04



「壱華姉ちゃんの制服着物じゃん」

「うん」

「似合ってる!」

「悠仁のこのフードもいいね。カッコイイ」

「そう?俺も結構これ気に入ってる」



私と悠仁、そして恵は原宿駅の前で五条先生が来るのを待っていた。



「つーかさ、1年がたった4人って少なすぎねぇ?」

「じゃあオマエ今まで呪いが見えるなんてやつ会ったことあるか?」

「………ん」

「………壱華は別で」

「………ねぇな」



伏黒恵という、黒髪の男の子。
私たちと同じ呪術高専の1年生で、仙台から東京にくるときに初めて会った子だ。
初めは私が年上だということもあって黒崎さんと呼ばれていたが、私が同期になるのだから呼び捨てでいいと言ったら名前呼びに変えてくれ、私はなんとなく恵と呼んでいる。



「それだけ少数派マイノリティなんだよ。呪術師は」

「っていうか俺らが3人目と4人目って言ってなかった?」

「入学は随分前に決まってたらしいぞ。
こういう学校だしな、何かしら事情があったんだろ」

「私たちにもあったように、か」

「おまたせー、おっ」



10分ほど待っていると、遅れて五条先生がやってきた。
やはり街中でも目隠しは変わらないらしい。



「制服間に合ったんだね、2人とも」

「おうっ、ピッタシ。
でも伏黒と微妙に違ぇんだな。パーカーついてるし。
壱華姉ちゃんに至ってもはや着物だし」

「制服は希望があれば色々いじってもらえるからね」

「え、俺そんな希望出してねぇけど」

「そりゃ僕が勝手にカスタム頼んだもん。
壱華は女の子だし前もって言ったらこれがいいって言われたから言われた通りにやっただけー」

「…………………ま、いいか。気に入ってるし」

「気をつけろ。五条先生こういうところあるぞ」



原宿に来るのはいつぶりだろうか。
昔家族で東京に遊びに来た時に何度が来たことがあったが、何年前の話か分からないほど随分と前なのはわかる。



「それよりなんで原宿集合なんですか?」

「本人がここがいいって」

「アレ食いたい!!ポップコーン!!」

「買っておいで〜。
壱華もちゃんと刀差してきてるね。
あの誤認識させる御札ちゃんと張ってる?」

「貼ってますよ。
でも呪力ある人には普通に見えちゃうんですよね」

「うん。呪力ある人なんてそうそう居ないから全然大丈夫だって」



腰にある斬魄刀を私は撫でた。
その鞘には五条先生に渡された御札を張っている。
銃刀法上、表立って斬魄刀は持ち歩けないがこの御札のおかげで普通に持ち運べるのは正直感謝している。
私は竹刀とかを入れるああいった布を被せなければダメだと思っていたから。



「あの布被せてたら上級の呪霊に遭遇した時瞬時に対応出来なくなっちゃうからね〜」



ということらしい。
この程度の御札は消耗品で性能が高いとは言えないためあまり高くないらしく、じゃんじゃん使って!!といっぱい貰った。
こんなに貰っても消費できる気がしない、というくらいにはいっぱい。



「恵、先生、喉乾いたからコンビニで飲み物買ってきていい?」

「行ってらっしゃーい」

「…あぁ」

「じゃ、行ってくる」



数メートル離れたところにあるコンビニ目掛けて歩き出し、中に入れば真っ直ぐ飲み物のコーナーへ。
ザッと全部見て、値段を見て。
………コンビニブランドの緑茶にしよう。安いから。



「100円です」

「レシートいりません」



100円だけ出して品物持って出る。
みんなの待つ駅前へと向かうと悠仁が戻っているのが見えた。
なにやら誕生日の主役がかけるような変なメガネかけた悠仁が私に気づき、私のことを言ったのか五条先生と恵も私を見た。
早く戻ろうと足を速めようとした途端スッと突然見知らぬおじさんが脇から来た。



