微注意








「んー……」

「ブンちゃん大丈夫?」


ベッドから小さな唸り声が聞こえ、ことりと湯気の立つお粥を乗せた盆をその近くのテーブルの上に置く

近より側に膝をつき、寝ているブン太の額に手を載せた


「まさはる…」


少し潤んだ瞳に赤く染める頬
時おり苦しそうに熱っぽい息を吐く

手のひらに伝わる熱は通常よりも大分熱くて


「冷たくて気持ちいい……」


そう、ブン太が風邪を引いた


「ちょい上がったか?」


熱が高くかなり辛いようで、俺を見る瞳はどこか虚ろ


「お粥食べれる?」

「うん……」


そう言ってこくんと頷く

熱くなった体を起こすのを手伝い、彼の前にお粥の盆を持ってくる

先程体に触れたとき力が入らないようで殆ど自分に体を預けてきた

今もぼーっとしているブン太に器によそったお粥をレンゲに掬い冷まして口許へ運んでやる


「んっ、」


やはり本当にしんどいようで、普段はこんなことをしても嫌がる彼は素直に口を開いてお粥を含んだ

ゆっくりと咀嚼して飲み込む

ブン太を急かさないように彼のペースに合わせてお粥を運び、時間を掛けて量を減らしていった

そんな調子でようやく食べ終わりありがとう、と舌ったらずな呟きに微笑み返した

あまり風邪を引かないブン太を看病するのは久しぶりで

いつも自分がされてばかりなので、やはり感謝の気持ちをしっかりと返したかった


「ごちそうさま」


空になったお粥を乗せた盆を片付けようと立ち上がると寂しそうな目でこちらを見上げてくる

………可愛い奴じゃ


「大丈夫。すぐ戻ってくるぜよ」


そう声を掛け、ブン太の部屋を出た

キッチンに持っていたものを置いていってからリビングにある引き出しを漁る

ここに薬がしまってあるはずなのだが……


「なして…?」


いつも使っている薬が見つからない

どうしてだろうと更に探ると、いつも服用している薬の空箱が見つかった

……しまった、切らしていたか

代わりに違う薬を数箱見、しょうがないかとそれを持って行くことにした


「ただいま」

「おかえり」

「ブンちゃん薬飲もか」


俺の姿を見てパッと顔を明るくしたブン太の顔が、薬を見せた瞬間嫌そうな顔をする

やっぱり…と内心苦笑

だってこれは…


「にがいやつ……」


だから。
一回飲んであまりの苦さにそれ以来放っておいたものだ

飲めないことはないが出来たら飲みたくない
そんなところだろう

水の入ったグラスを差し出すと更に嫌そうな顔をする

まぁ予想通りの反応だったので、苦笑しか出来ない

グラスをテーブルに置く


「飲み薬いや?」

「……出来たら他がいい」

「座薬なら――」

「飲み薬でいい」


即答


「別に遠慮せんでよかよ?」

「してない……やっ!」


ぐいっと足を開かせジャージに手を掛ける

ズボンをずり下ろせばブン太が足をじたばたさせ抵抗した


「やぁ…!!」


熱があるせいで力ない抵抗しか出来ないブン太の足首を掴み固定する

下着もずらし薬を開封すると後孔にそれをぴとりとつけた

そしてつぷっとそれを埋めていく


「ふぁ…っ……い、やぁ……!」


受け入れ慣れているそこはあっという間に薬を飲み込んでいった


「なんか無理矢理やっちょるみたいじゃ…」

「今の行為に無理矢理以外に何があるんだよ…!つかお前単にこれしたかっただけだろぃ!飲み薬でよかったのに!」

「やけ、ええ声じゃったよ?あー…でも薬入れてしもたから続き出来んのう……」

「ざまー」


なんて言って睨み付けてくるブン太に俺はにこりと笑った


「突っ込むだけが全てじゃないんよ?」


そう言うとびくりとブン太は震え、大人しくなった


「冗談なり」


冗談に聞こえない。そう目で語り掛けてきたが敢えてそれに気づかないふりをし、服を直してやる

冷えないように掛け布団を彼の上に掛けて額にキス


「まぁもう暫く寝ときんしゃい」

「ん……」


目を閉じる彼の頭を撫で、その手を布団から出ている手と繋ぎあわせる

