「ブン太」





ビクリと肩を揺らす

誰もいないはずなのに、聞こえた声

なんで??

それと共に今振り向いたら泣き顔を見られると思い顔を動かすことが出来ない

なんとかして言葉だけは紡ぐ



「に…おう……?」



いつの間に帰ったんだろう
いつ部屋に入ったんだろう

静かだったのに、まったく気づかなかった



「おん」



その声はとても近くで聞こえて

距離を取ろうと立ち上がろうとしたが、背後から腕を回され阻まれた



「なぁ、なして泣いとるん?」



耳元でそう囁かれ、しっとりした息が耳の中へと入ってきぴくりと体が揺れる



「なぁ」

「ん、」



何だかいつもの仁王と違う気がして

顔を見たかったけど今の状況じゃみれなかった

戸惑いながら何も出来なくて

暫くそのままでいるといきなりグッと肩を押され、俺の身体はソファに沈んだ


「!!」


何だと起き上がろうとしたけど、低いソファの背を乗り越えて仁王が俺の上へと乗りそうは出来なかった

ぎしりとソファが鳴り、俺に仁王が覆い被さる



「幸村を思って泣いちょるんか」



その言葉に目を見開く

なんで、そうなるんだ

そしてなんでこうなるんだ

そう思っていると仁王はスッと冷たく目を細め、首筋へ顔を埋めた

ぬるりと温かい感触



「なに、して……!!」


感じたことのない感覚に一瞬言葉を飲み込む

だけど仁王は俺の言葉を無視して舌で首筋をなぞった
背中になんとも言えない感覚が走り声が漏れそうになるのを必死で耐える

そして不意に


「っ!」


ちくりと小さな痛みが走る

もしかしなくても……これはキスマークをつけているんだろう

何度も何度もされ、いつしかそれは胸元にまで及んだ

押さえ込まれた腕はやはり解くことは出来ず、抵抗しようにも全く出来なかった

自分の頭にもぼんやりと靄が掛かりはじめ、はだけた胸元を更に晒される

シャツの前を開けられ、胸の突起を舌で弄ばれた


「ひぁっ…!」


体が大きくビクンと反応し自分でも驚くような高い声が出た

それを聞いてニヤリと彼は笑う


「ええ声で啼くのう」


流石にそれにはかちんと来て文句のいくつかを口にしようとしたが、



「ふぁっ…ぁ、…やめっ…!」



片手でもう片方を弄られ、更なる愛撫を受け口からは感じたことのない快感を表す声しか出てこなかった

いつの間にか仁王は自分のネクタイをほどいて俺の両腕を縛っていて

自分のあられもない姿に羞恥が生まれる


「っ!!」


彼の愛撫に喘いでいるとするっと仁王の手が俺の自身をズボン越しに撫でた

やばい


「やめろっ!!」


できる限りの抵抗をすると細めの腕の癖に意外とある力で押さえつけられ、呆気なく身動きが取れなくなる

このままされるのかと考えると思わず止まったはずの涙が流れそうになった


「止めたらお互いに辛いじゃろ?」


そう言って行為を続けようとする仁王


「お前は好きでもない奴を抱くのかよ!!!」


そんな彼に俺は怒鳴り付けた

仁王の事が好きだからこそ、最後まで及びそうなことがとても悲しくて

自分で言って、ついに涙がぽろりと流れた






「俺はブン太の事、好いとうよ」






予想外の言葉に目を見開く

涙の溜まった目では少しぼやけて見えたが、その時の彼の表情は嘘を言っているようには見えなかった


「……嘘だ」


けれど信じられなくて、知らずのうちにそう呟いていた


「嘘じゃなか。だから俺はブン太を抱ける」


お前さんはどうか知らんけどな、と


「…………」


俺は唖然としていた

だって、仁王が俺を好きで……俺も仁王が好きで
ってことだろぃ?

嬉しさ半分驚き二割


残りの三割は………






ドゴッ!!






「〜〜〜っ!!な、何すんじゃアホ!!!」

「アホはお前だろこの強姦未遂犯!!!」



怒り

ついでに言うと俺は腕も足も使えないので頭を使った

もちろん物理的な意味で


「お前人の気持ち考えろよ!何様のつもりだこの野郎!!」


思っていることを吐き出す

何がお前さんの気持ちは知らんけど…だ!!

ふざけんなよ!


「俺だってお前の事好きなのに、このまま流されてたらお前の事考えて一人泣いてた俺が馬鹿みてぇだろぃ!!?」

「……ブンちゃん、それって………」

「俺も好きなんだよお前の事!バーカ!!」


そう言った瞬間、唇が塞がれた

柔らかいその感触に、部屋の中が静かになる

ゆっくりとそれは離れていき、仁王と近距離で目があった


「ブン太、好きじゃ」


その目は愛しいものを見る目で。


「…俺も、好き」


素直に気持ちを口にすれば、再び唇が重なる

リップ音を立てながら何度も小さく口づけ、その間に手首のネクタイをほどく

そして手が自由になった時舌を侵入させ絡ませてき、俺は仁王の首に腕をまわして拙いながらも対応した

しばらくし、くちゅりと音をたて離れると銀の橋が繋がりぷつりと切れる


「っは……」


少し苦しくなった息を吸い込む
なんだか頭がぼーっとする…

なんてじっと彼を見つめていると真剣な目で見つめかえされた


「ブン太、俺のもんになって?いや、ならんとか許さんけど。あとやらしい」

「なんだよそれ……。そして死ね」


男に何言ってんだと思ったが想いが繋がった嬉しさが上回って今までの悩みや葛藤がどうでもよくなってきて

……『素直』になれ…たのかな

自分の中では感情を…好きと言ったことは素直になれたということで。

俺はそのお陰で彼と想い繋がっていることを確認出来たんだ

なら……


「幸村くんに、お礼言わないと……」


そう言ったらあからさまに仁王が顔を歪めた


「ブンちゃん」

「んだよ」

「こんなときに他の男ん名前出すとは、いい度胸ぜよ」


ん……?

これ、なんか嫌な予感しかしないんだけど

不機嫌なくせに今は笑顔を浮かべている目の前の詐欺師に、背中に嫌な汗が伝った


「いやな仁王…」

「言い訳はいいなり」

「ちょ、聞け……ぁん!」

「………キた」

「クるな!!」



そんな会話をして最後

結局翌日に改めて自分達の想いを伝え、俺たちは結ばれることができた



俺たちはきっと出会った頃から互いを気にしていて、でも世間体とか常識との板挟みになりお互いを避けていた

自分の感情を誤魔化して、いつの間にかそれが真実と信じて。

だけどそれを幸村くんは許せなかったのかな

不器用で愚かな俺たちを


だから、こうして協力してくれたのかな


どちらにせよ、彼には頭が上がらない










…………元からだけど





















(幸村くん)
(ブン太か。素直に、なれたんだね)
(うん、ありがとう幸村くん)
(……仁王、お前も)
(…………)
(先に手を出したりしてないだろうね)
((…………………))
(……お前は今から外周20週してこい)






110428

終わった?終わった……!
くそぅ最初は微裏も入らないつもりだったのに友達の一言で考えてしまった…!
ついでに仁王くんは柳越しに幸村に病院にこいと言われました。あとそこでいじめられました
機会があれば仁王sideも書きたいですね

最後までお付き合いありがとうございました!





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