※弟捏造






ある昼下がり

ピンポーン

とチャイムが響く

ブン太は誰が来ているか分かっているので、不用心なことにドアスコープを覗かずに鍵を開けた

勿論自分も誰が来るかは昨日の夜に聞かされているので、彼の後を追い玄関まで足を運ぶ

ドアノブを捻り奥に押すと……ドアの隙間から二人の少年が立っているのが見えた


「ブン兄ちゃん来たよ〜」

「久しぶり、兄貴」


そう丸井家の次男と三男、ブン太の弟達だ


「おうお前ら上がれ」


最近実家に帰るような用事もなかったみたいで久しぶりの再会らしい

数ヵ月見なかった弟たちの姿に、ブン太も顔をほころばせた


「お邪魔します」

「お邪魔しまーす!仁王のお兄ちゃんも久しぶり!」


そう言って笑顔を向けてくる下の弟の小弥太は中学時代のブン太によく似ていて、性格的な意味でまだ柔らかい
恋人からツンを抜いたかのように素直で、末っ子と言うこともあり甘えん坊なところがある
年上から見たら可愛くて甘やかしたくなるような子だ


「仁王さんちわっす」


そう言ってぺこりと頭を下げる上の弟の翔太は、小さいときは小弥太同様ブン太にかなり似ていたが今は面影があるかなという程度な男前に成長していた
昔のじゃれついてた感はすっかりなくなっている

丸井家に訪れた時は二人ともよく遊んでとせがんで来たが、あの当時はまだ小学校低学年と高学年だったのだ

自分もその頃の彼らを知っているのだから、この成長ぶりを見ると親のような気持ちが理解出来た


「翔太、お前また伸びたんじゃねぇの」

「おう。中学時代の兄貴なんてよゆーで抜いたぜ?」

「お前喧嘩売ってんのか?」


冗談混じりの二人の会話

あんなに小さかったちび共は今や中学生一年と三年、翔太においては当時より伸びたはずのブン太と並んでいた
いや、多分弟の方が高いだろう


「小弥太も伸びたな」

「へへー」


お兄ちゃん大好きな小弥太は笑いながら頭を撫でられている
反抗期真っ最中な時期なのに、素直で可愛い奴だ


だがしかし、この二人は意外と厄介だったりする



リビングへと移動し、積もる話からしょうもない話まで色々な話題が飛び交う

翔太は立海大の弓道部に所属していて副部長をしているらしい
かなりの腕前で、ブン太と同じく器用なのは遺伝しているようだ


「つーかお前受験生だろぃ?一応は勉強してんのか?」

「余裕。ていうかスポーツ枠楽勝的な」

「ちゃんと勉強しろよな!俺はしてなかったけど」


来年高校に上がるらしい

自分達にもそんな時期があったなぁと考えると少し寂しいような、懐かしいような

あの頃は部活が何より重視されていて、テニスをするのも楽しかった

一般的に言う青春というものだろう


「ん…兄貴」


その時翔太が動き出した

ああ、コイツは特に厄介なんだった


「なんだ?」

「なんかいい匂いがする」


そう言ってブン太の肩に顔を埋め、髪の匂いを嗅ぐ
かなり密着していてブン太がくすぐってぇよと小さく笑った


(そりゃ朝に風呂に入ったからのう…)


なんで、とは流石に口が裂けても言えないがきっとシャンプーの匂いのことを指しているのだろう

しかし問題はそこではない

何が問題って…翔太が俺が人前…いや弟たちの前でこんなことが出来ないのを知っててやっていることだ。
しかもわざと。わざと以外に何があるのか

とりあえずスキンシップ過多なのだ
前髪長すぎるんじゃねぇの、とか何かにつけてブン太に触れる

笑ってはいるがかなり挑発的な目だ

………初めて会ってから暫くの間は尊敬の眼差しだったのに

多分何となくは俺達の関係に気付いているのかもしれない


「ブンちゃんええ匂いじゃのう…」


だからといって黙ってみているつもりはない
俺もブン太の首筋に顔を埋める
匂いを嗅ぐと見せかけて首筋に唇を滑らせるとぴくりと小さく揺れた


「雅治、くすぐったい」


少し睨み付けるようにこっちを見るブン太
へらりと笑って返すと呆れたように翔太がこちらを睨んだ


「俺もー!」


そんなところで下の弟小弥太が突撃してくる

しかし座っているブン太の前から抱きつき匂いを嗅いだ
翔太のように悪意はないが、この大胆さにはちょっと妬いてしまう

彼は中学一年生で中学に入ってから本格的にテニスを始めたらしく早速才能を開花させているよう
プレイスタイルはブン太とは異なり、手塚や越前に憧れ持っているらしくどちらかというとそっちより

