これの続き


昔、この中庭で俺は想い人に告白したのだ。色恋沙汰とは無縁だったから紅玉に少し話を聞いてみたところ「花冠なんて作ってみたらどうかしらぁ、綺月はお花が好きですからねぇ」と何故か相手がバレた上でアドバイスを受けた。書簡等で花冠の作り方を調べてひとつ、あいつの好きな花をあしらった花冠を作ると一人で中庭を見つめる綺月に向かって花冠を被せて、己が王になった時にお前を正室として迎えたいと言った。綺月は驚いた顔をした後にくすりと微笑み、「紅炎様にお花は不似合いですね」と言ったのだった。

あれから8年。練 玉艶に王座を奪われ彼女を妻に迎えるのが遅くなってしまったが、もう王になってからなんて言ってられない。紅覇に「そんなに待たせると綺月他の奴に取られちゃうかもよぉ?綺月美人だしぃ」と言われてしまいもうすぐに彼女を迎えに行きたいのだ。
しかし先程から禁城の中をいくら探しても彼女がいない。これはおかしいと女官に聞いたら、先週から彼女はここを去り、街で普通に街娘として暮らしているらしい。




あれから更に2週間が過ぎた。綺月が勤めている場所が判明したのだ。彼女は今街の喫茶店で働いているらしい。
俺はあの時と同じ花で作った花冠を手に従者と共に喫茶店に入る。いらっしゃいませ、と聞きなれた声にそちらを向けばあいつはソーサーを片手に目を見開いていた。第一皇子の突然の来店に他の奴らも一様に表情に驚愕の色を示すがそれを気にも留めずに綺月の元へ歩み寄る

「紅炎…様……。」
「綺月…お前に話がある」
「私に、ですか」

彼女が身構えるのがわかる。周りの奴らもまさかただの街娘に俺から話があるとも思わなかったのだろう、誰もが戸惑っていた。

俺は彼女に花冠を渡せば彼女は思い出したのか「これ…は……」とその瞳に涙を浮かべる。

「迎えに来るのが遅くなって済まない。まだあの約束も果たせて居ないがそれでもお前が良いと言うのなら…」
「………っ、」

「お前を正室として…妻として迎え入れたい。お前のことを、愛している。」


その言葉を発した瞬間彼女の瞳からは涙が溢れ、そして

「喜んでお受けさせて頂きます…、私もずっと紅炎様の事をお慕いしておりました。」

と綺麗な笑顔を向けたのだった








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