「じゃぁ、今日は俺が連れて帰るから。時音ちゃん後大丈夫?」

俺はそれだけ言うと「はい、大丈夫です」と笑顔で言ってくれた女の子を残し、何時かの時のように背中に良守を負いながら校門を出た。

歩いていると首の前でぷらぷらと揺れ、まだ細い腕に傷が幾本も走っているのが目に入る。

『相変わらず、無茶ばっかりしてるな』

"あの時"も確か風邪でダウンした良守を負ぶって帰っていたことを思い出す。

『あの時はまだ、ここまで傷も無かったはずだけど』

さっき思い出したばかりの記憶はやけに鮮明で、まだ傷の無かった時の腕と比べさせては、今の腕に残る傷を生々しくさせた。

『…』

憤りとも心配ともつかぬ重いをぐるぐると混ぜながら歩いていれば、ずっと負ぶたいただけの背中で微かに動いた気配があった。

「あ、起きた?」

と、確認の意味も含めて背中に声をかけると、すぐに反応が返ってくる。

「…あれ、兄、何で?てか何、この状況!?」

気付いたら状況が変わって驚くのはわかるが、起きた途端に騒がしいやつだなと苦笑がこぼれた。

「俺は仕事でこっち来てたんだよ。妖は時音ちゃんがちゃんと倒してたよ」

「そ、っか…」

何も出来なかった事に対して、明らかに肩を落とす弟。
反省はしているようで何よりだが、きっともっと大事なことは考えてもいないのだろうなと思うと、責める言葉がついて出る。

「お前ね、風邪なら風邪でちゃんと言いなよ」

「か、風邪なんて引いてねぇ…今日はただ、その、あの」

しどろもどろになりながら弁明しようとしている弟を見ていると、本気で一回こいつの思考回路を覗いてみたいと思えてくる。

『俺はお前を怒ってるわけじゃなくて…』

言いたいことは叱責ではなく

「心配かけさせるんじゃないって話をしてるんだ」

ってことを、何でコイツはわからないんだろうか。

「…ごめん」


ぎゅっと肩を掴んだ弟の熱が、さっき烏森で感じたものより温かくなっているのが布越しに伝わってきた。

『熱、上がったかな』

それは起きたせいか
騒いだせいか
烏森を出たせいか

どんな理由にしろ、結局俺にはどうすることもできず、昔と変わらず気にかけることしかできないということを思い知る。

と、同時に、意外にも自分が今も昔も弟を気にかけていることに気付く。

『…俺って結構弟思いだったんだなぁ』

口煩く説教するのも。
ひっそりと見ているのも。

弟を心配してのものだと思うと『自分も大概にブラコンというやつかも知れない』と、似合わない単語に可笑しくなった。

「あの、兄貴?」

黙ったまま色々考えていたら、それを怒っていると取ったのか、怖ず怖ずと背中から声をかけられた。
顔だけむけてみると、何時もの困ったような、泣き出しそうな顔をした弟の顔が目に入る。

「あのなぁ、良守」

数秒後、お前のその顔がどんな表情をすのるか考えると、悪戯する前の妙に沸き立つような感覚が走る。

「わかってる。もう心配かけな…」




「お前、結構俺に愛されてるみたいよ?」



「は?」と言うことも出来ずに背中で固まった弟の顔は想像通りに凄くて笑えた。




想像していなかったことといえば、何故か肩を掴む手が更に熱くなったことと、



その理由を俺が知るのはそう遠くない先の話しだということくらい。






-あとがき-----

匿名ギま様!!!!!
大変お待たせいたしまして、すみませんでした!!

そして遅くなりましたが2500hitありがとうございます!!!!!!

しかも正良とは言い難い…正←良とも、正→良とも付け難いうえに意味がわからないというミラクル駄文。
もはやただの足し算駄文です…駄文だぷん駄文orz


匿名ギま様のみお持ち帰り・手直しOKでございます!!

また是非ご贔屓に(^^)
ありがとうございました。