今まで自分は適当に愛を囁いていたと思う

抱いた女の数は少なくないけど、そのどれもに夢中にになったことなんてなかった
寧ろ一人の人だけ、何て自分は無理なんじゃないかと考えるようになってもいたし

それらしい言葉を吐けば女達は嬉しそうにしていた

別に自分を信じてほしいとかどうでもよかったから色んな奴にも同じような言葉を掛けた

その本質を理解せずに、使い古された感情の欠片もない言葉を




………そんな事をしていたら、







本気になった人に信じてもらえなくなってしまった













「好きじゃ」


粘着質な水音が響く中


「俺、も…す…き…」


戸惑いに揺れた瞳が俺の心を刺した

途切れ途切れの返答

ブン太は俺がしてきたことを知っている

だからこれが嘘だと確信していて。

いくら好き言っても彼は本心からの言葉を返してくれなかった

自業自得……そうしか言えない

まるで狼少年だ

死なない代わりに死ぬくらいの痛みが心に棘となって突き刺さる

伝わらない
どうやっても伝えられない

きっと目の前の彼は付き合ってはいるが身体だけの関係と、そう認識している

だからどんなに本音で言葉を口にしても、愛しくて身体を重ねても決して伝わらないんだ

そこには悲しみしか、残らない



「に…お……?」



ふいに彼が頬に手を伸ばして

指先が触れた瞬間感じる水分

快楽に耐えながらも不思議そうな顔

その時ようやく気づいた


―――伝う滴




自分は、泣いているんだ…



ぽたりと彼の身体に落ちる一滴


「におう…泣いて…あっ!」


ぐちゅりと最奥を突く

ブン太はいきなりの快楽に背をしならせ言葉を飲み込んだ

いや、言わせなかった



「あっ…ふ、…やっ…まっ…て…!!」



わざと弱いところを突けば喘ぎで言葉を紡げなくなるのを知っているから

悲しみを忘れたくて
快楽にすがりたくて


腰の律動を早める


でも悲しみは消えなくて
快楽にすがりきれなくて



「好き…好きじゃ…」

「っは…ぁっ…」

「愛しとう…ブン太……」






伝い落ちるのは汗か涙か





よくわからないまま強い締め付けに中へ欲を放った













110414





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