暑い暑い夏の日


午前で部活が終わり、陽射しもピークに差し掛かる頃


俺たちは木陰の公園のベンチに腰かけていた



「なぁ仁王、アイス買いに言ったのに何でコーヒー買ったんだよ?」



先程からの疑問をぶつけてみる


こんなくそ暑い日にアイスを買いにアイスクリーム屋に行ったのに、なんと仁王はサイドメニューのアイスコーヒーを頼んでいた


アイスってつくけどさ……普通こんな暑いならアイスを買わねぇ?


勿論俺はアイスを買っている


すると仁王はちょっと顔をしかめて



「……こんな暑い日にあんな甘ったるいもん食えるわけなか」



と。


いやいやいやいや!



「こんな暑い日に食わなねぇならいつ食うんだよ」



俺は最もなこと言ってると思う


だってそうだろ


じゃなきゃいつ食べたいと思うんだ?


まぁ俺は年中アイス食べたいヤツだけどさ


……仁王は甘過ぎるのは苦手だしな
そんなもんなのか…?


陽射しが当たらない木の下で、首筋に汗を感じながらアイスを一口口に含む


ひんやりと甘いそれが体に籠る熱を少しでも和らげてくれている気がした



「そうじゃのう……」



ぽつりと考えるような呟きが聞こえた後、いきなり視界が遮られた



「ん……っ!?」



目の前には仁王の綺麗な顔があって


唇に柔らかい感触と中にぬるりと侵入する少し温い舌



「んっ……んぅ…っ…!」



噴水の音、鳥の鳴き声、遠くで聞こえる人の声


さっきまでそんなざわめきで聴覚は支配されていたのに


今はそれが全て聞こえなくなり、ただくちゅくちゅと鳴る水音だけが自分を侵していく


ここ外、と文句を言おうと思っていた言葉は舌を絡められ簡単に溶けて消えて


さらに思考まで侵食され人がまだいないからいいか……なんて、色んなものがどうでもよくなるように白くとろけていくのを感じた


くちゅっと音を立てて唇が離れると、舌と舌を繋ぐ糸が暫くの後ぷつりと切れる


そして軽く涙目になりながら一呼吸



「にがい」

「甘い」



同時にそう呟いた


俺はコーヒーの苦さを、アイツはアイスの甘さを


言うならば俺は甘いものを食べた後のコーヒーだったから、無糖ではないだろうけどそれ同等に苦く感じた



「まぁこん時位は味わおうとは思うなり」


「…そりゃ味わってんのはアイスじゃなくて俺だろぃ」



ふっと小さく笑みを浮かべる仁王にすかさず俺が突っ込んだ


わー……なんかその余裕な笑みに少しイラっとした


しかし仁王の目に少しの欲が混じる



「ブンちゃんじゃと味わうだけじゃ足りんくなる……」


「……バーカ」



何言ってんだよ


……顔が火照ってるのはこの夏の暑さのせい


照れ隠しで呟いたんじゃない


……はず



「ブンちゃんはよ食べんと溶けるなり」


「わっ…」



仁王の指摘に手元に目を下ろすと、そんなに時間は経っていないのにやはり気温が高いせいかカップの中のアイスは結構溶けていてかなり柔らかくなっていた


慌ててスプーンで掬い口に運ぶ


そんな俺を見ながら横でにやりと仁王が呟いた



「今のうちに冷たいの味わっとかんと……家に帰ったら熱くなるき」



意味深な言葉にぴくりと反応し、彼を見上げる


何が起こるなんて想像は容易い



「……溶けちゃうくらいに?」

「溶けちゃうくらいに。」



応えを聞いてから口に入れた溶けかけのアイスは、またくちゅりと音を立てて甘さと香りを口内に広げてすぐに溶けて消えていった





また遠くで噴水の水の上がる音が聞こえる



多分いつの間にか現れたその向こうのベンチにいるひとには、こんな熱い光景は見えていないことだろう










(あーあ、溶けちゃった)
(……このまま一つになれたらいいのに)
(…そうじゃね)
(っ……バカ!も、…無理っ…!)










体も心も一つに溶けたい



それ程に






((愛してる))












110522
成る程、地味に分からん
今月は31日までありますね!←
もちろんあそこを想像して書きました




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