白い病室は暖かい日差しが差し込んで明るく、和やかだ
しかし個室のせいか本のページを進める音しか音は存在せず、どこか寂しく思うのも気のせいじゃない


「幸村君!」


そんな空気を破ったのは相変わらず明るい声

病室の扉を開けた本人は赤い髪をしていてテニスバックを肩に掛けてこちらに笑いかけている


「いらっしゃい。ちゃんと仁王もいるよね」

「もちろんダニ」


その後ろから続くのは同じく鞄を肩に掛けた銀髪の彼


「二人とも呼び出してすまない。部活後で疲れてるのに」

「いやいや!つーかこれくらい出来ないと立海でやっていけねーだろぃ?」

「そうだね、」


自然と空気が賑やかになる
ブン太は我が儘な面もあるけど、明るくて気が利いてとても兄貴肌だ
だから彼は場を和ませる、そんな気質を持ち合わせていた


「それよりなんかあるのか?俺と仁王を呼び出して……」


ブン太が目線を向けた先である仁王は、変わってはいるど冷静で一人で何でもこなす奴だ。詐欺師と言われるだけあり洞察力もかなり高く、気まずい場も巧くかわしていく能力をもっている。

そんな二人を呼び出した俺の目的は……


「お前達には一緒に暮らしてもらうよ」


ということを伝えること

さっきまでの空気が固まり沈黙が降りる

幾分か間が空き……


「「は?」」


二人同時に発した


「聞こえなかったのかい?お前達には……」

「いやいやいや、聞こえとるぜよ」

「同じく」


なんだ、二度手間とらせないでよ

あとなにさ、その何こいつ頭も治療してもらったほうがいいんじゃないのみたいな視線
ちょっとムカつくな


「え、一緒に暮らす?仁王と?……共同生活しろってこと?」

「そういうこと」

「なんで」


はてなを図上いっぱいに浮かべるブン太が問う
仁王も同じようにこちらを見ていた


「んー…空気がね…」

「空気?」

「二人とも雰囲気が悪いんだよ」


二人っきりになった時。

そうつけ足すと二人は困惑した表情を浮かべた
一応自覚はあるのか

この二人は別に仲が悪い訳じゃない
だからといって仲がいい訳でもない

今まで接点がなかったんだろう
前から二人が喋っているところをあまり見ないしレギュラーになって近くなってからもあまりない
比較的増えてはいるが、こう…友達相手に喋るというよりテニスの作戦など業務的な会話しか聞いたことがなくて

お互いにどこか苦手なところがあるんだろう
初対面の人に対して…あ、この人無理かもって感じるように
大概それは仲良くなっていく内に解決されたりするものなんだけど、話もしないんだから解決されることはない

だからその段階をまだ踏めてない二人は他人に対して気がつく事のできる性質をもっていても、二人っきりになると二人の間には気まずい空気が漂うのだ


「そういうのは部活としていけないことだと思うんだよね」


本人達はよくても周りにはあまりよくないし
部活に支障が出るのはダメだろ?


「それで共同生活?」

「そう」

「ぶっ飛んだ話じゃな。」


我ながらそう思うが、生温いことでコイツ等が仲良くなるとは思っていない
やるなら徹底的に、ね

仁王が呆れたようについでに、と続ける


「拒否権は?」


もちろん、


「ないよ」


笑顔で即答してやる

ブン太が秘かにビクッとしたのが見えたけど気づかないフリをした


「で、でも幸村君!住む場所ねーじゃん!」


何だかんだで不満はあるらしい
ブン太は必死になって俺に主張した


「大丈夫だよ。柳が前合宿で使ったペンションを貸してくれるから」


参謀…よくも!
そんな心の声が聞こえてくるような表情の二人

他の親にだとか距離だとかお金だとか…

互いのことを嫌っている訳ではないようだが何としても共同生活をやりたくないらしい

あー、もう


「そんなに俺の言うことを聞きたくないわけ?」


ぴしりと固まる二人

笑顔で聞いてるのに失礼な奴らはだな…なんて冗談

くいっとブン太が怯えながら仁王の袖を引っ張る

仁王がひきつりながらブン太にアイコンタクト

……早速進歩あったんじゃない?

