「仁王に犬耳と尻尾が生えればいいのに」


ブン太がいきなりこんなことを言い出した


「……病院探してくるき、ちょっと待ちんしゃい」

「黙れ」


そんな睨まれても…
いきなり変なこと言われたこっちの身にもなってほしい


「あー、でもお前にその髪色で生えると犬ってより狼っぽくなるよな」


まだ言ってる


「なしていきなり」

「なくとなくだけど」

「ふーん」


というかそういうのはブン太が言われる方だと思う。

別に猫でも犬でもいいが彼になら兎の耳でもいいかもしれない
…じゃなくて、なんにしろ動物の耳のついた彼はそこらのペットより可愛いに違いない

それにこういうモノの展開は上にいるものが特をするものである


「ブンちゃんには猫耳かうさ耳かのぅ」

「人で妄想すんな」

「人の事言ないぜよ」


最初に言い出したのはそっちだろうに

するとブン太は頭の後ろに腕を組み、ぽすんとベッドにもたれかかった

その拍子に少量の赤い髪がシーツの上に散らばる



「あーそんな毛色の犬か狼がいたら雅治って名前つけてやるのに」



なんて冗談を言って笑っていた


「………」

「仁王?」


いきなり黙った俺を怪しく思ったのかすぐに上体を起こし、顔を覗きこんでくる


「ブン太、もう一回言って」

「は?」

「さっきの」

「なんで」

「なんでも」


いつになく真剣に言うと納得出来ない様子でありながらもブン太は口を開いた


「えーっと…そんな毛色の犬か狼がいたら雅治って名前つけてやるのに?」

「もう一回」

「は?」

「特に後半」

「名前つけてやるのに?」

「もう少し前も」


なんなんだコイツみたいな目で見てくるけど、俺は気にせずまた言うように促した


「雅治って名前…っうわ!!」

「ブーンちゃんっ好いとうよ〜」


いきなり何だよ離せ!!って抵抗してくるブン太を更に抱き締め、そして首筋にキスを落とす

何度も何度も


「……何喜んでんだよ」


抵抗を諦め、彼が腕の中でふてくされたように呟いた


「やってブンちゃん、してる時しか言ってくれんし」

「……いつ、何を」

「いつって、そんな野暮な」

「……アホ」


呆れ声で言われた


「で、何をだよ」

「名前」


微笑むと


「へ?名前?」


とぽかんとした顔をしていた


「普段言うてくれんじゃろ?まぁシてる時にたまに言うてくれるからそれはそれでいいかって思ってたんじゃけど」


それを聞いた途端ほんのりとブン太顔を赤くした


「そ、そんなの知らねぇし!」


……無自覚だったか

でもそれはそれでおいしい


「でも確かに仁王のこと名前じゃねぇな」

「まーくん寂しい」

「きもっ」


酷い、なんて泣いてるフリさえ彼は無視



「雅治って言ってほしい?」



そりゃ、本音を言えば……


「おん」


Yesである。

だけど彼はにこりとわらって


「ダメ」


と言った。


「なして?!」

「だってよー」




突然ぐいっと付けたままの制服のネクタイを引っ張られ






―――普段から言ってると特別感がなくなるだろ?






なんて耳元で囁かれ、舌なめずりをして妖艶に見つめてきた



「な?『雅治』」



そして誘うように首に腕を回し、口づけを求めてくる

その誘いに乗り俺たちは熱い口づけを交わしながら、白いシーツの海へと沈んでいった













110403




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