人生もゲームもバグだらけ | ナノ


▽ 03



それから更に数年がたち、私に弟が出来た。




「おねーちゃ!」

「グフォッッ!!!」




縁側でのんびり昼寝をしていた私の腹めがけて飛んできたのはその弟こと奴良リクオ。




「おおおおおおお……リクオ何すんだ…」

「おねーちゃ!」

「はははっ、大丈夫かい?銀華」




全くもって思いもよらぬ攻撃をくらい、私は腹を抱えて蹲った。
お父さんはじゃれ合う子供たちが可愛いのかよく知らんが楽しそうに笑ってる。

だがしかしマジで痛いんだよこっちは。
でもとりあえずマジでびっくりした。
本気でびっくりした。
胃とか肝臓とかなんか内蔵その他もろもろゲロりそうになるくらいに。
いや、物理でもある意味でそうだったけど。




「おねーちゃ!おねーちゃ!」

「なによ、どしたのリクオ」

「ん!ん!」




私に向かって必死に手を伸ばしている弟。
いや、正確には私の髪の毛に向かって手を伸ばしているんだろう。




「またぁ?リクオ好きだねぇ私の髪の毛」

「すき!」




胡座をかいてリクオを抱っこして膝に乗せればリクオはキラキラした眼差しで私の髪を眺め両手で弄り始める。
その様子はまるで周りに小さなお花が咲いてるみたいだ。




「赤ん坊の頃からリクオは銀華の髪の毛好きだよなぁ」

「なんなんだろうね」

「さぁ?でも銀華の髪の毛確かに綺麗だもんな。
惹かれる理由はわかるぜ」

「とか言いつつお父さんまで弄りはじめんのやめてくんね?」

「いいじゃねーの。なぁリクオ」




お父さんはリクオに同意を求めるも、リクオは私の髪をいじるのに夢中で話など聞いちゃいないらしい。
完全スルーだ。




「銀華のこの天パは俺の天パともちょっと違うよなぁ」

「それは天パとは言わない。くせっ毛だ」

「天パみてぇなもんだろ」

「おいコラ天パなめてんのか??」

「突然の喧嘩腰……」




お父さんびっくりだぜ、と驚いたままに髪を梳く手を止めていた。
するとリクオが満面の笑みを浮かべて言う。




「おねーちゃの、かみ、フワフワ!」

「…………」

「かわいい!」




可愛いのはお前だ。




「フワフワ!」




リクオはキャッキャキャッキャと私の髪で遊ぶ
私の髪の毛って、遊びの道具だっけか??



「リクオの言う通り銀華の髪の毛はフワフワしてるよなぁ。フワフワってーか、モフモフ?」

「犬か」

「だからこう、定期的にモフりたくなる」

「いや犬か」




もはや抵抗するのも面倒になってされるがままになっているとトタトタと向こうから首無が歩いて来る。
彼はリクオとお父さんにじゃれつかれている私を見てフワリと微笑んだ。
イケメンかよ。




「銀華様は大人気ですね」

「よぉ首無」

「そろそろ解放して欲しいんだけど。
てか銀華さんお昼寝してたから寝たいんですけど」

「やだ!まだ、さわる!」

「どんだけ触んのよリクオ君はよぉ」




キャーとまたじゃれつくリクオに私は呆れを含むため息を吐く。
そんな私にも気づいているはずのお父さんも未だにクルクルと私の髪で遊んでいる。




「そーいや首無って銀華の髪の毛触ったことあるか?」

「え?……赤子の時でしたら、数度ありますけど……」




父からの突然の質問にキョトンとしながらも首無は言葉を返す。




「じゃあ大きくなってからはねぇのか」

「ええ、まぁ。銀華様は髪をあまり結びたがる方ではないですし、昔は毛倡妓か若菜様に髪をといてもらっていたようですしね。
私が触れる機会などありませんでしたよ」

「よし、なら首無。ちょっと触ってみ?」

「……は?」

「銀華の髪の毛気持ちいいんだよ。なー、リクオ」

「きもちー!」

「私の髪の毛をなんだとお前ら思ってんだ」




こいつら私の事やっぱり犬かなにかだと思ってんじゃないの?
リクオに関しては多分そこまで考えてすらいないだろうけどお父さんよ。あんただよ問題は。
絶対私の事犬とかなんかだと思ってんでしょ。




