※紅玉より下の妹の話


早朝、朝日の明るみにより目を覚ました私は腰のあたりに異物感を覚える。何事かと視線を移せばそこには私の兄に当たる練 紅覇が眠っていた。またか、と思いつつ兄様の腕を退かして寝台から降りれば「んんん……」という唸りと共に兄様が寝返りを打たれていた。
最初こそ寝台にいつの間にやら潜り込んでくる兄様には戸惑ったものだが今となっては随分手馴れてきたと思う。
紅炎兄様や紅明兄様と同じ深めの赤い髪を持つ私とは違い、書簡で一度拝見した「桃の花」のような可憐な色をした兄様の髪をひと房掬い、そこに口付ける。「兄様、おはようございます。」そう呟けばまた兄様は心地悪そうに寝返りをうった。

部屋を出て通路から中庭を覗いてみればそこには紅玉姉様がいらっしゃって、何かを作っているようだった。朝食まで時間はあるので姉様と世間話でも、通路から中庭へ飛び降りれば背後から女官の「姫君!?危険ですお辞めください!!」という悲鳴が聞こえてきた。
因みに私が飛び降りた通路は3回である。

トン、と綺麗に着地すれば姉様はこちらを見て袖口で口元を隠しながらくすくすと笑う。おはよう、綺月ちゃん。またやったのぉ?という姉様の声に苦笑しながら私はおはようございます、姉様。と返した

「あんまり女官達に心配かけさせちゃダメよぉ?」
「でも……少しでも早く姉様に会いたくて。」
「あらぁ、嬉しい事言ってくれるじゃないのぉ。」

そう言う姉様の膝に花冠を見つける。これは姉様が作られたのですか、と問えば彼女はふんわりと笑ってそうよぉ、と答えた。

「私のお友達が花冠が凄く上手なのぉ。この前シンドリアに行った時に教えてもらったのよぉ!」
「へえ…素敵ですね。」
「綺月ちゃんも作ってみるかしらぁ?誰かにプレゼントでもしたら喜んでくれると思うわよぉ。」

姉様の言葉に少し悩む。お誘いは嬉しいし、いつも世話をかけてる紅覇兄様にでも花冠を作って差し上げたい。でも生憎私は花冠の作り方を知らないのだ。
知らないのならば作りようがないか、と姉様にその旨を伝えれば姉様は「そんなの私が教えるに決まってるじゃないのぉ」と楽しそうに微笑んだのでお言葉に甘える事にした。









「紅覇兄様!!」

姉様に花冠の作り方を教わり、なんとか形になった物を手に禁城を走り回って漸く兄様を見つけて駆け寄れば「綺月じゃん、おはよぉ」と姉様と似て間延びした声が聞こえた。

「綺月、その手に持ってるの…何?」
「花冠ですよ、紅玉姉様に教えて頂いて…へへ、プレゼント用なんですよ!」
「プレゼント…?誰にあげんの、男?」
「はい、まあ。男性の方ですね」

そう言えば紅覇兄様は私の腕を掴んで手に持っていた花冠を取り上げる。そして「綺月からプレゼント貰って良いのは俺だけなのぉ。」と言われてしまったのでくすくすと笑えば兄様は不機嫌そうな顔をする。

「何が可笑しいわけ?」
「いえ…兄様、心配なさらずともその花冠は元より兄様の事を想い、作らせて頂いた物でございますから、端から紅覇兄様以外の方に贈る気等微塵も御座いませんよ。」

「……なら良いけどぉ。」なんて言いながらそっぽを向いてしまった紅覇兄様。



真っ赤なお耳が隠れて居ないのはこの際黙っておきましょう。










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