01



この世には、死者の逝く世界がある。
成仏のできた魂は尸魂界という場所へ行き、みんな静かに暮らす。

なぜそんなことを知っているのか。
それは勿論、私が生身の人間でありながら死神という特殊な職業を担っていたからである。
死神になった経緯を話すと一日では足りないから詳細は省く。

そんな私は人として、大往生した。
想い合った人と結婚して、子供を作り、その子供が独り立ちをして、結婚し、孫が出来て。
双子の兄の一護の息子や夏梨たちの子供も見た。

大満足して私は死んだ。
だから、私は尸魂界にいって、死神代行して働いていたからまた向こうで本当の死神となって死神の皆とワイワイやるのだろうと、楽観的にそう考えていた。












しかし、どうだ。















「グットモーーーーーニングッッ!!!!
マイエンジェル壱華ーーー!!」



高校生という年頃の娘の自室にノックもなしに突撃してきた我が父。
更には飛びつこうとしてくるのは、毎朝のこと。
素早くベッドの脇にある窓を開けて、父の勢いのまま窓から突き落として鍵を閉める。
ここまではいつもの流れである。




正確には、前世からのいつもの流れである。




一度死んだはずの私は、何故かまた同じ『黒崎 壱華』として生を受けた。
しかし、ここは私が生きていた世界とは違う世界。
私よりも強い霊力を持っていた兄はここでは幽霊なんぞ見えない普通の人だし、父も死神ではなく普通の人、母も幼い頃に交通事故に遭って亡くなったものの滅却師なんかではなく、普通の一般女性だった。

そしてもう一つ。
違うところといえば、今住むこの場所。
この世界には空座町という町は存在せず、私たちが今住んでいるのは東北の宮城、政令指定都市の仙台である。
仙台の、杉沢という場所で田舎過ぎず、都会過ぎなちょうどいい場所だと思う。

そういったちょっとした変化はちょこちょこあるが、みんな前世のままだ。
性格や、仕草、癖。
だから私はここはパラレルワールドと言うやつなのではないか、と推測する。

あくまでもそれは水色から借りた漫画での知識だからパラレルワールドというのがどんな世界か、と言われれば詳しくはわからないけれど、要は平行世界で、もしも、というような世界ということ。
そんな世界に私はやってきたのだ。







一通り支度を済ませて、一階へと降りれば香ってくるのは美味しそうなご飯の匂い。



「あ、お姉ちゃんおはよう!」

「おはよう、遊子。
今日も美味しそうなご飯ありがとう」

「えへへ」



台に乗ってエプロン姿にお玉を持つ可愛い妹のひとりの頭を撫でる。

母が早くに亡くなった私たちは、朝は遊子が、夜は私がご飯を作っている。
洗濯などは一護と夏梨が順番でやっている。
父はシングルファーザーとして私たちを養ってくれているので、基本家のことは何もさせないようにしており、せいぜいやったとしても食器洗い程度。
いや、程度と言ってもあれも数があれば結構大変なんだけども。



「ふぁ…」

「一護おはよ」

「おー、はよう」



眠そうに頭をかいて現れた一護はさっき私がやったように遊子の頭を撫で、夏梨に笑顔で挨拶をする。
2人も素直に挨拶をして、笑った。

すると、玄関がガチャりと開いた音と共にクソ親父が戻ってきた。



「壱華!いきなり窓から落とすなんて───」

「また壱華姉の部屋突撃したの?
いい加減やめろ、クソ親父」

「お父さん、お姉ちゃんはもう17歳なんだよ?
勝手に入ったりしたら駄目!」

「なんでノックもせずに年頃の娘の部屋に突撃できんのか俺は全く理解出来ねぇわ」

「うわぁぁぁぁ!!!母さん!!!
子供たちに俺はこんなに尽くしてるのに子供たちがいじめる!!!一体何が気に入らないんだ!」

「「「だからまずはそのバカみてぇな遺影剥がすとこから始めろ」」」



私と一護、そして夏梨の言葉が見事にハモった。
家の壁一面にドドンと貼られている我が母の遺影。
もう遺影ってレベルのでかさではない。
その遺影に縋り付く父は本当にみっともない。