「ほら触ってみろって。
一度モフれば病みつきになるぜ」

「お父さん私の髪の毛なんだと思ってんだ」




首無は私とお父さんを交互に見てどうしようか困っていた。
お父さんはお父さんで今の心境を共感してくれる仲間が欲しいのか早く早く、と急かすばかり
これじゃあ首無を困らせるばっかりだ。




「首無」

「銀華様?」

「ん」

「え?」

「撫でるんでしょ」




こうなったら自分から差し出しちまえ。
ということで私は首無に向かって頭を向けた。
傍から見たら私が首無に頭を垂れてるように見えるだろうか。
首無はそれに慌てたあと、腹を括り失礼します。と一言添えて私の頭をふわりと触れた。




「!!」

「どうだ?気持ちいいだろ」

「……フワフワのモフモフですね……!」

「だろ!?だろ!?最高だよな!
おかげで俺もリクオもハマっちまってなぁ」




わっしわっしとお父さんが私の頭を少し乱暴に撫でる。




「銀華様の髪質はとても柔らかくて…なんというか、羽のようです」

「いや、普通の髪の毛です」

「羽のようにフワフワしてるってことですよ!」

「羽は鴉天狗あたりしか持ってないよ本家じゃ」

「本物の羽じゃないですってば!」




でもきっとみんな知らないのだろう。
この天パの大変さを。
梅雨時期になるといつにも増すあのイライラ感を。




「クッソ……私は直毛の首無が羨ましい…!!」

「え?そうですか?
天パとかくせっ毛の方が、なんか可愛いというか、とても素敵だと思いますけどね」

「首無」

「はい、何でしょう?
………え、あ、え、ちょ、銀華様…!?」




リクオを退かし、フワフワ浮いてる首無の頭を鷲掴み、大きくふりかぶる。
そのあとの行動など、みんな悟ったことだろう。




「天パとくせっ毛一緒にすんじゃねェェェェェ!!!」

「ギャ━━━━━━━━━━━━━!!!!!」

「おお…」

「くびなし、とんでったー!」




頭だけな。

思い切り銀華にぶん投げられた首無の頭はその先にいた小妖怪複数名を巻き込んで転がって行った。




「これぞ生首ボーリング」

「ぼくも、やる!」

「好きなだけやりなリクオ」

「待て待て待て待て」




投げ飛ばされた首無の頭を拾いに行こうとする息子を抱き上げる鯉伴の顔は苦笑いを浮かべていた。




「やめてやれ、可哀想だろ?」

「ぼくもやりたい……」

「それは……また今度な!」

「ほんとう?」

「おう、また今度だ」




流石に父も意図的に投げ飛ばされる首無の頭を可哀想に思ったらしい。
わりといつもなら傍観に決め込むのにな。




「じゃあお父さんそのままリクオよろしくね」

「銀華は?」

「寝る」




モソモソと寝る体制を再び取り始める。




「またか?」

「いや私の昼寝邪魔して何が"またか?"なの。
そんなに睡眠妨げるの好き?え?
なら今度私もお父さんグッスリ寝てる時にダイナミックダイブ決め込んでやんよ」

「どうぞお昼寝をお楽しみください」

「よろしい」




と、言うわけでおやすみ。
















おねーちゃ、またねんね?

そうだなー、またねんねだな。

なんで?

おねむなんだな、きっと

そうなんだー

寝る子は育つっつーしな。リクオも昼寝するか?

ぼく、おねむちがうよ?

んじゃー…
じーちゃんとこでも行って暇つぶしすっか!



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