これの続き





あの日から少しずつ仲良くなった私と白龍くんは、今となっては友達と呼べる関係にまで進展したと思う。
だが私の自意識過剰や思い過ごしだと白龍くんに申し訳ないので彼を友達だと声に出して言ったことはない。
私が彼を友達だと思っているだけで、彼からすれば私はただの隣の席の女生徒、そして同居人の友人というだけで自分の友人だとは思っていないのかも知れないのだ。私と仲良くしてくれているのだって、もしかしたら義姉である紅玉さんに会うために私が彼らの家を訪ねた際に気まずくならないようにする為だけだとも考えられる。

私達のクラスの担任であったシャルルカン先生は席替えをしたがらなかった(新しい席順を覚えるのが面倒らしい)お陰で私と白龍くんはずっと『お隣さん』だったわけだが、本日遂にクラス替えの日を迎えてしまった。

この学校は1学年に8クラスもあり、つまりは白龍くんとまた同じクラスになれる割合は1/8なのである。

(絶望的だ………)

何を隠そう私はこの数ヶ月で白龍くんに惚れてしまったのだ。
少し親しくされただけで惚れてしまうなど愚の骨頂、単純な奴だと罵れ蔑め。私にだって自覚くらいある。だが惚れてしまってはしょうがないのだと、それ故に想い人と同じクラスになりたいと願うのは当然の摂理だろうと逆に開き直ってみた。我ながら見事な切り替えである。





神様は私のことを見捨ててしまったらしい。私は8組…即ち隅教室と呼ばれる広い教室を与えられるクラスへと割り当てられた。白龍くんはお隣の7組だそうだ。8組には隣のクラスとやらが7組だけなのにそこに白龍くんが来るとは神様はあともうひと押し私のことを応援してはくれなかったのかと机に伏せて項垂れていると隣から今となっては聞きなれた声が降ってきた。

「違うクラスになっちゃいましたね」
「え、ああ… うん。そうだね。」

何故か素っ気なくなる返事に私は己を殴りたくなるがそれ程ショックが大きいのだ。それでもこれが白龍くんとの最後の会話になるかもしれないんだからもう少し可愛げのある返答は出来ないものかとも思う。そしてため息を吐けば白龍くんに「好きな人とクラス離れちゃいました?」と言われて伏せていた顔を勢いよく上げてしまう。くそ、動揺が隠せない

「な、そん…す、すす好きな人…とか、居ないし……」

失態を晒してしまった。吃りすぎた。
消えたいと頭をか抱えれば白龍くんはクスクスと笑って「綺月さんは分かり易い人ですね。」と言ったので「う、うるさいなぁ…」と切り替えせば白龍くんは笑うのをやめて視線を下に向けて口を開いた。

「つい先程失恋してしまった俺からすれば羨ましい限りです。応援してますよ」
「白龍くん…好きな人とかいたの。」
「貴女は俺をなんだと思ってるんですか」

その言葉に、まあ高校生だもの。好きな人くらい居るよねとまた項垂れる。白龍くんの言葉のお陰で私まで失恋確定しちゃったじゃないか白龍くんの馬鹿野郎。でも白龍くんフるとか何と言うことだ…文武両道才色兼備おまけに育ちの良さから来る礼儀の良さ…非の打ちようがない完璧男子ではないか。………ああ、もしかしてダメンズ派なのだろうか、勿体無い。

なんてグダグダ考えていたら頭に紙が当る。折り曲げられたその紙はどうやらルーズリーフのようで投げたのは白龍くんらしい。こちらを見て笑っていた。
当たったところを手で摩りながら飛んできた紙を開く。そこには白龍くんの字でたった一言「好きです。」の文字。

顔に熱が集まってきて信じられないって顔で白龍くんを見れば顔を逸らされてしまったが耳まで真っ赤なのが見えて今度は私が笑う番だった。

そして私もお気に入りのメモを取り出すとなるべく綺麗にお気に入りのボールペンで返事を書いて白龍くんの机に投げるのだった






(私もだよ)









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