※凛と双子設定 /男主/江視点


「うっさいヘタレ!!」
「だから俺はヘタレじゃねぇっつーの!!」

ぎゃんぎゃんと騒ぐ双子の兄達に二人の妹である江は呆れ顔で頭を抱える。遺伝が強過ぎる赤い髪を男子にしては長く伸ばし、後ろで尻尾のように縛った弟の方の兄である綺月は自分の兄(とは言え二人は双子だから明確にどっちが兄とかは無いんだけど。)に向かって噛み付く。凛も負けじと綺月に応戦するから二人はいつも取っ組み合いになる。
久しぶりに実家に帰って来ればこれだ、と江は母親の手伝いをしながら二人を眺めるのであった。

綺月と凛は小さい頃からずっと一緒で、スイミングスクールに通い出すのも上手くなっていくのも伸びるタイムも全てが一緒だった。とは言え凛はオリンピックを目指していたけど綺月は身体能力の向上だけを目的にしていたから、凛がオーストラリアに留学すると言い出した時綺月は当然のように日本に残る事を選んだ。
凛は今まで生まれてからずっと一緒だった綺月は当然一緒に来るものだと思っていたから凄く怒って、結局綺月も一緒に留学する事で場は収まったがそれ以来二人の『おこちゃま』な戦争は収まることを知らなかった。

でも何だかんだで凛は綺月が大好きで、帰国してからも岩鳶に通いたいと主張する綺月を無理矢理自分と同じ鮫柄学園に通わせた。どうやら凛には自分が折れるという選択肢は存在しないらしい。

そんな訳で普段は寮生活をしている二人が珍しく実家に帰って来たんだからお母さんも私も張り切ってご馳走というか二人が好きな物を沢山作ったわけだけど、普段から戦争が絶えることのない二人は例に漏れずまた今日もいつものおこちゃまな戦争を繰り広げているのだった。

お母さんは「喧嘩するほど仲が良い」なんて呑気に笑ってるけど私としては高校二年生の男が取っ組み合いをしているというのは中々に怖いモノがある。

「お、お兄ちゃん達…今は一時休戦!ね?ご飯食べようよ!」
「江!なあ聞いてくれよ凛が!」
「おい江、そいつの言葉に耳貸すな」
「うるせぇよクソ凛!俺は今江と話してんだ!」

声を掛けた途端に凛お兄ちゃんから離れて私に抱き着いてきた綺月お兄ちゃんに苦笑いを零す。まあまあ、と呟けば綺月お兄ちゃんは「もうやだ、俺鮫柄退学して岩鳶受験する」なんて言い出す。そしたらお兄ちゃん私の後輩だね、なんて冗談言えば綺月お兄ちゃんの向こう側から「はぁァア!!??」という凛お兄ちゃんの声。

「た、退学とか認めねぇからな!お前は鮫柄生だろうが!」
「なんで俺が退学すんのにお前の許可が必要なんだよバァカ。お前と同じ学校が嫌だから浪人してでも岩鳶受験するつってんだ」

拗ねたようにそっぽを向いてそう告げる綺月お兄ちゃんは正直可愛い、でも何より顔を青ざめさせて口をパクパクしてる凛お兄ちゃんはもっと可愛い。

「お、お、お前が鮫柄退学して岩鳶受験すんなら俺も鮫柄退学して岩鳶受験するわ!」



凛お兄ちゃんも素直に離れたくないって言えばいいのにね
本当にうちのお兄ちゃんたちは仲良しだなぁ。









BGM:おこちゃま戦争

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