部活に入ってから俺達の凄さがわかった!と言って先程興奮しながら語ってくれた


「俺もー」


そう言って俺もブン太に抱きついた
お前はさっき嗅いだだろと言う言葉は無視


「俺もっ」

「おわっ!」


そして翔太もブン太に抱きつく

男三人が男一人に抱きつく

まぁ端から見たらなんと奇妙な光景なんだろう

だがみんな彼を好きなのでそんなこと構わなかった

ただ一人を除いては。


「重い。退け」


不機嫌そうに抱きつかれている本人……ブン太が言う

えーっとこんなときだけ息ぴったりにいう三人に彼は声をあげた


「鬱陶しい!!いーから早く離せよ!」


さすがにこれ以上とみんな思ったのだろう
しぶしぶと離れていく

小弥太においては久しぶりに会った大好きな兄に怒られ、寂しそうな顔をしていた


そういえば弟達は久しぶりの再会なんだ…

自分は一緒に住んでいるからいつでも抱きつけるし、甘えることも出来る

そう考えると申し訳なってきて、ちょっと大人気なかったと反省

単に対抗するならまだしもブン太を怒らせて小弥太達にあんな顔をさせるのは悪かったと思う


「なんか飲み物飲まん?珈琲とかジュースもあるぜよ」


そう言って立ち上がる


「珈琲お願いします」

「俺も」

「俺はジュース!」

「おん」


その場を離れようとするとブン太が立ち上がろうとしたのでそれを制し、一人キッチンに向かう

三人にしてやろうと俺なりの気遣いだ

この後もレポートの期限が、と暫く自室に籠ろうと思う。
期限はまだ先だが幸いレポートの課題は出されている
兄弟だけで話し合う時間も必要だろう

考えながら棚からグラスやカップを出してインスタントコーヒーを入れようとしてると、ブン太が隣へと歩いてきた


「別によかよ?」

「いや、紅茶にしようかと思って」


そう言って紅茶の缶を取り出す

かたん、と音を鳴らして缶を台の上に置いたのを横目に見てから作業を再開しようとした時、いきなりガシッと首に重みが掛かった

その重みに前屈みになる

片腕を肩に回してきたブン太になん?と問おうと顔を向けたとき


――ちゅっ


「へ…」


唇に柔らかい感触

気の抜けたような声をあげるとニヤリと笑うブン太と目が合って

耳元に唇を寄せると


「あいつらが帰るまで我慢しろよ」


と。

自分の気持ちは見透かされていたようで

少しだけ情けなくなり眉を下げて返した


「おん。我慢する、やけご褒美ちょうだいな」

「しょーがねーな……ちゃんと待ってろよ?」


と微笑んでブン太はキッチンを出ていく

彼の後ろ姿を見ながら…なんだか満たされるような気持ちになった

自分と気持ちが繋がっているような気がして…心が暖かい



………たまには兄弟にブン太を譲ってみるのもいいかもしれない

















この後調子に乗った兄弟に嫉妬心を膨らませて当初予定していた以上のご褒美をもらったのは別の話














ガチャン………

(ブンちゃん、ご褒美くれるんじゃよね?)
(………)
(なして逃げるん)
(に、逃げてねぇよ!)
(ご褒美ちょうだい)
(…後でな!)
(今すぐじゃないとやじゃ)
(わっバカ!どけよっ…!!……あっ)






110424
ブン(兄)ちゃん大好き!な兄弟とにおーくん
かなり捏造入ってますけど……
ついでに小弥太くんの名前は某携帯ゲームのベースの子からとりました(笑)
こんな感じで大丈夫でしょうか!?
ひいち様に捧げます!





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