2月14日

俺にとっては嬉しい日
あいつにとっては残念な日


「休んでよか?」

「だめにきまってんだろ」


コイツはモテる
ついでに俺もそれなりにモテる

しかし俺のは甘いもの好きだと知っているやつからのおまけや義理もあるのでその分コイツより負担は軽いのかもしれない

なんたってこんな詐欺師にチョコを渡すくらいだ……本命が大半


「めんどくさいんよ…」

「うわマジ雅治くんさいてー」

「やって量が半端ないんじゃよ?だからといって無下に断るんは悪いき」


詐欺師らしからぬ発言に流石のこいつにも情けみたいなもんがあるんだな
と少しだけ感心した


「したらしたでそれこそめんどくさい…」


けど前言撤回
やっぱ駄目だこいつ
俺の感心を返せ

そんな会話をしながら学校へと出向く

あー…今年は部活どうなるんだろうな……












放課後
クラスの殆どの女子からお菓子をもらい、持ってきた紙袋は溢れそうになるくらいいっぱいになっていた

不思議と今年のクラスの女子はテニス部レギュラー目的の者がおらず、告白ラッシュの放課後になっても落ち着いていられた


「丸井くんはい、あげる」

「おーサンキュー」


まだもらっていなかったクラスの女子からお菓子を受け取り、本命にはちゃんと渡したか?と茶化す
これから本番!と紙袋を持って緊張しつつも気合いを入れるその様子を見てこんな女の子は可愛いなぁと思う

素直に応援してあげたくなる


「頑張れよ!」

「うん。丸井くんも……仁王くんも撒くの頑張ってね」


俺と自分の席に座ったままの仁王をちらりと見て苦笑しながらそういった
鞄を肩に掛け手を振り出ていくその子に俺も手を振って見送る

…そうなんだよなぁ

お菓子を貰うのも気持ちを寄せてもらうのも嬉しいことには代わりない

だけど……

教室の外に目を向けるとそこには沢山の人の影

……やはり限度がある

朝に仁王にああいったものの、気持ちは理解できるのだ
寧ろそれになってるし

告白を狙って放課後に押し寄せる女子達

彼女達に答えてあげたい気持ちはあるのだが、あの量をみると外に出るのさえ憂鬱になる

しかも今年はクラスにテニス部レギュラーが二人
量も二倍

A組も二人いるが、そこも案の定大変らしい
真田から今日は部活はなしと連絡が来ていた

真田もなんだかんだてモテるんだな。うん
まぁ顔はいいし……

なんて思っていると

ガラッ

痺れを切らした女子達が教室へと突撃してきた

……放課後になっても入ってこないから、教室にいたら安全かと思ってたけどそうでもなかったようだ

すぐに俺と仁王は取り囲まれた


「丸井君これ…!」

「これも受け取って!」

「あっ!私も!」

「おー。お前らありがとうな」


どれも綺麗にラッピングされていて心が籠っているのが分かりお返しが出来ないのが申し訳なく思いつつ、差し出された箱を笑顔で受け取る

人波に揉まれるのは嫌いだけど(特にあの昼休み以来)やっぱりお菓子は好きだし、気持ちを寄せられて嫌な気はしない

だから俺は上機嫌で彼女達に笑みを向けている


はず

だったんだけど………?





「仁王君受け取って!」

「一生懸命作ったから!」

「甘くないの選んできたんだ」



「………」


仁王のまわりを見てたら気分が急降下していく

いやいや違う違う!

あっち見てるせいじゃなくてこれは人波に揉まれているから気分が下がるんだ
きっとそう
それか呆れるくらいの告白と受け取りのお願いを聞いてるせいだ

ハッとして慌てて自分の気分の変化を否定する

だけど……



「あんがと。その気持ちは嬉しいなり」


と微笑する仁王にやっぱりイラッとした


(めんどくさいとかいっておいてそんな風にしてっから女が寄ってくんだよ!)


なんだこの複雑な気分

なんであいつみてイライラすんだよ俺

否定したにも関わらず確実に自分は不機嫌になっていって

自分の周りの声より不思議と仁王の周りの声が耳に入ってくる


(意味わかんねー……)


でも仁王自身も笑みを浮かべてはいるがかなり不機嫌になっているのはわかっていた

だけどそれを表に出さず愛想を振り撒く仁王に腹が立つ


その時


ヴー…ヴー……


「!」


マナーモードの携帯がポケットで震えた

何か言っている女子達に気にせず携帯を開くと受信が一件

差出人は幸村で、パッと仁王を見るが彼は変わらず女子達の対応をしておりメールは来ていないようだ

いつも同時送信のためほぼ同時にメールが届いているんだけど…

不思議に思いながらメールを開いた


「………」


内容を確認しパタリと携帯を閉じる

それをポケットに入れて俺は女子達を掻き分けて進んだ
みんな戸惑いながらも道を開けていく


教室の外へ、
……ではなく


「仁王」


彼の元へ


「ブンちゃん?」


現れた俺に首を傾げる仁王

俺は気にせず仁王の腕を掴み……






「逃げるぞ!!!」






と言って走り出した




女子達を避け教室を飛び出す

ブン太の行動に唖然としていた女子達

だがハッと我に返り叫んだ


「追うわよ!!!」

















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