そこそこの数が居そうだ。
最悪の場合、とりまボコ殴りコースで行こう。

美術準備室を散策し、部屋を出ていく時女の子みたいな妖怪と目が合い、リクオもその子に気づいた。




「あら今私のこと」



グシャアア



「……oh………」




リクオ………容赦ねぇな…………
まさか棚で押し潰すとは。
私のボコ殴りコースより酷くない??

それから普通に妖怪がここにいるとわかったリクオの行動は早かった。
彼らに見られぬよう先回り、先回りと全力で旧校舎を駆けずり回る。
必死すぎて若干空回りしてたけど。




「ハァ、ハァ」

「リクオ大丈夫か?」

「っ、姉ちゃんも手伝ってよ…!
ここ結構な数いるよ!?」

「そっすね。でも手ェ出す前にリクオが片付けてんじゃん?」

「うっ、そ、それは……」




最後の食堂。
リクオは自分よりも先に彼らが入ってしまったことに慌てて戻る。




「……まぁばったり妖怪に出くわしても後頭部ぶん殴って記憶吹っ飛ばせばいいだろー」




果たして上手く記憶を飛ばしてくれるかは、知らんけど。




「へぇっ…いい雰囲気。
すっごい出そうですよ清継くん…」




私も彼らの元に戻れば、奥から聞こえてきたのは何かを食べているようなペチャペチャという嫌な水音。
島とかいう小物臭半端ない奴がライトをそっちへ向けると、数体の妖怪たちが死んだ犬を、食べていた。
妖怪たちは犬なんかよりもずっと大きな獲物である私たちを狙わないという選択肢はない。
ゆえに、奴らはすぐ襲ってきた。

私は木刀を素早く引き抜き構える。




「リクオ様、だから言ったでしょ?」

「え」

「こーやって若ぇ妖怪やつらが……
…奴良組のシマで好き勝手暴れてるわけですよ」




襲いかかってきた妖怪たちはものの見事に、瞬殺された。




「邪魔」




私も向かってきた妖怪目掛けて木刀を振り下ろせばその妖怪の頭がかち割れた。
おお、中々痛そう……




「うせな。
ここはてめーらのシマじゃねぇぞ、ガキども」




妖怪たちはわらわらと逃げて行き、私はため息をこぼす。
骨のない雑魚妖怪の集まりだったらしい。
何だつまんねーの、と独りごちていれば脇ではリクオが氷麗たちがいたことに気づかなかったようで一人で驚いていた。

いや、なぜ気づかないんだ弟よ。
ゴリゴリに氷麗と青のまんまだったじゃんか見た目。
もうここまで来たら鈍感の域に行く気がするんだけど。




「ずぅ〜っと!?ハァー!?
きいてない…きいてないぞぉ〜〜!?」

「いいえ確かに言いました。このカラス天狗が」

「いっ!?」

「ひっ!?」




割れている窓の外にいつの間にかいた鴉天狗。
思わず私とリクオはビクリと驚く。




「まったく…心配になってきてみればあんな現代妖怪わかぞうども。妖怪の主のなるべきお方が情けのうございますぞ。銀華様はご自身で撃退されてましたのに!」

「だからボクは人間なの!!
姉ちゃんは父さんに稽古つけてもらってるみたいだし僕とは違うよ!!」

「まだおっしゃるのですか!!
あなたは総大将の血を四分の一…」

「ボクは平和に暮らしたいんだぁ〜〜〜!!」




リクオもリクオで、往生際の悪いすぎか。
てかカナちゃんの存在忘れているところダメじゃね?




「ねぇまだ…目ぇあけちゃダメ!?まだ怖い〜〜?」

「え?あ…うんもうちょっとかな…」




ていうかこれ、私ついてきた意味、なくない??




「銀華様からも何か言ってやってくだされ」

「いや、今のリクオに何か言ってもあーだこーだ言われるだけだろ」

「しかし〜」

「なぁに、気長に待ちゃあいいじゃないのよ。
のんびり流れに身を任せてね〜」

「全く!銀華様のそういうテキトーなところは感心致しませんぞ!」

「人生なるようにしかならないって」




あっはっは!と笑いながら私達は旧校舎をあとにした。。


はてさて、リクオが3代目襲名になるのはどのくらい先になることやら。





























てかさ、姉ちゃん。

あん?

姉ちゃんが倒した妖怪の頭…割れてなかった??

割れてたね。カチ割ったね。

木刀で頭かち割れるってことある!?

人間やる気になればなんでも出来る!

なわけあるか!!


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