※男主



パァン、という破裂音が辺りに鳴り響く。空気が震えて思わず耳を塞げば音を出した犯人である青年は満足そうに微笑んだ。
彼が手に持っているのは綺麗な装飾が施された二丁の銃で、彼は他国から煌帝国の第四皇子…つまり、俺を守る護衛人として渡された人物だった。

彼の銃の腕は舌を巻く程であり、その容姿の端麗さも相まってか、彼は煌帝国でも非常に高い人気を誇っていた。シンドリア王国が建国される前に今では『八人将』と呼ばれるシンドバッド王の優秀な仲間達の中に入り、共に生きようとシンドバッド王直々にお誘いが何度もあったのだからその腕は確かだ。
……まあ、綺月はその誘いを「俺が居なきゃ白龍すぐ死んじゃうから」と失礼極まりない理由で断ったのだが。
「綺月、今日の鍛練はこの辺りで切り上げたらどうだ。そろそろ日も暮れて音がより響いてしまう」
「……わかった。」

俺の言葉に綺月は素直に銃の安全装置を機能させて腰に仕舞う。そんな何でもない所作も一つ一つが無駄がなく美しいのだが何よりも目を引くのが彼の練習用の的である。
驚くべき事に円形の的は中央1点にしか穴が空いて居らず、人形の的は急所部分ぴったりにしか穴が空いていない。でも一発ずつしか撃たなかったのかと言えばそんなことは勿論なく、的の裏側には夥しい量の銃弾が転がっていた。

「白龍、少しは強くなった?」
「…いつまでもお前に護られてばかりではいけないからな」
「そう…まあ、白龍は俺には勝てないだろうけど。」
「…聞き捨てならないな」

そう言って武器を突き付綺月るがははその綺麗な顔を歪める事もなくただ無表情に俺をまっすぐ見つめた。

「避けたりしないのか」
「…白龍は俺に攻撃出来ないよ」
「わからないだろ」
「わかる。白龍は俺の事大好きだから」

そう言い綺月ったはに何だか恥ずかしくなって武器を元に戻す。そしてそっぽを向きながら「…俺にタメ口ばっかだとまた女官達に怒られるぞ」と言えば「大丈夫、そういう時は白龍が守ってくれるんだろ?」と当たり前のように言って何時もの無表情を少し綻ばせて綺月が微笑むものだから本当に俺はこの護衛人……いや、親友のことが彼の言う通り大好きなんだと思う。






マンデビラ(固い友情)

勇敢様 提出

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