人生もゲームもバグだらけ | ナノ


▽ 09


あれから数年が経った。
リクオはすくすくと育ち小学生に、私も中学生になった。

あれからの事だが、何故かあの事件後、少ししたあとにお父さんは二代目を降りた。
不思議には思ったがまぁ関係ないからいっかー、と思って完全放置だ。
総大将であった父が退いて空席となった総大将はおじいちゃんが代理で今はやっている。




「よぉ、おはよーさん。銀華」

「あ、おはよーお父さん」

「リクオの奴、今日もやってんなー」




楽しそうに庭を眺め、笑っている父。
私もつられるように庭を眺める。




「……てか、これなに?朝の幻覚?」

「なんでだよ。朝の幻覚ってなんだよまず。
…リクオのイタズラだな。昨日俺が教えた」




リクオに指示出したのお前かいィ!!!

私は心の中でツッ込んだ。
私たちの視界に広がる光景、それは庭の木に吊るされてる雪女に、でかい落とし穴に落ちてる黒田坊と青田坊。
それを楽しそうに笑って見てる弟のリクオ。

いい性格に育ったな、リクオ。




「あっ!父さん!姉ちゃんおはよう!
見てみて!上手くいったよ!!」

「おー、さすが俺の子だぜ!」




駆け寄ってきたリクオの頭をお父さんはそれはそれは楽しそうに、そして嬉しそうに撫でる。
向こうからはリクオ様ァァァ!!!という下僕たちの怒りの叫び。なんだこれ。




「お姉ちゃんお姉ちゃん!僕すごい!?」

「え?うん、凄い凄い。でもまだ詰めが甘い」

「え!まだ!?」

「私ならあの落とし穴にナメクジ死ぬほど敷きつめるわ」




そう言ったらお父さんがギョッとした顔をし、リクオはキラキラした顔をする。




「そっか!今度やってみる!!」

「やってみやってみ」




あ、もうこんな時間!準備しなきゃ!とリクオがバタバタ屋敷の中へと戻って行く。
あの妖怪3人は放置の方向なんだねリクオ!
まぁ私助ける気ないけど!




「……銀華お前……相変わらずタチ悪いイタズラ仕掛けようとするな…」

「イタズラなんか嫌がらせみたいたもんでしょ。全力で嫌がらせせずにどうすんの!」

「いやイタズラと嫌がらせって別モンだぞ??」




それはそうと、私もそろそろ行かなければ。




「学校行くのめんどくさいなー」

「義務教育なんだ、仕方ねぇだろ?」

「んー」




ワシワシと私の頭を撫でるお父さん。
昔から、変わらない撫で方だ。



「はー、家で全力で自宅警備員してたいわァ」

「……それニートだろ」




あーあ、と伸びるながらそう言えばツッ込んできた父なのだが……いや、よく知ってたな。
江戸生まれ江戸育ちの人が。




「……相変わらず髪の毛フワフワだなぁ、お前は」




お父さんはそう言って私の頭に手を置いた。




「好きでクルクルしてるわけじゃないんですぅ、勝手にクルクルしちゃってるんですぅ」

「ははっ、大丈夫だって。可愛いぜ?」

「遊び人 鯉さん的発言いらんわ」

「ゲ、それなんで知ってんだよ」




私の髪に触れていた手が止まる。
流石に父親が昔相当遊んでいたなんてことはあまり子供たちに知られたくないんだろう。
若干強ばった声だった。




「ボーリング玉」

「うぉい首無ィィィィ!!!
銀華に余計なこと教えんなァァァァ!!!!」

「ボーリング玉で通じんのかよ」




どこにいるか分からない首無に聞こえるようどデカい声で叫んだお父さん。

うーん。普通にうるせぇな、朝っぱらから。
てかボーリング玉で通じるとかいいのかよ。
確かに昔から度々首無の頭ぶん投げて遊んでたけどさ、私。
その度に首無に全力でもうやめてくれと懇願されたけど、やめてやるつもり毛頭なかったよ。




「じゃあ私行くわ」

「おぉ、行ってらっしゃい」

「いってき」




パチンと片目を閉じて笑うお父さんは昔と変わらずイケメンである。
この人の血が半分流れてるとかヤヴァイ。




「お姉ちゃん早く行こ!!」

「およ、リクオやないかーい」




二人で玄関に行けばいつものように妖怪たちが待ち受けていて。




「若!お嬢!靴です!」

「靴下です!」

「足洗いです!」

「逆、逆!!もうみんなしっかりしてよ!!」

「その順でやったら靴がぐっしゃぐしゃだわ」




雨の日じゃないのになんでそんな足元濡れてんの?ってことになるから。
靴履いたまま足湯でもしてきた?的な感じになるから。




普通に靴下と靴を履いて、みんなに見送られて本家をあとにした。



















「もうみんなおっちょこちょいだよね!」

「そうだねー」

「お姉ちゃん眠いの?なんかぽやぽやしてる」

「銀華さん朝弱いんですよ」




本当、マジで。
早起きとか本当苦手。
やらざるを得ない場合は頑張りますけども。
起きなくていいなら午後まで爆睡しますよ。




「でもちゃんと起きなきゃイタズラできないよ??」

「朝っぱらからイタズラが習慣なんかいお前は」




イタズラされる妖怪たちはたまったもんじゃねぇな。

そんな会話をしながらリクオはバス停に、私は駅へと向かう為分かれ道に差しかかる。




「お姉ちゃん行ってらっしゃーい!」

「ハイハーイ」




リクオと別れて、ようやく私は大きなため息をつく。




「朝からマジでだるいわ」




リクオと別れて、ようやくモードを変える。
この世に生まれてからずっと家ではみんなを騙し続けて早十数年。
もはや慣れては来たものの、やっぱりだるいものはだるい。
変な演技も板に付いてきたところではあるが。




「あ、銀華おっはよーう!今日も一緒行こうぜ!」

「朝からテンション高。徹夜でもしたのかよ」

「きっちり8時間の快眠を経て現在登校中でっす!」




駅に行く途中でばったり会ったは小学の時(1年生の時から)から何故かずっと同じクラスという奇跡が起きている友人。
名を加藤 五郎。
平成の世にしては実に渋い名前だと思う。




「つーか相っ変わらず死んだ魚みてぇな目してんな!」

「いざって時キラめくと何度言えばいいんだよお前は」

「キラめいたところ見た事ないもん!」

「あー。ハイハイ、うっせぇ」



















そうだ、なぁなぁ銀華!

なに。

昨日な!新しく出たドラ○エ買ったんだよ!

マジかッ!!!

マジ!終わったら貸すな!

やっぱ持つべきものは太郎だ!!

いや俺五郎。



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