ツッコミは労災に入りますか?
「ねぇ」
春一番が芝生を撫でる。 ごうごうと音が過ぎ去っていくフィールドで最初聞き間違いかと思ったそれ。
とりあえずと振り返ってみれば、我らの司令塔がボーッと突っ立って一点を見つめていた。
「どないしたんですか?あと後半30分も無いですよ」
内心「何しとんねん」と毒づくが、相手は視線を動かさずにそっと指先を視線の先に向けた。
「うちのマスコットだけどさぁ」
「は?マスコット?」
「そうそう」と言うようにゆっくりと指で指したその先には、チームマスコット・ガンガンが今日もふざけた顔で応援している。
それがどうしたとシムさんに目をやれば、真面目な顔しくさってこっちを見ていた。
「何かさ…卑猥じゃない?」
「……………………は?」 え、今このおっさん何て言うた?あれ、今試合やなかったっけ?あれ?これ夢? 尚も目の前で真剣に悩んでる司令塔は、とりあえず見た目だけはいつもの司令塔やけど、今の俺にはただの宇宙人や。
いや、いつも宇宙人なんやけど…。
『な、何ほざいてんねんこのおっさん…』
「ほら、名前だってガンガンだし…あ、クボターン」
ね、クボタンもそう思うでしょ?ってわざわざ聞きに行くなや!!窪田もシムさんが来たくらいで何赤くなってんねん!!可愛いんじゃアホ!!
『あぁ、ちゃう。今は窪田の可愛さを再確認しとる場合やないねん…』
「ちょ、シムさん!!」
わたわたして追いかけると、我関せずの畑のにやけ顔が無性に腹がたつ。
にやにやこっち見んなや畑のくせに!!てか手伝え!!
「ちょ、シムさん!!マスコット相手に卑猥とか言うとる場合やないやろ!!」
「え、だって形がさ。ほら、あの砲んとこなんて竿に見え…」
「うおおおぉ!!シムさん!!そろそろポジション!!はよう戻りましょ!!」
「でもさぁ」
何やねんこのおっさん!!自由度100%やな!!いっそ羨ましいわ!!
「試合中やで!!窪田まで困らせんでください!!」
ほら、窪田の顔見てみい。?マーク頭に飛ばして可愛い笑顔振り撒いてるやないかーい。
『あかん、あの顔は何もわかってへん…ただの可愛いエンジェルや』
何か癒されるんだか疲れるんだか…
「あ、クボタンわかんない?だから砲が竿でね?顔のとこが…」
「だああああ!!あんたいい加減どつくぞボケ!!」
イ ラ イ ラ す る !! 二人して?マーク飛ばしやがって!!シムさんが飛ばしても可愛くも何とも無いんじゃ!!今すぐ意識でも飛ばしとけボケ!!
「何を無駄なとこで意志疎通してんねん!!俺として!?俺のこのやるせなさ悟って!?ねぇ!!」
もはや涙目。 俺の実はちょっと真面目な心がブロークン。 見て?相手チームからの哀れみの視線で、俺今大注目選手やで?
「…片山、ごめん」
『シムさん…。わかってくれればええねん。そんで窪田にちょっかい出さないでいてくれたら、ええねん…』
申し訳なさそうに下げられた眉にちょっとだけ救われる気持ちがする。俺、頑張ったもん。今俺頑張ったもんな…。
「早口過ぎて何言ってるかわかんない」
「はははは、いてこますぞこのボケ☆」
満面の笑みを浮かべた俺の後ろで、高らかに鳴り響いたのは失点のお知らせでした。
後日談。
性器扱いされたことを知ったマスコットが、スタジアムの隅で一人。 頭から伸びた砲を恥ずかしそうに抱き抱えた姿が目撃された。
周りが不思議がるなか、それをみたあの男が
「…あ、萎えてる」
「ガンガンなのにね?」なんて窪田に言って片山に殴られたのは別の話。
おわり
-あとがき----- あの、言い訳させてください←
先日友人とGKの大坂話していて
「シムさんてさぁ、ガンガン見て『卑猥』とか言いそうだよね。ほら、ガンガンだし(笑)」
っていう思春期の中学生みたいな会話をしてまして、実際書いてみたらこうなっちゃったー…みたいなね。さして言い訳というより、墓穴掘っただけになりましたね。
試合中にこんな会話を…というか、こんな時間があるのかと言われると不思議ですが!!GKですから!! 越さんが椿にアドバイスしてるときなんで10分くらい会話してるから大丈夫だよね←
そしてMFのとこまで行くSB。ポジションとして一番無理な移動があったのは多分片山です。マークされてた相手ポカンですよ。清川かな?可愛いなポカン清川←
まぁ、一言言うならシムさんはあっさりしたオープンむっつりだと思います←
では、楽しんでいただけたらこれ幸い。
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