「ちょっといですかー」

「!え、あ、はい?」

「自分こういう者ですけど、お姉さんモデルの仕事とか興味ない?」

「あー………」



めんどくさ、と私は助けを求めるように悠仁たちの方を見たが、向こうはスカウトされたんじゃね?さっすが〜!という会話をしてるのが聞こえた。
言わずもがなさっすが〜!は五条先生。
いや流石じゃないんだよ。

ああ、そう言えば思い出した。
前に織姫と東京に遊び来た時に一回ここ来たわ。
その時にもなんかしつこいおじさんに織姫と一緒にモデルやらないかって誘われたっけ。



「すみません、興味無いので」

「時間ありますか?ぜひお話だけでも〜」



デジャヴだぁ〜、と困っているとおじさんの肩を誰かが掴んだ。



「ちょっとアンタ。私は?」



………"私は?"
何この子、凄い。色んな意味で。



「モデルよモデル。私はどうだって聞いてんの」

「いや…あの、今急いでるんで」



スカウトマンは逃げるように去っていき、私と色んな意味で凄いお嬢さんとの間に妙な空気が流れた。
そこで私はようやくその子がうちの学校の制服であることに気がつく。



「おーいコッチコッチ」



五条先生が私たちを見て、そんなことを言う。
私たちは顔を見合わせ、会話も特になく五条先生たちの所へと移動した。



「そんじゃ改めて。釘崎野薔薇。紅一点だったのにいつの間にか女子二人になってるじゃない」

「数日前に入ってきたんだよね〜もう1人」

「俺 虎杖悠仁。仙台から」

「伏黒恵」

「黒崎壱華です。よろしく」



釘崎さんはじとーっと私たちを見つめ、私たちはそれに疑問符を浮かべた。



「(見るからにイモ臭い…絶対幼少の頃ハナクソ食ってたタイプね。名前だけって…私偉そうな男って無理。きっと重油まみれのカモメに火をつけたりするんだわ。さっきスカウトされてた女…確かに顔良しスタイル良し礼儀もちゃんとしてる。仲良くなる価値あり)
私ってつくづく環境に恵まれないのね。
壱華だっけ?あんたとは仲良くしてあげる」

「え?あ、はぁ…」



やっぱ、色んな意味で凄いわ、この子。
若干千鶴の感じにも似てる。このズバズバ言う感じは。



「これからどっか行くんですか?」

「フッフッフッ。せっかく一年が4人揃ったんだし、しかもそのうち2人はおのぼりさんときてる。
行くでしょ、東京観光」

「え゛」

「え?観光?」



私は五条先生の言葉を疑った。
観光に行くなら別に制服で来る必要なかったんじゃないか?という疑問が今生まれたからである。
しかしその言葉を真に受けた悠仁と釘崎さん。
見るからにはしゃいでTDL行きたいとか、中華街行きたいとか言い出した。
どっちも東京じゃないんだが。



「………本当に観光行くと思う?」



隣にいる恵にそう話しかけてみれば…



「この人がただ喜ばせるわけないだろ。嘘だな」



完全に嘘判定をしている言葉が帰ってきた。
それに私はクスクスと笑う。
五条先生、恵に全然信用されてないじゃん。
実力とかそういうのでは信用も信頼もしてるんだろうけど。

すふと五条先生は行先は六本木だと発表するとおのぼりさん2人は大人の街六本木?と目が輝かした。























▽▲▽▲▽

























やってきたのは六本木………から少し外れた場所。
住所はもはや六本木ではない場所だ。
電信柱に書いてあったから間違いない。



「いますね、呪い」

「「嘘つきーーーーーー!!」」

「地方民を弄びやがって!!」

「あはは…」



入学するのだからいつでも来られるようになるのに。
そのまで言わなくとも。



「でっかい霊園があってさ。
廃ビルとのダブルパンチで呪いが発生したってわけ」

「やっぱ墓とかって出やすいの?」

「墓地そのものじゃなくて、墓地=怖いって思う人間の心の問題なんだよ」

「あー、学校とかも似た理由だったな」

「へぇ〜。墓地行くと憑いてくる人多いからやなんだよなぁ、私。振り払うの大変で」

「お前のは理由が特殊すぎる」



すると釘崎さんが私たちはそんなことも知らないのか、という質問をぶつけてきて今私たちがここに来ることになった経緯を説明した。
この業界…?に来たのは本当に数日前。
何も知らないのは当たり前なのだ。



