※女体化


ぷくぷくぷく
ふわふわふわ

唇から吹き込まれる息によって命を宿した玉が、筒の先端から膨らんではすぐに離れ、それを幾度も繰り返しながら無数に空へと飛び立っていく。
大きさがまばらなそれは飛んでいく速度も高さも同じものはなく、幻想的にさまざまに彩を変えながら宙に揺れていた。
時折吹く風に押し出されるように一斉に位置を移動させるシャボン玉たちは、それがやむとすぐさま自由気ままにあちこちへと散っていき、弾けて消えてしまうものもあればそのまま空の青に溶けてしまった。

赤い髪をそよがせその様子を見ていたぶんは、シャボン玉を生み出すことをやめないその口元をふっと綻ばせた。

「のうぶんちゃん、それはいったい何じゃ?」

自分しかいなかったはずの屋上からあるはずの声が聞こえ、ふと顔を開けると呆れた顔をした仁王がそこには立っていた。

「シャボン玉」
「どこからとってきたん」
「におーの鞄」

平然というと仁王はため息をはき、私そばに置いてある鞄の隣に座った。長い脚が折り、あぐらをかく仁王をちらりと見ると私は構わずシャボン液にストローの先をつけ、また息を吹き込んだ。

「まったく……教室にもよらんで屋上に直行するとはお前さんもええ身分じゃのう」

ふわりと視界いっぱいに広がるシャボン玉を見て言った仁王は、その後脇に置いてある私の鞄を横目で見る。

「別に。これ取るために教室に入ったし」
「屁理屈」

詐欺師と言われるお前には言われたくないよ。
口には出さなかったが彼を軽く睨む。

「まーまー、人の鞄からものをとるぶんちゃんには仕返しじゃ」

そういって仁王は私の鞄を無断に開け始めた。
なにしてんだと焦って鞄を奪い取ろうとするも、時はすでに遅く、勝手に中を漁った仁王は開封済みのチョコのお菓子を一粒取ると、にやりと笑って口に含んだ。
遅かったのう
そういってるドヤ顔がむかつく。そしてそれでもかっこいいからもっとむかつく。
だけど私は一瞬でひらめいた、仁王のその表情を崩す方法を思いついた。ただし、即席なのであまり後先を考えたものではないが。

「返してよ」

そういって彼のネクタイを皺が寄るのを気にせずぐっと掴んで引き寄せる。それに引っ張られついてくる仁王の唇を目がけ、こちらも唇を突き出した。

「……!」

突然の出来事ということに加え、私がこんなことをするだなんて予想も
しなかったことだろう。
息をのむ声が聞こえ、ぱちぱちと目の前にある男にしても女にしても長い睫毛が動くのを感じながら、心でほくそ笑み唇をぺろりと舐めてやる。チョコの甘い味まではしなくて、香りだけが舌に乗る。
ほしいものを求め彼の薄い唇を割ってさらに深みへ進めると、仁王が意図的に口を開け中へと導かれた。

すでに奪われたチョコは溶けきってしまい、欠片も原型をとどめていない。
それでもチョコの味は残っていたので、それを味わってやろうとさらに舌で彼の中を探るように動かす。
なんだか仁王の中をこうするのって初めてで、いつもされてばかりだから変な感じがする。恥ずかしいような、むずむずするような。
やっぱり恥ずかしいから目は開けられない。ということは一番に感じているのは羞恥なのか。
ちゅっちゅと時折唇の感触も味わいつつキスを繰り返し、男が女の子にキスしてるときってこんな感じなのかなぁなんて思ったり。ずっとネクタイを持ってるせいか手がだるくて、手を下して床につくとそれが合図だったというようにそれまで私のキスを甘受していた仁王が動いた。
がしっと後頭部を掴まれるといままで私がしていたようなことを仁王がしてきて、そして徐々に体の角度が変わってきて、気が付いたらもう背中が床についていた。
自然と覆いかぶさられるような形になって、仁王の意図的なんだろうけど、目を開けると私が仁王を見上げていて、その後ろには青い空が広がっている。
ふと下に目を向けると握りしめていたネクタイには案の定皺がまだ残っていて、あーあなんて思っていると私を照らしていた太陽の光が遮られ、視界が仁王の顔でいっぱいになった。

「ちょっ」

ちょんと唇が触れたと思ったら、ごそごそと私の制服のボタンをいじりだし、危機感を感じてその肩を引き離そうと押した。
しかしびくともしないそれに空しいだけになり、諦めた。

「スケベ」
「もとはと言えばぶんちゃんが悪い。」
「変態」
「男はみんなそうなんじゃ」
「バカ」
「……生意気言う口は黙らさんといかんのう?」
「なにいってんだよ」

これからもっとうるさくなるんだろぃ?
そう呟くと仁王は微かに笑みを浮かべて。

彼の肩越しに見える空は清々しいほどに晴れていて、日の光を受けてキラキラと光る最後のシャボン玉がはじけるのが見えた。











120803
オチはない


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