09



試合が始まった。
五条先生のスタートォ!!という声で始まったのだが、それまでに京都側の先生と何やら喧嘩してた。
といっても、聞いてる限り五条先生の性格が悪かったからなんだけども。

スタートした今、私たちは一斉に走り出した。



「ボス呪霊どの辺にいるかな?」

「放たれたのは両校の中間見てんだろうけど、まぁじっとはしてないわな」

「例のタイミングで索敵に長けたパンダ班と恵班にわかれる。予定通り壱華は一人呪霊の数稼げ」

「はい」

「あとは頼んだぞ悠仁」

「オッス!!」



私と悠仁は、特別隊である。
私は呪霊の数を稼ぐための人員、悠仁はおそらく一人突っ走ってくるであろう東堂の時間を稼ぐ人員。


走っていると、目の前に現れたのは蜘蛛のような姿をした三級呪霊。雑魚だ。



「!先輩ストップ!!」

「誰かすごいスピードでこっち来てます!!」



バガッッッと枝どころか木諸共ぶち壊してブルドーザーの如き勢いで出てきたのは、東堂葵だった。



「いよぉーし!!全員いるな!!
まとめてかかってこい!!」




「散れ!!!!」



禪院先輩の声に合わせ、私たちは予定通り散った。





















▽▲▽▲▽






















あれから、ひたすら呪霊を探しているのだが全く見つからない。全然いない。
いや、霊圧で探して向かってるのだがなんか知らないけどものっそい遠い。しかも全部。何故。



「なんでみんなこんな遠いのよ!」



むしろ私より他の人たちの方が近いんだが!?
呪霊ってば私のこと嫌い!?私も嫌い!!!

途中、東堂先輩のちっっっがーう!!!!という謎の雄叫びが聞こえたが、まぁ、多分悠仁がうまくやってるんだろう。



「はぁ〜……瞬歩で一気に行くか?」



いやでもなぁ。面倒だしなぁ。
………よし、ちょっと時間潰そう。
少しくらい、許されるよね?



「……この霊圧は野薔薇?」



ふと、感じた霊圧。
ちょっと様子見に行ってみよう。


そんな軽い気持ちで、私は野薔薇の霊圧の方へと向かった。












結局あの場から瞬歩で移動して、野薔薇のところへ行けば、野薔薇は倒れていた。
それも、頭から血を流して。



「!あんた……」



そこにいたのは、京都校の魔女みたいなやつ。
戦闘をした痕跡はあるが、恐らく野薔薇はコイツにやられたんじゃない。
この距離、この銃弾のような怪我。
すぐに思い浮かんだのはあの日、私たちに嫌がらせをしてきたあの女。



「……禪院先輩の霊圧……」



ああ、しまったな。
先輩に、取られた。



「…………何逃げようとしてんの?」

「っ!」

「お前、ちょっと殴らせろ」

「は!?何言って、嫌よ!!」

「問答無用!」



苛立ちのままに、私は魔女っ子の胸ぐらを掴み、主に顔面を数度手加減しながら、ぶん殴った。
グーパンだと顔が変形する可能性があるのでここは気を利かせて平手である。

因みに、我が地元では自他共に認めることだが一護より私の方が100%ヤンキーだった。
一護の悪口言うやつ基本ノしたし、つっかかってきたやつも全員土下座させた。
一護に止められるほどにはヤンキーであったと自負している。
だって一護も私も何もしてないのにいちゃもんつけられ、喧嘩を仕掛けられるのだから二度とそんなことがないようにするのはある意味マネジメントだと思うんだ。




野薔薇の怪我は回道で癒したあと、ボコった魔女っ子に意識戻るまで呪霊から守れ、と指示出しておいた。
魔女っ子は相当私のことが恐ろしかったんだと思う。
すごい勢いで泣きながらうなづいてた。