ぎゅっと握りかえした手に触れた指輪が、いつもより暖かかった











「っはぁ……はぁっ……」


ブン太の息が荒くなっていることに気づき、彼の顔を覗き込む

苦しそうに眉を寄せ、頬が更に赤く染まっている

先程より汗の量が断然増えていた


「ブンちゃん大丈夫?」


心配して声を掛ける

するとブン太はゆっくり目を開き涙目でこちらを見た


「汗、気持ち悪い……」


パッと掛け布団を捲ると、体中に汗を書いているようでジャージの下にきているシャツが一部汗で張り付いていた

これは確かにいい心地はしないだろう

とりあえず着替えをさせることにし、多くの水分を失っているだろうから水分を取らせた

脱衣所から大きめのタオルを持ってくる
着替え中に体が冷えないように羽織らせるためだ

彼の待つ部屋に戻り着替えの用意をする

今考えればこんなに人のためを思ってした看病なんて彼以外したことがない気がする

いや、ない。

病人を看ると言うことはこんなに大変で、だけど自ら進んでやってあげたくなる

やっぱりブン太は俺にとって一番大切な人なのだ


「ブンちゃん、こっちおいで」


胡座をかいている上にブン太を座らせるように引き寄せる

やっぱり体は熱くて腕を首に回し力が抜けた体を自分に寄り掛からせてきた
だるそうな体を懸命に支えようとするがそれがうまく出来ないらしい

そんな彼を愛しく思いながら上を脱がせタオルで汗を拭きつつ冷えないように体を覆う


「手、上げれる?」

「んっ」

「ん……いい子」


袖を通し、服を着せる

着替えを早目に終わらせブン太をベッドに戻そうと離そうとした


「んー……」

「………ブンちゃん、」


が、困った

ブン太が抱きつき離れようとしなかった

このままだと体が冷えて悪化してしまうかもしれない


「ブンちゃん、離して?」


その甘えるような態度にこちらも是非ずっと抱いていたいものだがそうにはいかない

風邪が悪化してブン太が苦しくなるのはどうしても避けたい

のに……


「やっ」


そう言って俺の肩に顔を埋め首を振る

めっちゃかわええ…!

ぎゅーっと抱きしめてやりたい衝動を寸前のところで堪える

あれは反則じゃ…!!

なんて心で叫びながらもブン太に困ったように返す


「でもブンちゃん。風邪悪化するぜよ?しんどいのはやじゃろ?」

「ぅー……」

「ブンちゃん」


いやいやと首を振る

流石のこれには困ってしまう

首に回された腕にぎゅっと力がこもる

力を入れればそれをほどけないこともないのだが、人には風邪の時は精神的に弱る性質がある

だから、ブン太の気持ちは痛いほどわかって


「じゃあ少しだけじゃよ?」


こくりと頷く

大概自分も甘いな、なんて考えながら掛け布団を引き寄せ、彼の体を包むように被らせる

方向を変えてベッドに背凭れるようにして体勢を少しだけ変える

暫くそうして彼の背中を擦ってやるといつの間にか彼は小さな寝息を立てていた

彼を起こさないように注意して抱き上げベッドの上へと下ろす


「っわ………!」


共に自分の体も引っ張られた

何だと彼の顔を見るが、彼は変わらず眠っていて

不思議に思ったがすぐに理解した

彼が服を握りしめて離さないのだ


「しゃあないのう…」


布団を捲り、自分もベッドに入る

腰を抱き寄せれば彼はまたぎゅっと腕に力を込めた

ちゅっと愛しい彼の額にキスをする


こんな甘えん坊で素直な彼も、たまにはいい

けど、








早く彼が元気になりますように



















(雅治……?)
(……っ……)
(……熱っ!)
(………移ちゃった)
(移ちゃったじゃねーよ!バカはる……!!)

(心配してくれるブンちゃんも可愛ええのう…)


110430

さり気に大学生パロ

最初は普通に飲み薬だった予定だったのに何故こうなった




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