「あっ…も、やめっ…」


「に、ぉっ…も…むりっ…だって…あぁっ」






そして果てた彼は、気絶するも同然に眠りに落ちた











眠る彼の横で、ベッドから降りその姿を眺める


淡い月明かりが彼の背中と赤い髪を照らし、首筋の紅をも露にする



愛したい

愛し足りない




だけど彼は激しく愛したお陰で暫くは起きることはなくて



足りない



「足りないんじゃ…」



行き場を無くした想いが、口から洩れる



「仁王…?」



声の方へ目を向けると彼は眠そうに目を擦っている

まさか起きるなんて思わなくて



「もう少し寝ときんしゃい。まだ夜中ぜよ」



シーツを掛け直そうと手を伸ばしたが彼はいい、と体を起こした

いや、起こそうとした



「痛っ…!」



途端眉を寄せる

やはり腰にきているらしい



「だから無理っていったのに…」



と俺を睨み付ける


苦笑いをしていると反省してんのか?と厳しいお言葉

ブン太はシーツにくるまりながらゆっくりと腰に負担を掛けないように起き上がり、ベッドに腰掛けた

その瞬間だけ、また痛そうに顔を歪める

だがすぐに消え、顔を上げた時には普段の表情に戻っていた



「何してんの?」

「特に何も…」

「じゃあ寝ようぜ」

「強いて言うならまたブンちゃんを襲ってしまわんように…」

「え、まだ足りねぇの?」



信じられねぇという目線



「……愛し足りんのじゃよ」



ぼそりと呟く

彼には聞こえなかったらしく、ん?と聞き返してきた



「……ブンちゃん…愛しとうよ」



自分はどんな顔をしていたのだろう

もしかしたらとても悲しそうな顔になっていたのかもしれない
切なそうな顔をしていたかもしれない
それとも寂しそうな…?



そんな思考は打ち破られる



ブン太は俺の前髪を上げると額に口づけてきた

目蓋、鼻、頬、口―――


とても優しい口づけだった



「……バーカ」



そういう彼はふわりと笑っていて


同時に抱き締められた



「お前は愛し足りないんじゃねぇよ…愛されたいんだ」



シーツを挟まず触れた肌


そこはとても暖かくて心地よくて


彼の心音が伝わってくるようで


大切にしたい温もりだと思った



「見返りって言ったら言葉が悪いだろうけど…それを無意識に求めてる」



だから最中に異様に好きだとか言わせるんだお前は、とくくっと笑いながら彼は囁いた



「ヤってなくてもさ、こうしてるとあったけぇとか…思わねぇ?」



落ち着くとか、安心とか、愛しいとか……



ちょっとクサイな

なんて彼は呆れ笑いをしてるけど



―――確かにそうかもしれない



「仁王」



前髪にキスを落とす



「愛してる」



愛おしい者をみる、その瞳

何かが、心に満たされる

彼を抱き締める腕に少しだけ力を込めて






「俺も、愛しとうよ」















(愛に飢えてる君へ)


110324




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