無理、癒しが欲しい。
悠仁に会いに行こう。





ゲームの途中とか、もう良い。


















と、思っていたんだが……
















「!!…この霊圧は、特級…!?それにこれ、帳?」



なんで今ここで。
そんな疑問を誰も答えるわけもなく、上空はどんどんと帳で覆われてゆく。



「悠仁!!東堂先輩!!」

「壱華姉ちゃん!?え!?どっから出てきた!?」

「壱華!!」



瞬歩でまた移動し、悠仁たちを見つけると2人は距離を取り合っていた。
怪我は悠仁の方が多いが、その空気感は京都校たちのような殺伐としたものではなくどこか試合というか、手合わせのような空気感があった。



「2人とも試合は後回しよ!
特級呪霊が入ってきた!!方角はあっち!
霊圧的に…恵と狗巻先輩、あと京都校の人が一人襲われてる!」

「なんでそんなのわかんの!?」

「素晴らしい索敵能力だな。なら壱華、教員たちにもそれを伝えられる術はあるか!?」

「あります!」

「よし!なら壱華は伝達を。
マイブラザー!俺たちは特級の方へ向かうぞ!」

「おう!」



マイブラザーという単語には疑問符が出たが、今はそれどころではない。

私はその場に膝をつき、着物を上半身だけ脱ぎ、親指の腹を噛み切り血を出させて紋を最速で描く。
描き終われば宙にも霊圧で描き、詠唱を始めた。



「黒白の羅 二十二の橋梁 六十六の冠帯
足跡・遠雷・尖峰・回地・夜伏・雲海・蒼い隊列
太円に満ちて天を挺れ」



東京校、京都校生徒メンバー、教員、全員を捕捉。



「縛道の七十七 天挺空羅」



…………繋がった。



「高専関係者に告ぐ。
緊急事態発生、会場に特級呪霊乱入!特級呪霊乱入!
現在東京並びに京都の学生が応戦中!」



特級が来てることさえ伝えられれば、良い。
きっと先生たちもこちらへ向かってるはずだ。



「……私も行かなきゃ」



特級呪霊の霊圧がある方へ、急げ。














途中、特級呪霊かぶっ飛ばされたのが見えた。
私のいた方向に飛ばされてきたのは幸いだ。



「禪院先輩!!恵!!!」



辿り着けば、二人が血を流してるのが見えた。
そして、すぐに斬魄刀を抜刀する。



「遊べ──魔白童子。遊ぼう童子、"千本桜"」

トクン

「"散れ───千本桜"」



呪霊の体を、桜の花びらが覆った。



「先輩!恵!!」

「壱華!」

「ぐ、っ、壱華お前…」

「恵…!怪我してんなら下がって!
こいつは私が相手する!」



花びらが、散った。
私が操作したわけではないのに。
それに驚いて、呪霊を見てみれば恐らく、呪力の塊を一気に放ち花弁を散らしたようだ。



「戻れ魔白童子」



始解とはいえ、千本桜の刃全部に呪力ぶつけられるって……やっぱり特級は強さが桁違いだ。



「次だ。"刈れ───死風"」



始解の解号と共に、形を変えた魔白童子。
初めて斬魄刀の能力を見た恵たちは当然驚いていた。



「恵と先輩が貰った借り、きっちり返してやる」



その瞬間から、壱華の空気が変わったのはおそらく全員が気づいただろう。
壱華のことをさっきまでは何ともないただの一介の呪術師だろうと思っていただろう呪霊は、その雰囲気の変わり具合に思わず身構えた。