食卓に料理を遊子と一緒に運んでいると、遊子はお姉ちゃん!と私に駆け寄った。



「?なぁに、遊子」

「あのね、私、悠仁くんにまたご飯作ったんだけどね、お姉ちゃん今日時間ある?」

「そっか。じゃあ私悠仁に連絡しておくね」

「うん!」



悠仁とは、この世界で初めて知り合った、ちょっと身体能力がカンストした普通の高校生。
知り合ったのは、随分と昔のこと。
近所に住む悠仁がうちの家の近くで転んで鋭く尖った石で怪我をしてしまい、その場面に私がたまたま出くわしたのだ。
うちのクソ親父は医者であるし、子供が怪我をしたのにそのまま放っておくわけもいかない、ということで家へと連れてきて手当をした。

それがきっかけに悠仁には両親がおらず、祖父と共に暮らしていると知った。
私たちは母親がいない。
だから私たちはそれ以来助け合おうということで虎杖家と家族ぐるみのお付き合いである。

たまに私や遊子の作った料理を持っていったり、悠仁のおじいちゃんが貰ったというお歳暮を私たちにくれたり、遊子と夏梨の勉強を悠仁が見てくれたり。
と言っても、悠仁はそんなに頭がいいわけではないので遊子や夏梨と一緒になって頭を悩ませる方が多いが。
それを見てるこっちは楽しいからいい。



「それじゃ、いただきまーす」

「「「いただきまーす」」」


















▽▲▽▲▽




















一護と同じ学校に通う私は双子ということもあり、一護とは同じクラスになることはない。
面白いメンバーは基本何故か一護のクラスに行ってしまうからちょっと悲しいけれど、私は今悠仁と連絡をとっているからまぁ、いい。

お昼前に悠仁に遊子お手製のお料理いる人〜。とメッセージを送ってみたらどうだ。
一瞬にして既読が着いてはーい!!!!と全力で挙手をするスタンプが来た。
しかも、スタ爆というやつ。うるさい。



「ふふ」



悠仁はとても真っ直ぐな子で、正直鈍感だと思う。
え、君そんなので大丈夫?と思う部分は所々あるが本人気にしていないからいいか、と放置しているけれど。
なんというか、一護とはまた違う真っ直ぐさというのだろう。
あとはもう、可愛い。だから好き。



「…………」



あげるとなれば、放課後一旦帰宅した後に悠仁の家へ行かないといけない。
悠仁はオカルト研究部?研究会?だとかいう実に不思議な部活動に入っている。
オカルト的物体が視える、聴こえる、触れる、喋れる、憑かれるの私からすれば微塵も興味の引かれない部活だが悠仁にはなにか引かれるものがあったんだろう。
一応部活に入っていることもあるので、放課後いつならいいのかと返信してみる。



「……………いい天気だなぁ」



まさに晴天。
こういう日は、前世でもよく問題が起こったものだ。
ルキアが初めて来て虚と対面した時や、石田との喧嘩、そしてルキアの死刑が実施される時もこんな感じの晴天の日だった。



「………やだなぁ」



晴天はいいものだというのに、そんなことがあってか、あまりいい天気過ぎるのは嫌だ。
かと言って雨も好きではない。
母さんが死んだのは、前世と一緒で雨が降る日だ。
私と一護と手を繋いで、雨でスリップした車に轢かれた。

天気の好き嫌い、ありすぎじゃん私。



ピロリン



「!」



悠仁から返信が来た。
悠仁は6時頃ならOK!と言っており、なら6時にしよう。と返信しておく。
それまでに私は家で料理をしっかり仕込みしておけば何となるだろう。
なんだかんだうち家の夕飯は7時だから間に合う。














けれど、その日。
6時に悠仁の家へ行っても悠仁は出てくることはなかった。

















………向こうで霊圧が跳ね上がった。

………なんか、ヤバそうな霊圧だけど、悠仁大丈夫だよね?


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