すると二人は声を揃えて言った


「「喜んでお受け致します」」













「あ、あとこれ以外にも指令出すからちゃんと実行するように。部活動の一環だからね!一応柳に監視役頼んであるから。」

((ただの入院中の暇潰しじゃあ……))

「何か言った?」

((心読まれた!!?))
















柳のペンションに行かされ早十分
早速気まずい雰囲気が流れている

借りている部屋は管理人さんとは離れた場所にあり、自分達で自炊をするようにされている

基本的に自分達でやるようにとは言われているが、俺たちは中学二年生。
炊事はともかく洗濯など他家事が完璧に出来るわけなく、そこらは管理人さんがフォローしてくださるそうだ

ついでに先程携帯をみると一件のメールが受信されており、開いてみるとそれは親からだった


『ちゃんとあんた頑張んなさいよ!部員の子たちに迷惑かけないようにね』


幸村君にうまく丸め込まれたらしい
いや、もしかしたら柳もグルなのかもしれない

仁王にも同じようなメールが姉から来ていたらしく互いに携帯を見ながら溜め息を吐いた

普通に生活出来る程度に置かれている家具と共に置かれている自分達の家にあったはずの私物
それをみて二度目の溜め息を吐いたのは言うまでもない


「あー…腹へった」


時計を見ればもう七時を回っている
部活後からお腹は空いてはいたけど幸村にあんなことを言われて驚きで空腹はふっ飛んでしまっていた


「そうじゃのう……買いにいかんと」


その言葉にぴくりと反応する


「自炊しねーの?」

「え、買いにいかんの?」

「俺の質問に答えろぃ」

「俺料理出来んなり」

「なるほど」


確かに出来なさそうだ


「もしかしてこういう状況になったらいっつも弁当とか外食なわけ?」

「親もよく仕事でおらんしそれで済ましとるぜよ」

「ばっかじゃねーの!んなんだからお前すぐ倒れそうな見た目してんだよ!」


そう言うときこそ自炊しなくちゃならねーだろ

絶対にコイツ栄養偏ってるとか思ってたけどそりゃなるぜ…!

仁王がちょっと不機嫌に返す


「……そういう丸井はどーなん」

「出来るに決まってんだろぃ?」


親がいない時の夕飯は自分が作っているし寧ろ作るものだと思っている

弟たちにも食べさせなくちゃならねぇし何より自分が料理をするのが好きだから
それに育ち盛りの中学生が栄養偏ってるのもどーかと思うし

まぁ自分の料理を食べた弟たちが喜ぶ顔や助かったと誉める親達の顔見たさってのもあるけどさ


「とりあえず料理は俺が担当するから、お前は他の頼むぜ」

「了解なり」


冷蔵庫を確認すると一般的によく使う野菜や肉が一通り入っていた
足りないものは管理人さんに頼めばお金を出してくれるらしいから近くのコンビニかスーパーで買ってこればいいらしい

中の材料を見て、あれとあれが出来るな…と頭で組み立てていく

やっぱり料理するのは好きだ


「丸井が料理出来て助かったぜよ」

「おう!俺の天才的料理楽しみにしとけよ?」


調味料の揃えや調理器具を幾つか実際に手に持ちながら確認して回る

後ろから天災的料理はやめてなとかわかわれ文句の一つを笑いながら返した



………あれ、意外とやっていけるんじゃね?


























(あ、そうだ。お前の食べれないもの教えてくれ)
(……えっと、紙)
(紙…?)
(にびっしり書かなくちゃいけんくらいあるんじゃけど)
(……死ね)



(やっぱり無理かも……)






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