▼ 序章

暇つぶしだと言った。
小さな主人にセバシチャンは骨董屋に入ろうと言われて。
特に今日は急いでもいない、暇つぶしになるならと軽い気持ちで一緒に入ったのが全ての始まりだ。

骨董屋の中にあるヴィンテージ調の家具はどれも年代があるが、存在感を増して輝いているようにも見える。味があり価値が分かる主人だと、セバスチャンもシエルもいい店に入れて満足していた。

「この鏡は・・・?」

シエルの目に止まったのは年代ものの鏡だった。
壁にかける程度の丁度良い大きさの鏡で、シエルは自分の顔をそれに映してみる。鏡は磨かれていてどこにも古さが見えない。シエルは一目見てその鏡の購入を決めた。

シエルはお目が高い。
セバスチャンが見てもこの年代物の鏡は色あせる事無く存在感がある。
屋敷に置けばひときわ映えていい背景が出来るだろう。

だが何故だろう。セバスチャンはその、シエルが目に留った輝きを増して魅せる鏡がなぜか好きになれないでいた。


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