「飲み込んだぁ!?特級呪物をぉ!?きっしょ!!!
ありえない!!衛生観念キモすぎ!!」

「んだと?」

「これは同感」

「人の指だとわかってるのを飲み込む勇気がまずないよ」



切羽詰まった状況だったからこその結論だったのわかるけれど、それを本当に実行するのだから悠仁は凄い。
切羽詰まった場合でも私なら絶対迷う気がする。



「君たちがどこまでできるか知りたい。ま、実地試験みたいなもんだね。野薔薇、悠仁、壱華。
3人で建物内の呪いを祓ってきてくれ」

「げ」

「私たちだけで?」

「そ」

「あれ。でも呪いは呪いでしか祓えないんだろ。
俺呪術なんて使えねぇよ」

「君はもう半分呪いみたいなもんだから体には呪力が流れてるよ。でも、ま、呪力の制御は一朝一夕じゃいかないから、これ使いな」



悠仁が渡されたのは短い短刀のようなもの。
ナイフにしてはだいぶ大きい。



「呪具『 屠坐魔 とざま
呪力の籠った武器さ。これなら呪いも効く」

「見て見て、壱華姉ちゃん。姉ちゃんと一緒」

「一緒だね」



ニコニコと見せてくる悠仁がかわいい。
とてもかわいい。



「うぇ、なにその姉ちゃん呼び!キモ!」

「あ!?なんだと!?
壱華姉ちゃんは俺の一個上だしガキの頃から姉みたいな存在なんだよ!文句あっか!」

「いつまで姉ちゃん呼びしてんのよ」

「別にいいだろうが!本人嫌がってねーんだし!!」

「私の呼び方は何でもいいから。
ブスとかアマとかだったらぶん殴るけど」

「そんな呼び方した奴いんのかよ」

「ほら、昔喧嘩売ってきた女とか男とかいろいろ?」



釘崎さんは早く行くわよ、と言ってビルの方へと向かう。
私たちもその後を追うように行くが、途中悠仁にまた五条先生がは宿儺を出してはダメだと注意した。
アレを使えば呪いは瞬殺するだろうが近くの人間も巻き込まれると。



