交流会、当日。
「なんで皆手ぶらなのー!?」
「オマエこそなんだその荷物は」
「まるで今からどこかに行くみたいだけど…」
「何って…これから京都でしょ?」
私たちの頭の上には、疑問符が乗った。
「え?壱華…京都で姉妹交流会…」
「違うよ?」
「京都の姉妹校と交流会だ。東京で」
つかさず、パンダ先輩が説明すれば野薔薇は嘘でしょ〜〜〜〜〜!!!と天を仰いだ。
「道理で最近会話が噛み合わないわけだ」
「ですね」
「ま、まぁまぁ野薔薇そんな落ち込まないでさ」
「去年勝った方の学校でやんだよ」
「勝ってんじゃねーよ!!!!バカ!!!!」
負けるより勝つ方がいいのに。
そんなに京都行きたかったのか、と私は苦笑いする。
先輩たちいわく、2年の乙骨先輩が人数合わせで出た結果圧勝したんだとか。
確か乙骨先輩は学生ながら特級呪術師。
多分特級なる前の先輩なのだろうけど、やっぱり凄いんだろうな。
「許さんぞ乙骨憂太ー!!
会ったことねーけどよぉ!!」
「………恵、どうするのが最適だと思う?」
「………放置」
「……OK」
そして、京都校の面々が、現れた。
「あらお出迎え?気色悪い」
「乙骨いねぇじゃん」
「うるせぇ早く菓子折り出せコラ。
八ツ橋、くずきり、そばぼうろ」
「しゃけ」
「腹減ってんのか?」
東堂先輩のツッコミにはちょっと笑ってしまった。
京都校の人たちはこちらと負けず劣らずの個性派だ。
前会った2人に加え、魔女のような格好した女子、ロボット、顔の両脇の髪を紐で巻いてる人。
髪を紐で巻いてる人曰く、恵は禪院家の血筋なんだそうだ。初耳。
「え?じゃあ恵って禪院先輩の親戚に当たるの?」
「まぁ、一応はな」
「つっても、禪院は養子とることが多いから禪院って名前でもその血筋じゃねぇやつもいるけどな」
「へぇ」
そうなんだぁ、と思っていると巫女服みたいな格好をした女性がやってきてうちわで喧嘩しない、と注意された。
多分、京都校の先生かなにかだろう。
「で、あの馬鹿は?」
誰。バカ。
「悟は遅刻だ」
「悟が時間通りに来るわけねーだろ」
「誰もバカが五条先生のこととは言ってませんよ」
「五条先生ってバカなの?」
「知らん」
どうやら、バカ=五条先生となってるらしい。
あくまでも、先輩たちの中では。
するとドドドドドと音を立てて荷台とともに現れた五条先生。
「おまたー!!やぁやぁ皆さんおそろいで。
私出張で海外に行ってましてね」
「急に語り始めたぞ」
「お疲れ様です、五条先生」
弾丸で海外に出張してたのは知っていたから、その労いの言葉を気分良く笑顔で伝えたら五条先生はパァと笑みを浮かべた。
「壱華!くぅ、やっぱり可愛いねぇ!
先生抱きしめちゃう!!」
「ぐぇ」
「セクハラよセクハラ」
「壱華に触んないでください」
「壱華セコムのガード固い!!!」
バッと両手を広げられたものの、後ろから野薔薇と恵に引き寄せられ、五条先生は押し返されていた。
「ま、てなわけで、はいお土産。
京都のみんなにはとある部族のお守りを。
歌姫のはないよ」
「いらねぇよ!!」
「そして東京都のみんなにはコチラ!!」
「ハイテンションな大人って不気味ね」
五条先生は何やら不気味な人形を京都校メンバーに配ると、今度は私たち東京校メンバーに向き直った。
あの人形のセンスだ。
何が来るか正直怖い。
「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!!」
「はい!!おっぱっぴー!!」
箱の蓋を吹っ飛ばして出てきたのは、悠仁だった。
霊圧の感知などろくにしていなかったから、悠仁だと気づかなかった。
悠仁が、生きてる。
ほんの僅かにしか感じ取れなかったあの霊圧は、間違っていなかったんだ。
野薔薇と恵は悠仁のところへ行き、野薔薇は悠仁の入る箱を蹴った。
私は、いた場所から動けない。
ただこの場で、涙をポロポロと流すばかり。
「おい」
「あ、はい」
「何か言うことあんだろ」
「え。…黙っててすんませんでした…生きてること」
やっと、悠仁が合流した。
「おーい、そっち話まとまったんなら壱華の事どうにかしろって。ずっと泣いてんぞ」
「!そうだ、壱華姉ちゃっ……いで!!!
コケた!じゃなくて!」
荷台に乗っていたためバランスを崩した悠仁は転びながらも私の元へやってくると、悠仁はとても申し訳ない顔をした私を見上げた。
「心配かけてごめん、壱華姉ちゃん」
「悠仁…ちゃんと、生きてるんだね」
「おう!ピンピンしてる!」
「良かった!!」
「ぶほ」
「「「「「あ」」」」」
私悠仁の頭を抱きしめた。
胸に押し付ける形になってしまったが、仕方ない。
「もう二度と勝手なことしないで!