「遅いんだよ」



瞬きの間。
目の前まで詰めてきたと思えば、腕の感覚がない。
花御は両腕を見るとそれはぼたりと下に落ち、あるべき場所にはなかった。



「!!」

「あ。治った。
……呪霊ってこれが面倒なんだよなぁ」



壱華は黒く特徴的な形をした槍を肩に担ぐようにしてため息を吐き、そんなことを呟いた。

あーあ、やだやだ。
虚はこんなこと出来なかったのに。
面倒くささ倍増だ。



「(速いですね)」

「え?……え、なにこれ気持ち悪。
何言ってんのかわかんないのに内容だけ頭に入ってくるんだけどなに??」

「(ですか、あなたはただそれだけ)」

「それだけかどうか、試してみるか?」



特級の速さは、普通に追える。
むしろ夜一さんの方が速い。
いや、夜一さんと比べるのは失礼に当たるか。
この速さなら、隊長クラスは全員追えるな。



「待て壱華!」

「?」

「ここまでだ」



何の話かわからず、また私は疑問符をうかべた。



「私らの仕事は終わった。選手交代だ」

「いけるか!?虎杖マイフレンド!!」

「応!!」

「悠仁!東堂先輩!!」

「よく耐えた、壱華!そしてお前たち!」



上から落ちてくるような形で派手に登場する2人。
ニッと笑いながら私を見てきた東堂先輩は、正直今が分からないのでスルーだ。
絡むの、めんどくさい。



「え!?てかなんで壱華姉ちゃんいんの!?
俺ら姉ちゃんより早く向かったよな!?」

「2人が遅いの」

「結構な速さで走ってたのに!?まだ遅い!?」



ここへ合流してきたのは悠仁と東堂先輩。
そしてパンダ先輩だった。
東堂先輩は私たちを連れて帳を出ろという。
彼いわく、これは五条先生対策の帳で私たちは問題なく出入りできるとの事。



「待て!!いくらアンタでも───」

「伏黒。大丈夫」



笑った、悠仁。
でもその様子は、この場を託せると、そう思わせる何かがあった。
それは恵も察したのだろう



「気づいたようだな。
羽化を始めた者に何人も触れることは許されない。
虎杖は今そういう状態だ」

「…ッ、次死んだら殺す!!」

「はーい行きますよー。壱華も早く来て」

「パンダ先輩…
先行っててください。すぐ行きますから」

「え?あ、はいよー」



パンダ先輩がパンダだーっしゅっ!とよく分からないこと言いながらこの場を去り、私は悠仁たちを見つめた。
あの特級がいきなり襲ってくるようなタイプでなくてよかった。



「姉ちゃん、大丈夫だから。
確か治療する何とかって力、あっただろ。
伏黒たちのこと、よろしく」



悠仁が、殻を破ろうとしてる。
それはかつて、私や一護にもあったからこそわかる。
今、この戦いは悠仁にはとても大事な一戦だ。
それに東堂先輩がいるなら、きっと大丈夫だろう。
東堂先輩は、強いから。



「東堂先輩」

「……」

「よろしくお願いします。私は治療に回ります」

「ああ」



そして私は、その場から一瞬で去った。







「パンダ先輩!」

「おー!壱華!」

「あの特級との戦いで負傷したのはこの2人だけですか!?」

「いや、棘が一番重い。呪言の反動で喉やられた」

「恵と禪院先輩よりも重いですか」

「こっちはまだ何とかなるだろうからな。
棘は喉が潰れてやがるから今安静にさせてる」



走りながら私たちは情報の交換をする。
恵や禪院先輩も軽いとは言えないケガだが、それよりも狗巻先輩の方が重いのか。



「なら先に狗巻先輩のところ行きます。家入さんみたいな治療は無理ですが、治療一応できるんで」

「え、そうなの?」

「はい。じゃああとから二人連れて来てくださいね」



お願いします。と頼み、また私は瞬歩を使う。
時間を争う時はこれに限る。
















その後私が治療に回っている中、五条先生により帳が解除され、特級呪霊は去っていった。
























あれ、壱華って治療もできたの?
それ反転術式じゃないよね?

五条先生。これは鬼道の一つですよ。

え〜。壱華凄くない?
一年生なのに戦闘良し治療良しって。
なんか水陸両用車みたいな。

車と一緒にしないで。

便利ぃ〜。

便利言うな。


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