「わかった」

「はやくしろよ」

「今行く」



悠仁が閉まっているシャッターを上げ、私たちは中へと入った。



「廃ビルだけど、まだ結構しっかりしてるね」

「だなー」

「あ゛〜〜、ダルっ 何で東京きてまで呪いの相手なんか……」

「?」

「……………」



この子、さっきからどんだけ文句垂れるの。
やりたくないならやらなければいいのに。
めんどくさい子だなぁ。



「時短時短。三手に分かれましょ。
私は1Fずつ調べるからアンタは下から。
壱華は…真ん中から下に向かって。
さっさと終わらせてザギンでシースーよ」

「ちょっと待てよ。もうちょい真面目にいこーぜ」

「真ん中って…」

「呪いって危ねーんだよ。知らんのか」



見事に悠仁は釘崎さんのイライラスイッチを押し、階段から蹴り落とされていた。
落とされたと言っても、数段だから大した怪我はないが。



「今日ずっとオマエの情緒がわかんねーんだけど!!」

「だからモテないのよ」

「何で俺がモテねーの知ってんの!?」

「行くわよ壱華!」

「……はいはい」



そのままあの階に悠仁を置いてきて、私たちはまた階段を上がった。



「さっきの話だと、アンタは小さい時から呪いが見えてたわけ?」

「うん。ついでに幽霊も」

「え、なにそれ。私幽霊は見えないわよ」

「私、霊感がとんでもないからさ。
幽霊と話せるし触れる」

「うわ、ヤバ。じゃあつまり私たちが見えてる視界プラス幽霊が見えてんの?」

「そうね」

「ぜっっったい嫌」

「私にそれを言われても」



真ん中の階についた為、私は釘崎さんと離れた。
特に何も考えず霊圧だけたどりながら呪霊を探す。



「…………バレバレ」



斬魄刀で背後に迫っていた呪霊を切り捨てる。
呪霊的には不意打ちだったんだろうが、私には霊圧がわかる。
不意打ちになどなりはしない。
突然そこに現れたり、霊圧を押さえていたのならまだしも。



「………霊圧的にここには6体…いや、7体かな」



上の階の方に3体、さっきの奴とその下に1体ずつ、悠仁のところに2体。
まぁまぁちょうどいいバランスかな。



「じゃ、下に行こっと」























一階まで降りてきた。
が、途中悠仁には遭遇しなかった。
多分すれ違いかな。



「あれ。壱華もう帰ってきたの?
早くない?まだいるよ?呪い」

「いますね」

「いやいますねじゃなくて」



釘崎さんがいるところにさっき1体いたが祓ってもういない。だからもう2体だ。
悠仁もいるみたいだし大丈夫じゃないかな。



「悠仁と釘崎さんいるし、のんびり待とうかなー。なんて」

「サボりはいけないんだぞ〜」

「サボり魔っぽい先生に言われてもなぁ」

「僕のことそんなふうに思ってたんだ」

「実際サボったりしてるじゃないですか。たまに。
俺に押し付けたりして」

「えぇ…何やってるんですか」

「やだ、壱華そんな冷たい目で見ないで!先生悲しい!」



と、その時だった。
ビルから逃げてるのであろう呪霊が1体。
私はすぐに構えたが、その直後に釘崎さんの呪力でその呪霊は祓われた。



「やべ!!もう1体外に逃げた!!!」

「何やってんのよアンタ!!!!」



壊れているのだろう上階のところから2人の声がした。
私たちの上空を逃げようとする呪霊。



「あっ!姉ちゃんそいつ祓ってくんね!!?」



窓から顔を出した悠仁。
私はOK、と手を振り、逃げようとする呪霊に手を向けた。



「破道の三十三 蒼火墜」



見事に命中したそれでその呪霊は祓えたが、私はふと思う。
鬼道は詠唱無しでどのくらいまでの強さの呪霊に効くんだろうか。
今みたいに完全に払えるのはどの程度までか。



「ヒュ〜…今のが話してた鬼道ってやつ?」

「はい。鬼道の中の破道ってやつですね」

「結構な威力だ」

「すげぇな、今の」

「でも詠唱無しだから詠唱ありだともっと威力出るよ。ただ結構詠唱長かったりするから実践ではすぐには使えないかも」



いろいろと、吟味していく必要があるか。
だがまぁ、虚相手にも詠唱しながらぶちかますことはよくある。
だから不可能というわけでもないだろう。

それから、私たちはビルから悠仁たちが出てくるのを待った。
程なくして2人は出てきて、悠仁に手を引かれて歩くのは小さな男の子。
どうやら遊びで入ったら呪霊に捕まってしまっていたんだとか。






五条先生はその子を家の近くまで送り届け、戻ってくるとそれはそれはいい笑顔を見せた。


「お疲れサマンサー!!
子供は送り届けたよー。今度こそ飯行こうか」

「ビフテキ!!」

「シースー!!」

「壱華は何かいいのある?」

「え?……そうだなぁ。なんでもいいかも。
みんなと食べたら何でも楽しそうだし」

「壱華可愛いねぇ」



五条先生はニンマリと笑って私の頭を優しく撫でつけた。




















っていうか、恵、なんか不満そうだけどどうしたの?

確かに。どったの伏黒。

別に。

出番がなくてスネてんの。

プップー、子供〜。


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