するなら相談してからして!」
「んごご、ふご」
ぎゅうぎゅうと強く抱き締めて、私は悠仁の存在を確かめた。
すると、禪院先輩にぽんと肩を叩かれる。
「壱華、悠仁お前の胸で死にかけてる」
「え」
「ぶはっ!!………胸で窒息死するとこだった」
「ごめん悠仁」
「いや、めっちゃ柔らかくて気持ちよかったです」
「なら良かったです」
京都姉妹交流会1日目団体戦。
"チキチキ呪霊討伐猛レース"!!
指定された区画内に放たれた二級呪霊を先に祓ったチームの勝利となる。
区画内には三級以下の呪霊も複数放たれており、日没までに決着がつかなかった場合、討伐数の多いチームに軍配が上がる。
それ以外のルール一切なし。
今日行うゲームはこういうものであった。
開始時刻は正午。
それまでは各校ミーティングの時間へとなった。
「あのぉ〜、これは…
見方によってはとてもハードなイジメなのでは…」
「うるせぇしばらくそうしてろ」
悠仁が持たされているのは、遺影の枠。
それをちゃんと顔の場所に持ってる悠仁。
「まぁまぁ事情は説明されたろ。許してやれって」
「喋った!!」
「しゃけしゃけ」
「なんて?」
先輩たちと初めて会う悠仁。
パンダ先輩と狗巻先輩には当然、驚いていた。
まぁ、それはそうだろう。
パンダとおにぎりの具しか言わないんだもん。
そんな悠仁の為に呪言師である狗巻先輩の術式を説明しつつ、私は寝っ転がっていた。
悠仁に会えたことで、なんだか一気に疲れたというか、なんというか。
「んなことより、悠仁。屠坐魔返せよ」
「!……五条先生ガ………持ッテルヨ……」
あからさまにカタコト。
しかも屠坐魔ってたしか、特級とやった時に壊れたって恵から聞いてたけど。
「で、どうするよ。団体戦形式はまぁ予想通りとして、メンバーが増えちまった。作戦変更か?時間ねぇぞ」
「おかか」
「そりゃ悠仁次第だろ。何ができるんだ?」
「殴る。蹴る」
「そういうの間に合ってんだよなぁ…」
まぁ、たしかに肉弾戦に強いのは禪院先輩にパンダ先輩、そして私までいるから結構メンバーは多い。
恵だってできるし。
「虎杖が死んでる間何してたか知りませんが、東京校・京都校、全員呪力なしで闘り合ったら虎杖が勝ちます。………壱華はもう別枠ですけど」
「壱華姉ちゃんと一護兄ちゃんに喧嘩教えてもらったようなもんだしなぁ、俺」
「面白ぇ」
「懐かしいねぇ」
そして、時間が迫ってきたこともあり私たちは控え室から出て会場へと向かう。
「つーか、壱華って結局何級に分類されるんだ?呪術師として」
「わかりません。
五条先生に聞いていただければわかるかと」
「壱華強いよな」
パンダ先輩の言葉に先輩たちはみんなウンウンとうなづいた。
私は褒められているということで、ありがとうございますとお礼を言いつつ、斬魄刀の柄を撫でた。
「五条先生に聞いたんですが」
「恵?」
「壱華は志波家の末裔なんだそうですよ」
「「「志波ァ!?」」」
「しゃけ!?」
「え?そんな驚くんですか??」
悠仁、恵、そして私以外のみんなが驚いた。
逆にそれに私は驚く。
「おま、志波って名門だぞ!?昔の!」
「ああ、滅亡したって聞きましたよ」
「だから生き残りがいたことに驚いてんだろうが!」
「ぜ、禪院先輩落ち着いて…」
そ、そんなに名門なのか?志波って。
死神界では名家であったのは間違いないけど。
「…壱華姉ちゃんの血筋ってそんなすげーの?」
「すごいも何も、昔の志波家ってのはな、そりゃまぁ凄かったらしいぜ。今の御三家を上回るくらいやばかったって言われてるぜ」
「「ほぇ〜」」
「おーい、この初心者一年ズになんで誰も教えてやってないんだよ」
優しいパンダ先輩は教えてくれたのだが、御三家の権力の強さがいまいちわからない私たちは微妙な反応しかできない。
「しゃけしゃけ、たかな」
「ごめんなさい狗巻先輩。
私先輩たちじゃないから何言ってるのかわからない」
「志波家ってのは呪術師をメインにやってた一族じゃねぇが古文書にもよく残ってる名前だって言ってんだ」
「そんなに長かった????」
本当?それ本当????
「でもまぁ、ご先祖さまのことはよくわかりませんし良いですよ、別に。昔は栄えてたのかもしれませんけどうちの家はしがない町医者の家系です」
「壱華の家って医者なのね」
「まぁ、一応?」
私はコキリ、と首を鳴らした。
先輩や恵から聞いたが、あの東堂という人は一級呪術師で凄い人なんだそうだ。
たしかに、いろんな意味でインパクトがある凄い人ではあったことは間違い無いけれど。
「ま、とりあえずこの勝負…
京都勢ボコボコにして勝ちましょうね」
そういえば、みんなは笑って同意した。
とりあえずたくさん呪霊祓いながら京都勢フルボッコにすればいいんですよね。
まぁ、要はそう良いことだな。
壱華、ボッコボコにしてやるわよ!気合い入れな!!
野薔薇超やる気。