―――しまった


仁王の驚いた顔を見て、最初に浮かんだのは後悔の言葉だった










「ごめん…今の忘れて」


次に何とか紡いだのはリセットを望む言葉

一度きり
リセットなんて出来るはずもないのに

だけど言わないでいるのはもっと出来なかった

俺は涙を拭い何事もなかったように装うことに徹し、スッと立ち上がる

うまく笑えてるかわからないけど、顔に笑顔を浮かべて


「早く部活いこーぜ。」


このままだと真田の説教だけじゃなくて幸村くんにも何かと言われるな

そう続くはすだった



「待ちんしゃい」



だけど言葉は腕を捕まれのみ込まれた


「……時間ねーだろ。用は後で……」

「お前さんは返事を聞く前に行くつもりなんか」

「……っ」


返事?
そんなの決まってるじゃねぇか


「そんなの……」

「断ったぜよ」

「え……ああ…」


女の子の方か
気がついたら手に汗が滲んでいた

…俺の緊張を返せ


「で、ブン太の方やけど」

「!!」


だけどすぐに緊張が戻ってきて、身体中が拒絶で支配される

捕まれた腕を振り払い逃げようとしたけど、掴む手に更に力が加わりそれは無駄な抵抗終わって


もういいじゃねぇか…!
答えはわかってるのに…
俺に残酷なことをしないでほしい

逃げたくて逃げたくて

更に力を込め暴れるように抵抗を続けた


「っ……ブン太!!」


痛いほどに捕まれた腕に更に力が籠る


「離せ!!」

「離さん!!」

「分かってるんだよ!だから、もういいだろ!!」


そして力の有る限り振り払った時――



ダンッ




「っ……!」


背中が壁に押し付けられる
強く背中を打ったせいで少し息が詰まってしまった




「何をわかっとう?」




顔の前にある、仁王の目
全てを見透かされそうな、鋭い視線だ

困惑して黙っていると、ぐっとさらに壁に押し付けられ言うように促される


「っ……そんなの、決まって…!!」

「何がどう決まっとるん?」


余計なことを言わせぬ威圧感

こんな仁王は初めてで…

ああ、彼を怒らせたんだと悟った。



「なぁ?」

「………っ」


容赦無く続きを言わせようとする

それを言えば仁王は残酷な答えを返すわけで

それが怖くて怖くて

想像しただけで胸が張り裂けそうで

もう消えてしまいたかった……


どれぐらい沈黙が流れただろう

目を背けたら、ぽろりと涙が流れた





「お願いだ…俺をこれ以上傷つけないで…」





















体を抱き寄せてから背けていた顔を強引に正面に向けさせ、濡れた瞳が見開いたのを最後にブン太に強引に口づける


「ん…!?」


何をされたか理解し体を引き離そうと腕に力を込めてきたが俺は更に腰を抱き寄せ、口づけから逃げられないように後頭部へ手を回す


「ん…ふっ……んん」


深い深い口づけ

舌を絡ませて、時に吸い付いて


「ふぁ…ん…っ…」


洩れる吐息と喘ぎに更に煽られる

すっかり力が抜けた彼の体は全くの無抵抗



「ぁっ………」



唇を離せば声をあげ空気を吸い込み、肩で息をする

赤くなった頬にとろんとなった瞳から生理的な涙が一筋が伝う

ぺろりとそれを舐めるとびくりと震える体



「に、お……」



彼を抱き締めて肩に顔を埋める



「好いとうよ」



囁けばビクッとまた震える体



「嘘、だ」

「嘘なんかじゃなか」

「だってお前、男で…俺も男で……」

「人を好きになるのに、そんなの関係ないじゃろ?」

「っ…そうかも、知れないけど……」

「信じられん?」

「だってお前、詐欺師だし」

「それはコート上だけぜよ」

「…だってお前、すぐに俺をからかうし、子供扱いするし、女みたいで可愛いって言うし……」

「ブンちゃん」

「んだよ」

「好きな相手には意地悪しとうならん?」

「なっ………」



コイツ…!
そう潤んだ瞳で睨み付けてくるが全く怖くない



「ブン太……」

「じゃあ…両想いってことかよ」

「そーゆうことじゃな」


…泣いた自分が馬鹿みてぇと呆れる彼
余程泣いてしまったことが悔しいらしく、まだ目尻に涙が残る目でまた睨まれてしまった

しかし不意にスッと俺の頬に手を伸ばすと



「仁王」

「ブン太、」



背伸びをして触れるだけのキス

そして唇が離れると照れくさそうにニコっと笑った



「これからシクヨロ」



そう笑った彼は少し顔を赤くしていてこっちも少し顔が熱くなるのを感じた

だけどそんな照れくさい感情も今は嬉しくて

こちらも素直に笑って返した




「こちらこそ」




そして互いに見つめあってはにかんでから屋上への階段を、手を繋いで降りていった。




















もう手を離して部活に向かってる頃、仁王に聞かれたんだ



「ブンちゃん、俺のどこが好きになったん?」



…んー、とちょっと悩んで見ると少し困ったような声でそんな考えんでよかよと言った

だけど俺はそれを完全に無視して


「わかんねぇ」


と答えた。

え?と言うような軽く傷ついたような顔。

馬鹿だなぁと心の中で笑う



「だってよ、気がついたら好きになってたんだぜ?意識せずにお前の事好きになったのにどこがとか聞かれても分かるかよ」



って笑顔で返すと仁王はぽかんとした顔をして…



「ブンちゃーんっ」



と抱きついてきた



「ちょ、おまっ!ここ廊下!!」

「男前なブンちゃんも好いとうよー」

「聞け!」



なんて会話が人気のない廊下響く



ああ、なんか俺幸せだ……

こいつと両想いになれて………






貴方じゃなきゃいけない理由は簡単でした







俺は仁王が好きだ


だから、お前じゃないと駄目なんだ


ただ、それだけ




















(あ、丸井先輩、仁王先輩遅い!!)
(丸井、仁王!たるんどるっ!!)
(ブン太、早く準備しな。あと仁王、お前はコート20週)

(うぃー)
(なして!!?)


110409



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