バレンタインにチョコを渡しに来る女子って恋する乙女って感じで輝いててさ
一段と可愛いんだよなー
うん
初々しくてさ

でもさそれは時に


「階段を下りたわよ!!」

「早く!!」


本来の恋する乙女とは掛け離れたりしちゃったりする


(怖ぇえーーー!!)


迫る足音から逃げ仁王と階段を下り廊下を曲がる

二人分の女子達が俺たちを追いかけてくるのだから捕まった時のことを考えるだけで胃が痛くなりそうだ

今も怖いが捕まったらもっと恐い


(しかもしつけぇ…!!)


なんと執拗な女子なんだろう

バレンタインにチョコを渡し告白するために男二人を追いかけ回す中学校なんて他に存在するのだろうか

あったらあったでこれからどうやって対処すればいいか聞きたいところ

暫く走って先程の反対側にある階段を今度は登る
一段飛ばしで掛け上がると踊り場にジャッカルの姿を見つけた


「ジャッカル…!」

「ようブン太、と仁王」


息を切らして仁王の腕を掴んで走っている俺を見てもっと体力つけろよと苦笑された


「お前とりあえず四階いけ」

「なんで」

「なんでも!で、女子達が上ってきたら反対側の階段に向かったって言え」


それだけ行って残りの階段を上り角を曲がってすぐの特別教室へ入った

ったく、しょーがねぇなと言う声が聞こえたのを考えるときっとジャッカルのことだから今のだけで女子達に追いかけられているのを把握したことだろう

教室の外でタイミングよくわざと階段を音をたてて上っていくのが聞こえ、暫くしてから大量の足音がそれを追って階段を上っていった


「さすがジャッカル。伊達に俺と一緒にいるわけじゃねぇな」

「…苦労性じゃのう…ジャッカル……」


自分達を追いかけていた大量の女子は階段の下から上ってくる気配はなく、よしっと手を握る

そして安心から来たのかはぁ、と息がもれ壁際のロッカーへと持たれった

走ったせいで乱れた息と熱くなった体に冷たい金属の扉が心地いい



「やけ、よくここ開いてたのう」

「六時間目に使ってたんだろ」

「調子ええきに」

「俺天才だから」


俺たちが飛び込んだ二階特別教室――普段この教室には鍵が閉まっている
何故ならここにはサイズ的に大きな資料が沢山あり、それを管理するためだ
運ぶのが困難な故資料が必要な時にはこの教室に生徒を移動させるくらい

自分がいったように六時間目に授業があったようで、普段は仕舞われている機材や道具がまだ出しっぱなしになっていた

これからどうすっかな、と考え始めたその時―――


『はぁっ…はぁ…先輩達はやっ!』

『しかもすっごい執着心だし…!女の私でもあれ怖いわ』


教室の外でそんな女子達の声が聞こえてきた


(女子じゃねぇ俺たちはもっと怖いんだけど…)


多分体力がなく最後尾あたりを遅れて走っていたファン達だろう

……みんな、あれくらいならまだいいのに

先頭のやつは陸上部入ったら即エースになれると思う


『えっどこいくの!先輩達上行ったよ?』

『うん。だけどさっきの授業で特別教室に忘れ物したから取りに行こうかと思って』

(……!)


その会話を聞いて俺は焦った

ここにくんのかよ…!

ゆっくりと歩くペースで足音が近づいてくる

辺りを見回しても机と教卓、黒板、授業で使う機材……隠れる場所なんてない


(くそっ…!!)


諦めて外に逃げようと仁王の手を掴むため手を伸ばした









ガラッ







「確か…この席に…」

「あった?」

「あったあった!寄ってくれてありがとう!」

「じゃ、いこう!」






……パタン





………………





バァン!!





「死ぬ!!!」



俺は絶叫した


「大丈夫か丸井」

「大丈夫じゃねぇよ!」


はぁはぁと息を吐き顔を真っ赤にしながら壁にもたれこんだ






一体何故こんなことになっているかというと…










逃げるぞ、と仁王腕を掴むために伸ばした手は


「ぇ、」


逆に仁王に捕まれぐいっと強く引かれた


「こっちじゃ」


そして掃除用具ロッカーより大きな両開きのロッカーの中へ飛び込む

中は空っぽで男二人が入るスペースがあり、そういえば中身が外に出っぱなしなのを思い出す

しかしそんなことより……


「近い……!!」

「しっ、もう来る」


二人が入れると言っても密着してやっとな感じで
仁王の息が髪と耳に掛かる


(うわわわ………!)


すると彼の言う通りすぐに教室の扉が開く音がした


『確か…この席に……』


女の子の声

まだ息が整っていなかった俺は緊張のせいか自分の息が大きく聞こえ、外に聞こえてしまうんじゃないかと唇を噛み締め息を止めた

苦しいけど見つかるよりはマシだ
こんな狭いところに二人入っているのを見られるなんてもう引き返せない
少しの我慢だと、なんとしてでもバレないようにしなくては…


「………んむ!?」


唇に布地の感触

息を止めた俺に気付いた仁王が自分のシャツ越しの肩に俺の頭を手で掴み口を押し付けてきた

なに!?っと声を出さず目を向けると小さく、息しても大丈夫ぜよと囁いた


(………!)


暖かい息と共に聞こえた声に顔が熱くなる


いやいやあのさ!
今この状況って俺が抱きしめられてるみたいな形で…

しかも男同士こんな密着して……!!

でもドキドキしてる自分がいて…うわぁああああ!


頭が混乱してくる

とりあえず女子がどっかいったらこの状況は抜け出せるんだ!

息と鼓動を聞こえないようにすることに専念し、シャツをぎゅっと握り恥ずかしいのを我慢し唇を押し付けた









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